
| プーアール茶の茶葉の見方 ■はじめに お茶に限らず、中華圏の嗜好品には、贋作や粗悪品が多いという特徴があります。老舗のお店でも、知識の無い客にそれなりの品を売る商習慣が一般的です。そのため、良質なものを求めるには、自らの経験と知識を積む必要があり、お金さえあれば良いものが手に入るという易しさがありません。それがかえって趣味としての面白さや奥深さになっている面もあります。そのような観点で、プーアール茶を選ぶ楽しみ方をご紹介します。 ■形状について プーアル茶には、様々な形があります。大きくわけると、散茶と固形茶になります。高級プーアル茶では、同じ銘柄の同じクラスの茶葉で、散茶と固形茶がある場合には、固形茶が高価になります。散茶は運搬中に、茶葉と茶葉が摩擦し、形を傷めたり、粉になるところが出てきます。固形茶にそれはありません。
散茶のプーアル茶 メーカーからそのまま出荷されるものと、茶商や小売店が固形茶を崩して、散茶にして売られるものとがあります。固形茶を崩す理由にはいくつかあります。 1. 運搬途中の事故により包み紙が損傷し、その価値を失う。 2. 茶商の倉庫熟成で一部失敗し、その部分を除いて崩した茶葉を売る。 3. 早く熟成させたいので、新しいうちから崩して保存熟成する。 など、様々です。
![]() 餅茶のプーアル茶 円盤型の固形茶です。一枚一枚に包み紙がありますが、包み紙のない種類もあります。 七枚組みで、竹の皮もしくは、紙に包まれています。1枚約360gが標準ですが、100g〜1000gまでいろいろあります。
![]() 磚茶のプーアル茶 レンガ型の固形茶です。1枚約250gが標準です。500g、1000gのものもあります。 ![]() 写真左: 沱茶のプーアル茶 お碗型のプーアル茶です。100g、250gが一般的です。 写真右: 緊茶のプーアル茶 キノコ型をしています。250gが一般的です。 ■茶葉の重さについて 固形茶は、新しいもの、古いもの。圧延のゆるいもの、圧延の強いもの。などの差で、手で持ち上げたときの重量に差を感じることがあります。
![]() 左: 「同興號後期圓茶70年代」 右: 「後期紅印鉄餅プーアル茶」 圧延の異なる二つです。 円盤の直径も一枚の重量もほぼ同じなのですが、「同興號」のほうは軽く感じ、「紅印鉄餅」のほうは重く感じます。同興號はふっくらと厚みがあり、紅印鉄餅のほうは押し固められて薄いです。このような場合、手に持った感覚は、錯覚なのですが、紅印鉄餅のほうが重く感じます。
左: 「七子紅帯青餅プーアル茶 」 288−325g 右: 「大益7532七子餅茶06年」 350g 老茶と新茶です。 茶葉の等級や圧延は似ているのですが、 「七子紅帯青餅」はカラカラに乾いて、また、端のほうの茶葉は崩れて失われているため、重量がやや少ないのです。 ■香りについて ここで言う香りは、乾燥している状態で、茶葉に鼻を近づけて感じ取れる香りのことです。飲んだときの香りではありません。 生茶も熟茶も、香りの強いものは、まだメーカーから出荷されて間もないものです。熟成期間が長いほど香りは弱くなり、20年も経つと、木のような落ち着いた香りが、ほんのわずかにあるのみと変化してゆきます。 長期熟成されたものは、保存の環境によって香りが異なります。香港や広東の湿度の高い茶商の倉庫から出てきて間もないものは、土臭いような、カビっぽいような香りのあるものもあります。また、熟成具合の良いものには、少し甘いような、麹の香りのするものもあります。退倉して、常温の乾燥したところに数ヶ月置くことで、それらの香りはなくなってゆきます。 ■茶葉の色について ![]() 左の写真は、2年モノの生茶。 右の写真は、17年モノの生茶。 二つとも餅茶の表面の茶葉です。茶葉の等級はほぼおなじですが、熟成具合が異なります。生茶の場合は、メーカーから出荷された時点では、緑茶とほとんど変わりませんので、緑色が残る茶葉があります。熟成される環境によって色の変化はことなります。乾燥した環境で保存されたものは、明るい色をしています。比較的湿度の高い環境で保存されたものは、赤味が加わり、黒っぽくなってゆきます。いずれも、熟成状態の良いものは、茶葉にかすかなツヤがあります。 また、写真ではわかりにくいのですが、固形茶の場合、熟成期間が短いものは、きっちり茶葉が詰まって固まっています。(最近の新しいメーカーには、圧延が甘くて、そう見えないものもあります) 熟成期間の長いものは、茶葉に隙間ができ、少しゆるい感じがします。茶葉の大きさや圧延技術によっても異なりますので、一概には言えませんが、新しいほど表面はツルッとした感じに見えます。 ■「小沱茶」と「沱茶」について 「小沱茶」はキャンディーのような小さなサイズにひとつひとつ紙で包まれているため、見た目の美しさや、崩して飲む手間のないことから、人気があります。 しかし、この形にするために茶葉はちょっと無理をしていますので、当店では扱っていません。 ![]() 小さく固められるため、茶葉は粉末状になっていて形がはっきりとしません。茶葉の形がわからないため、雲南省の茶葉なのか、それともどこか別の地域の茶葉か、はっきりとしないことがあります。また、粉末状の茶葉を煎じると、濃い色がいっきに出てきて雑味が出やすく、美味しく淹れるのは案外難しいのです。 「小沱茶」に対して、1個が100gと250gのサイズが一般的な「沱茶」は、茶葉は大きく形がはっきりとしています。
![]() それでも沱茶は、円盤型の餅茶やブロック型の磚茶に比べると、窮屈な形に押し固めるために、一つ一つの茶葉を揉んで小さくしてあります。そこがまた、特徴のある風味を出すことにもなっています。 ■茶葉の等級について 茶葉の等級には、特級、1級、2級〜10級まであります。簡単に言うと、等級が小さいのは若葉の小さな葉で、等級が大きいほど茶葉も大きくなります。
また、プーアル茶には、茶葉だけでなく茎の部分も大切です。一般的にプーアル茶に使用される茶葉は、茎のところまでをふくめて摘み取られます。 ![]() 茎には、熟成をうながす栄養素が多くあり、また、保存熟成のときの通気をよくする役割もあります。緑茶の場合は、特級や一級の新しい若い茶葉だけに価値がありますが、プーアール茶の場合は、そうとは限りません。 茶葉の等級の違いや茎の配合で、風味も熟成の具合も異なります。 ![]() 左の写真は、「佛海白毫餅」2002年(中国雲南六大茶山茶業有限公司) 右の写真は、「7582大葉青餅」1975年(孟海茶廠) 「佛海白毫餅」は、新芽の特級〜3級くらいの新芽の茶葉をふんだんに使って作られた新しいメーカーの製品です。2002年製造で、熟成期間が短いのですが、渋みや苦味が極めて少なく、花のような甘い香りがして飲みやすいお茶です。しかし、新芽には長期熟成したときに旨味に変化する成分が少ないため、それだけで作られたものは、長期保存には向いていない可能性もあります。 それに対して、「7582大葉青餅」は5級〜8級の大きな茶葉で作られ、茎の部分も混ざります。茎の部分は、菌類に栄養をあたえたり、通気をよくして、塾生を促します。30年ほど経った今でこそ強い渋みや苦味が落ち着いて、旨味が濃く、バランスのよい味ですが、熟成期間が10年くらいのころは、「辛い」と表現されるほど渋みや苦味が強かったことでしょう。 茶葉の熟成だけを考えると、大きな葉や茎がたくさん混ざるほうが良いのですが、かといって、それが美味しいかどうかは別です。メーカーには、その茶葉の配合によって味をつくる技術がありますので、そうしたメーカーの味に人気が集中します。 ■「熟茶」の「渥堆(オードゥイ)」発酵について
![]() どちらの茶葉も熟茶です。 茶葉の色は、共通して赤味があり、黒っぽい色をしています。 「熟茶」の製造技術は、1958年からの大躍進による農業改革を背景に、安定した品質と、時間のかからない効率の良い生産を目的に、1960年代から研究され、1970年代初期に、販売開始されています。メーカーの倉庫で、茶葉を積み上げたところに水を撒いて、温度を管理し、麹菌を主とした菌のグループによる発酵をうながす工程があります。これを「渥堆(オードゥイ)」といいます。 「渥堆(オードゥイ)」では、茶葉を頻繁にひっくりかえして空気に触れさせる作業があり、その期間はメーカーによって、あるいは使用される茶葉によって様々です。メーカーによる技術の差が大きくあります。技術のないメーカーの製品は、熟成にムラがあり、カビ臭い、アンモニア臭い、泥臭いなどの雑味が混ざります。 渥堆(オードゥイ)技術で初めて量産された1973年頃のお茶「73厚磚茶」の紹介ページもご参照ください。 ⇒【73厚磚茶73年製】 「渥堆」でのプーアール茶の発酵に活躍する菌類には、 ------------------------------------ 黒麹カビ(Aspergillus niger) 青カビ(Penicllium) クモノスカビ(Rhizopus) 灰緑麹菌(Aspergillium gloucus) サッカロミケス酵母菌(Saccharomyces) 土生麹菌(Aspergillium terreus) 白麹菌(Aspergillium candidus) その他雑菌(Bacterium) ------------------------------------ などが確認されています。 (雲南科技出版社 「雲南普シ耳茶」の一部を参照) しかし、もっと多くのいろいろな菌類もかかわっているという研究結果もあります。すべてが解明されているわけではありません。 これらの菌類は相互に作用して、例えばある菌の活動によって発生する熱によって、別の菌が活動しやすくなったり、ある菌の活動によって作られた成分が、別の菌の栄養になったりして、その結果、茶葉の成分を変化させ、それが人の体に良い成分や、美味しさの成分になります。良性の菌類がつくった成分のなかには、他の雑菌を寄せ付けない、抗菌効果を発揮するものがあります。 ■茶葉に付着するカビについて 1990年代までのプーアル茶は、茶商の倉庫に長期保存されたものがほとんどです。茶商の倉庫の環境はさまざまで、風味が大きく異なります。プーアル茶の熟成の味に親しむ香港や広東では、強めの熟成による特有の風味や、甘くまろやかな味が好まれます。その倉庫は、温度や湿度が高めで、お茶を美味しくする菌類が穏やかに活動できる環境にあります。 ![]() 茶葉の成分が浮き出てところどころ白くなっています。「白露(バイルー)」と呼ばれるもので、茶葉が湿ったときに成分が浮き出て白くなるものですが、温度と湿度が適切であれば、熟成具合に問題はありません。この2つの写真のものはどちらも美味しく仕上がっているプーアル茶です。 ![]() この2つの写真の茶葉は、水は掛かっていませんが、茶葉が水分を含み過ぎて、熟成が失敗した例です。白露(バイルー)のようでもありますが、茶葉が全体的にくすんでおり、ツヤがありません。倉庫の風通しが悪かったり、茶葉に直接水が掛かるようなことがあると、空気が不十分なまま発酵します。そうなると、味を悪くする成分や、人体に害のある成分がつくられます。茶葉を鼻に近づけて嗅いでみたり、試飲をすると、はっきりと異臭や異味に気付くことができます。いくらか経験を積むと、試飲するまでもなく、茶葉を見ただけで判るようになります。
![]() 緑カビがついています。このお茶はもう飲むことができません。水はかかっていませんが、意図して、温度は低めで、湿度を上げたところに置いて実験をしたものです。いわゆるかび臭さがあります。
![]() ところが、この茶葉を乾燥状態で保存し、約5ヶ月が経過すると、カビの胞子は消えて見えなくなりました。こうなると、茶葉を見ただけの判別は難しくなります。もちろん煎じた時にはかすかに腐臭があります。 ![]() この写真は、茶葉に水をかける実験をしたときのものです。茶葉は焦げると表現されるように、黒く変色しています。また、表面の白くなったところの色は、白露の様子とは異なります。 茶葉を崩してみると、茶葉に粘り気があり、アンモニア臭を出しています。こうした茶葉の香りや色を覚えておくのも、質の良し悪しを見分けるのに役立ちます。 ![]() 「金花」と呼ばれる麹カビの一種で、人間にとっては良性のものです。「金花」は、六安茶などの黒茶の後発酵のときにも活躍する菌類で、お茶を美味しくします。温度28度前後、湿度75%前後で活発になるとされていますので、茶商の倉庫内や、あるいは日本の室内においても、夏の間の一時期は、こうした菌類の活動があるかもしれません。「金花」のあるプーアル茶には、甘みとほろ苦味が出るのが特徴です。そのものにも栄養や旨味があるので、茶葉といっしょに煎じて飲まれます。 ■未入倉のプーアル茶 香港、台湾、広東などの夏の間は、気温38度、湿度98%などは日常なので、常温の倉庫に置くだけで、菌類の活動する環境は整います。茶葉の含む水分によって、成分の変化も緩慢にすすむでしょう。しかし、 雲南の標高の高いところや、上海、北京など、比較的気温が低く、乾燥した地域で乾燥状態で保存されたものには、茶商の倉庫と同じような熟成の風味にはなりません。倉庫に入っていないということから、当店では「未入倉」と呼んでいます。 乾燥状態では菌類は活動しにくいと思われますが、茶葉の成分の変化はごくゆっくりと続きます。こうした味の変化も含めて、「熟成」という言葉をつかっています。 「未入倉」のプーアル茶の生茶の風味は、緑茶に似たところが残っているので、もともと緑茶の味覚で育った上海や北京の人たちに好まれています。倉庫熟成のされていない生茶に人気が出たりしています。また、年代モノの「未入倉」のプーアル茶の数は少ないことから、近年は価値が上がっています。 1990年代後半からは、雲南の茶葉の取引の自由化により、民営のメーカーが乱立し、メーカーから直接中国大陸の小売店に販売されるプーアル茶が増えたため、「未入倉」モノは急増しています。 ![]() 1972年の孟海茶廠の餅茶の生茶。完全に未入倉。 30年も経つのに、いまだに茶葉は鶯色。煎じても茶湯の色に赤味はありません。やはり緑茶に似たところのある味わいですが、渋みや苦味は角が取れて、まるくなっています。 わずかながら、旨味や甘味も増しています。 ■葉底を見る 葉底 (ye di)は、煎じた後の茶葉のことです。 葉底の様子から、もとの茶葉がどんなふうみ栽培されたものだったか、どんな茶葉がブレンドされているか、どのくらい熟成されているかなど、知ることが出来ます。試飲したときは、葉底をチェックしてみましょう。 ![]() 左の写真は、上述の「小沱茶」のものです。茶葉が粉末状になっているため、葉底も形がはっきりしません。弾力がなく、べちゃっとしています。 右の写真は、生茶の1990年代ものです。茶葉がはっきりと形を残しております。弾力もあり、活き活きとしています。
![]() 左の写真は、生茶の年数の異なるもの。 右の写真は、生茶10年モノ、生茶20年モノ、熟茶7年モノ。色の差がよく出ています。茶葉は同じ量で煎じておりますが、煎じた後の茶葉のふくらみ具合は、生茶の10年ものが一番大きいです。
![]() 左の写真は生茶の20年モノ 右の写真は熟茶の12年モノ 左の茶葉の色が栗色に対して、右の茶葉の色は赤栗色で、さらに黒っぽい茶葉が混じります。熟茶の茶葉は生茶に比べて弾力がなく、形が崩れています。もともと使われた茶葉の差もありますが、熟茶に加工される「渥堆」の段階で、茶葉の形が崩れるものが多いのです。 ■茶湯の色を見る 煎じたときの湯の色や、色の出方から、生茶と熟茶、圧延の具合、熟成年数、熟成具合の違いなどを見ることができます。
![]() 生茶の湯の色は明るく、透明感があります。熟成の弱いものは、緑が残る鶯色からやまぶき色。熟成の強いものは赤味が加わります。
![]() 熟茶は、赤味が強く、やや暗い色になります。色の出るスピードが早いため、写真のように、底のほうに濃い色が溜まります。メーカーでの熟成度によって、この色は変わります。また、1970年代の熟茶は、熟成が弱いので、どちらかというと生茶の年代モノに近い色をしています。
![]() 左の写真は、熟茶初期の製品である「73厚磚」です。初期の熟茶製品は、「半生熟茶」と呼ばれる熟成の弱いものが多く、生茶の年代モノに似た色をしています。風味もまた、生茶の老茶に似ています。 右の写真は、「天字沱茶90年代」です。それ以上はないくらいにメーカーでも茶商の倉庫でも、強く熟成された熟茶です。黒々としてはいますが、透明感があります。
![]() 表面にホコリや茶葉の粉の浮くものもあります。これはバラバラになって安く売られている散茶に多いのですが、茶葉の粉もありますが、ホコリもありますので、洗茶をしっかりしてから飲むのが良いでしょう。 ■茶葉の混入物について 茶葉以外の混入物がよくあります。
![]() 植物の繊維?髪の毛?竹の皮?小石?と思われるような茶葉意外のものが見つかることがあります。これらは、高級な茶葉にもあることで、茶葉の良し悪しとは関係しません。 茶葉を崩すときに見つかるので、まちがって煎じてしまうことは少ないでしょう。また熱湯でいったん洗茶することから、衛生的な問題もないと判断しております。 当店の扱うお茶にもこのようなことがあるかもしれませんが、あらかじめご理解願います。 ここでは、ざっとおおまかな茶葉の見かたについて書きました。 さらに上級の茶葉の見かたについて、次のページでご紹介します。 ⇒ 【プーアール茶の茶葉の見方上級編】 ご質問やご意見は、 ⇒【店長にメール】 関連ページ ⇒【プーアール茶を味で選ぶ】 ⇒【プーアール茶の保存方法】 ⇒【一枚モノの品質保証】 ⇒【5gの茶葉でどのくらい飲めるか?】 |