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プーアール茶の茶葉の見方

「知之者不如好之者。好之者不如樂之者。 」
それを知るだけの人は、それを好む人には及ばない。
それを好む人は、それを楽める人には及ばない。
孔子『論語』より

■はじめに
プーアール茶の良し悪しは、

1.原料となる茶葉
2.製茶の技術
3.保存熟成の環境

この3つで決まります。
これらの違いを見分けるポイントの一部を紹介します。
プーアール茶選びは、売る側のセンスよりも、買う側のセンスが求められます。原料となる茶葉は、同じ年の茶葉でも、質のちがいで100倍もの価格差があります。茶葉の生まれ育ちや旬を見極め、仕上がりの良し悪しを確かめて、その価値に見合った買い物をするのには、少し修行を積むことになります。
とくに中華圏の嗜好品は、お茶のみならず、プロにも任せていられないほど信用できないところがあり、自ら勉強する機会に恵まれます。それがかえって趣味としての面白さや奥深さにつながっています。


まずはじめに茶葉を見るための基礎的な知識を紹介します。

■「生茶」と「熟茶」について

7542七子餅茶99年無内飛 黄印7572七子餅茶99年プーアル茶
7542七子餅茶99年無内飛 黄印7572七子餅茶99年プーアル茶
左: 生茶 「南糯古樹青餅2010年プーアル茶」
右: 熟茶 「版納古樹熟餅2010年プーアル熟茶」

生茶:
鮮葉―殺青―揉捻―晒干―――――――圧延―乾燥

熟茶:
鮮葉―殺青―揉捻―晒干―渥堆―涼干―圧延―乾燥

生茶は・・・・・
摘みたての鮮葉を炒って天日干しで仕上げた緑茶に近いお茶です。緑茶に比べると火入れが浅く「生」の要素があり、完成後にもゆっくりと歳月をかけて熟成してゆきます。長期保存(10年~30年)して、まろやかになった風味が好まれています。

熟茶は・・・・・
「渥堆」(ウォードゥイ)と呼ばれる黒麹菌を主とした菌類のグループで茶葉を堆積発酵させる工程があります。成分は変化して赤味の強い色になります。土っぽい発酵臭を持つものもあって、好みが分かれますが、その作用はダイエットや消化促進に良く、プーアール茶と言えばこの熟茶のほうが普及しています。
参考ページ
+【プーアール茶と発酵食品の魅力】

■形状について

プーアル茶には様々な形があります。大きくわけると、散茶と固形茶の2種類です。高級プーアル茶では、同じクラスの茶葉で散茶と固形茶がある場合には、固形茶が高価になります。散茶は運搬中に茶葉と茶葉が摩擦して形を傷めたり粉になるところが出てきます。固形茶にはその心配がありません。固形茶は山深い辺境地の西双版納の産地から、遠くの都市へお茶を運ぶための知恵でした。
また固形茶は包み紙などがあり、年代モノは鑑定の手がかりになります。散茶は茶葉のみで鑑定するため、曖昧になりがちです。


散茶のプーアル茶
もともと散茶として出荷されるものと、固形茶を崩して散茶にして売られるものとがあります。
固形茶を崩す理由にはいくつかあります。
1. 運搬途中に包み紙や固形の一部を損傷し、その価値を失う。
2. 茶商の倉庫熟成が部分的に失敗する。
3. 飲みやすさ優先で、崩す手間を省く。
などなど、様々です。

餅茶のプーアル茶 餅茶のプーアル茶
餅茶のプーアル茶
円盤型の固形茶が餅茶です。一枚一枚に包み紙がありますが、包み紙のない種類もあります。七枚組みで竹の皮もしくは厚紙に包まれています。1枚357gが標準ですが、最近では100g~3000gまでと、いろいろなサイズがあります。
1980年代初期以前の餅茶は選ばれた茶葉のみでつくられた高級茶がほとんどでした。包み紙の印刷、紙質、茶葉の様子などが鑑定のポイントになります。1990年代からの餅茶には大衆的な品が増えています。

磚茶のプーアル茶 磚茶のプーアル茶
磚茶のプーアル茶
レンガ型の固形茶です。1枚約250gが標準です。500g、1000gのものもあります。4枚1組で竹の皮や厚紙で包まれているものもあります。唐の時代から記録のある「茶馬古道」の時代からこの形があります。どちらかというと生活のためのお茶で高級茶は少ないです。年代モノには価値がついています。

沱茶のプーアル茶 緊茶のプーアル茶
左: 沱茶のプーアル茶
右: 緊茶のプーアル茶
沱茶はお碗型のプーアル茶です。100g、250gが一般的です。沱茶は圧延茶としてはもっとも古い形です。
緊茶はキノコ型をしています。250gが一般的です。
沱茶も緊茶も高級茶は少ないのですが、年代モノには価値がついています。

■「小沱茶」と「沱茶」について

「小沱茶」はキャンディーのような小さなサイズにひとつひとつ紙で包まれているため、見た目の美しさや、崩して飲む手間のないことから人気があります。 しかし小沱茶の多くはメーカーでの茶葉の篩いわけ時に発生した屑茶葉を再利用してつくられるため、原料の茶葉のグレードは低いものです。

小沱茶 プーアール茶・プーアル茶
屑茶葉は雑味が出やすく、美味しく淹れるのは案外難しいものです。大きなポットで煮出すようにするのに適しています。

「下関乙沱茶」プーアール茶・プーアル茶 「下関乙沱茶」プーアール茶・プーアル茶
「小沱茶」に対して1個が100gと250gのサイズの「沱茶」は、茶葉の形が大きくはっきりとしています。

■ティー・バッグについて

便利なティー・バッグになったプーアール茶もあります。それに対してティー・バッグに入っていない茶葉をリーフティーと呼ばれています。リーフティーは茶葉の形や色や艶をたしかめることができ、より美味しく淹れることができるので、高級茶葉をもとめるならリーフティーとなります。

■茶葉の重さについて

固形茶は、新しいもの、古いもの、圧延のゆるいもの、圧延の強いものなどのちがいで手で持ち上げたときの重量に差を感じることがあります。

同興號後期圓茶70年代 (プーアール餅茶)
左: 「同興號後期圓茶70年代」
右: 「後期紅印鉄餅プーアル茶」
圧延の異なる二つです。
円盤の直径も一枚の重量もほぼ同じですが、「同興號」のほうは軽く感じ、「紅印鉄餅」のほうは重く感じます。同興號はふっくらと厚みがあり、紅印鉄餅のほうは押し固められて薄いです。重量が同じでも手に持った感覚は紅印鉄餅のほうが重たく感じます。
銘柄によって圧延の強さが異なり、それは風味の特徴にもつながります。

七子紅帯青餅プーアル茶 大益7532七子餅茶06年
左: 「七子紅帯青餅プーアル茶 」 288-325g
右: 「大益7532七子餅茶06年」 350g
30年の差がある老茶と新茶です。
もともと357gで作られた餅茶ですが、 「七子紅帯青餅」は1970年代のお茶で、年数が経ってカラカラに乾いたり、成分が変化したり、端のほうの茶葉が崩れたりして、重量が少なくなっています。

■香りについて

ここで言う香りは、乾燥している茶葉に鼻を近づけて感じ取れる香りのことです。飲んだときの香りではありません。
生茶も熟茶も、香りの強いものはメーカーから出荷されて間もないものです。熟成期間が長いほど香りは弱くなり、20年も経つとかすかに木の皮のような落ち着いた香りへと変化してゆきます。
長期熟成されたものは、保存環境によって香りが異なってきます。香港や広東の熟成のための湿度の高い茶商の倉庫から出てきて間もないものは、土臭いような「倉味」と呼ばれる香りがあります。熟成具合の良いものには少し甘いような香りのするものもあります。
倉庫から出して常温の乾燥したところに数ヶ月置くことで、「倉味」は薄れてゆきます。

■茶葉の色について

8892後期紅印圓茶プーアール茶・プーアル茶
左: 2年モノの生茶。
右: 17年モノの生茶。
生茶の場合はメーカーから出荷された時点ではまだ緑色が鮮明に残っています。年数が経つほど赤味を増してゆきます。色の変化のスピードは茶葉の質と保存環境によって差があります。どのような色に変化しているのが良いかは一概には言えません。それぞれのお茶に適した変化をしているかどうかを見分けることになります。


■茶葉の等級について

プーアール茶の原料である雲南の茶葉には、もともと等級という概念はありません。1970年代以降の国の農業政策によって新茶園の量産茶葉を基準とした等級分けがはじまりました。新茶園の茶葉は茶葉の形や大きさがそろっているのでメーカーの機械による篩いわけが可能です。
茶摘みは一芽二葉か一芽三葉が一般的で茶葉が若いほど小さく、春の香りの良い新芽と若葉はとくに小さいため収穫重量が少なく、その分高価になります。

プーアール茶の茶葉 プーアール茶の茶葉
プーアール茶の茶葉 プーアール茶の茶葉
1970年代の農業改革から1980年代中頃まで、一芽、一芽一葉、一芽二葉、一芽三葉、黄片と、茶葉を選り分けて収めることが茶農家に強要され、それに等級がつけられたことがありました。
高級茶に使用される古茶樹に等級分けがあったのは易武山などのほんの一部の地域であり、当時海外向けの高級品をつくる権利のあった国営の孟海茶廠から「7542」などの名作がこれらの茶葉でつくられました。
現在の古茶樹園の茶葉はすべて茎のところまでふくむ一芽二葉か、一芽三葉で茶摘みされています。そして「7542」は新茶園の量産茶葉でつくられる大衆品となっています。


茎の部分には、熟成をうながす栄養が多くあり、また、保存熟成のときの通気をよくする役割もあります。緑茶の場合は特級や一級の香りの強い新芽や若葉だけに価値がありますが、長期保存を意識して作られたプーアール茶はそうとは限りません。
茶葉の等級の違いや茎の配合で、風味も熟成の具合も異なります。

1~4級茶葉の2009年の餅茶 6~8級茶葉の2009年の餅茶
左: 1~4級茶葉の2009年の餅茶
右: 6~8級茶葉の2009年の餅茶
茶葉の等級によって風味は異なります。
生茶のプーアール茶の場合、新芽を含む若葉1~4級は香りが強く、つくられてからまだ1年か2年のうちは辛いと表現されるような刺激のある渋味や苦味があります。茶湯の色は淡く明るい黄色が特徴です。6~8級茶葉は香りが弱く、渋味や苦味がおだやかで、甘味や旨味が強く感じられます。茶湯の色はややオレンジ色がかっています。これを熟成された茶葉と勘違いするケースがあります。


左: 下関茶磚80年代 2級茶葉メイン
右: 義安棗香73特厚磚茶 5級茶葉メイン
熟茶のプーアール茶の場合も茶葉の等級によって風味に違いがあります。熟茶もまた新芽や若葉が多いほど渋味や苦味が利いた風味に仕上がります。茶葉が大きいと渋味や苦味がおっとりしていてそのかわり甘味や旨味が強くあります。香りは発酵に左右されるので茶葉の大きさだけでは判断できません。

■茶園や収穫時期のちがい

有名茶山のある茶園 有名茶山のある茶園
左: 1800メートル付近の茶山
右: 1000メートル付近の茶山
基本的には海抜の高い位置にある茶園ほど高級になります。海抜の低い土地(低い土地といっても雲南の西双版納では1000メートル以下に茶園はありません)の茶葉は香りが弱く、味に厚みが無く、廉価な熟茶の原料にされることが多くなります。

春の茶葉 夏の茶葉
春の茶葉 夏の茶葉
左: 春の茶葉 3月中旬
右: 夏の茶葉 7月下旬
高級品ほど春の旬の時期の茶葉が選ばれます。春の旬は一般的には3月~4月10日くらいまでです。4月10日を過ぎた頃からだんだんと雨が多くなり気温が上昇するので風味が落ちます。早春の茶葉はまだ雨が少なく芽や若葉が小さく茎の部分が短いのが特徴です。
雨が多い季節になるほど新芽が大きく育ち、茶葉も大きくなります。雨の季節の茶葉のほうが見かけは立派なので、餅茶など圧延したときにも新芽が大きくて綺麗に見えるため、ギフト用やお土産屋さんに並ぶお茶作りに使用されます。新芽が小さく見掛けの悪い割りに高価な早春の茶葉で作った品はしっかりと味と香りがあって、価格は3倍~5倍になるため、専門店に並ぶお茶好きのためのお茶作りに使用されます。
熟茶は一般的に風味のおっとりした夏や秋の茶葉が使用されます。
お茶の味は、茶園の場所、お茶の樹の樹齢、茶摘みされる季節が重要です。
季節の違いだけで見ても、茶農家から出荷される茶葉の価格は、春と夏とでは4~5倍ほどの価格差があります。また春にも3月~4月上旬、4月中旬~5月上旬で茶葉の質がずいぶんと変わります。4月頃から徐々に雨が多くなり茶葉の生育は良くなりますが、その分風味は薄くなってゆきます。

春茶
(3月上旬~4月上旬)  150kg  250元/1kg
二水茶
(4月中旬~5月中旬)  135kg  200元/1kg
四水茶
(5月中旬~6月下旬)  130kg  90元/1kg
五水茶
(7月上旬~8月下旬)  110kg  60元/1kg
秋茶
(10月上旬~11月上旬)  100kg  210元/1kg

これは一般的な古茶樹園の農家の2009年の収穫の一例です。季節と収穫高、茶葉の価格がそれぞれ異なります。二水茶、四水、と「水」が意味するのは雨の量ですが、春茶は初回の茶摘み、二水茶は初回の茶摘みが終わって2週間ほどたった第2回目の茶摘みで、雨の量が多く茶葉の育ちが良い時期となります。一般的には春茶は二水茶(4月中旬~5月中旬)までのものですが、実際の春茶の美味しさがあるものは春茶(3月上旬~4月上旬)の期間だけです。それにともなう価格の差があります。この農家では季節外れの茶摘みをひかえめにしているほうですが、それでも二水~五水の季節外れの収穫量は合計375kgになり、春茶と秋茶の旬の茶葉の合計250kgを上回る収穫量となっています。メーカーは安い茶葉をたくさん仕入れたほうが、製品をたくさん作れるわけで、利益も大きくなります。市場に季節外れの茶葉が使用された製品の多いのはそのためです。

■古茶樹と台地茶

班章の茶山 プーアール茶喬木
左:古茶樹園
右:台地茶園 (新茶園)
雲南省西双版納の山岳少数民族の茶園は、昔はすべて古茶樹園でした。古茶樹園の茶樹は森林の中で一本一本がバラバラに適当な間隔を保ちながら育っています。他の草木と同居した状態です。
台地茶 (新茶園)は、若い茶樹を密集させ低い背丈に保ち、収穫効率を追求された近代的な茶園です。
茶樹の品種は同じですが、古茶樹園の茶葉と新茶園の茶葉では風味が大きく異なります。近年新茶園が増えているのは、需要と供給の問題で、より安いお茶を求める消費者が増えているためです。


古茶樹園の中には「切り戻し型」の茶樹の茶園があります。
切り戻しはおそらく1700年代頃からこの土地に移住した漢民族のお茶づくりによってもたらされた栽培方法ですが、1970年代からの農業改革の影響で、山岳少数民族の茶園にも切り戻し型の茶樹が増えました。人の背の高さくらいに背丈を抑えられていますが、樹の幹は堂々たる太さを保っています。切り戻しした場合に風味が薄くなると言われていることがありますが、実はそうではなくて茶摘みの回数に関係しています。

プーアール茶喬木 プーアール茶喬木
プーアール茶喬木
茶樹の品種はいくつかあります。
厳密には10種類以上あるようなのですが、古茶樹園で見られるのを大きく二つに分けると茶葉が大きくて幅広のタイプと、茶葉がやや小さめのタイプです。大きくて幅広のタイプの新芽や若葉の小さなうちは逆に細長いという特徴があります。

プーアール茶潅木 プーアール茶潅木 プーアール茶潅木
「晒青毛茶」(プーアール茶の原料となる茶葉) 古茶樹と新茶園の茶樹の色の違いです。 左の青黒いのが古茶樹の茶葉。右の黄色いのが新茶園の茶葉。この2つはまったく同じ茶山の同じ条件の土地に植えられた茶樹ですが、茶葉に蓄えられる栄養分が異なるため、それが色の違いになって現れています。
また新茶園の茶樹に化学肥料が使用された場合は、色が青黒くなり、一見古茶樹と見分けがつきにくくなります。安価な古茶樹製品にはそれが使用されます。


■「熟茶」の「渥堆(オードゥイ)」発酵について

厚紙黄印七子餅茶 プーアール茶・プアール茶
左右どちらも熟茶です。
熟茶の茶葉は共通して赤味があり、全体的に黒っぽい色をしています。熟茶はメーカーの倉庫で茶葉を積み上げたところに水を撒いて、温度を管理し、麹菌を主とした菌のグループによる発酵をうながす工程があります。これを「渥堆(オードゥイ)」といいます。
+【渥堆/プーアール茶作りの現場】

「渥堆」の技術は、1960年代から研究され、1970年代初期に量産品が販売されています。 これは1000年も昔からある「黒茶」づくりを応用した技術で、中国ではいくつかの地域で菌類の発酵を利用したお茶に長い歴史があります。
「渥堆」はメーカーの設備や技術の差、あるいは発酵に使用する水の良し悪しが風味を左右します。下手な渥堆発酵にはカビ臭い、アンモニア臭い、泥臭いなどの雑味が混ざります。
渥堆(オードゥイ)技術で初めて量産された1973年頃のお茶「73厚磚茶」の紹介ページもご参照ください。
+【73厚磚茶73年製】

「渥堆」でのプーアール茶の発酵に活躍する菌類には、
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黒麹カビ(Aspergillus niger)
青カビ(Penicllium)
クモノスカビ(Rhizopus)
灰緑麹菌(Aspergillium gloucus)
サッカロミケス酵母菌(Saccharomyces)
土生麹菌(Aspergillium terreus)
白麹菌(Aspergillium candidus)
その他雑菌(Bacterium)
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などが確認されています。
(雲南科技出版社 「雲南普シ耳茶」の一部を参照)
しかし、もっと多くのいろいろな菌類もかかわっているという研究結果もあります。すべてが解明されているわけではありません。
これらの菌類は相互に作用して、例えばある菌の活動によって発生する熱によって、別の菌が活動しやすくなったり、ある菌の活動によって作られた成分が、別の菌の栄養になったり、悪い菌を寄せ付けないなどして相互に作用しています。良性の菌類の働きは人の体に良い成分をつくり、他の雑菌を寄せ付けない抗菌効果を持つので、長期保存にも適していると考えられています。

■茶葉に付着するカビについて

1990年代までのプーアル茶は、香港や広東の茶商の倉庫に長期保存されたものが多くあります。茶商の倉庫の環境は温度や湿度が高く、お茶を美味しくする菌類が穏やかに活動できる環境にあります。
また一時期菌類の活動があって、その後に菌類の活動しない乾燥した環境に保存された場合にも、菌類の残した酵素成分などが茶葉の変化をうながし、ゆっくりと美味しくなってゆくと考えられています。


茶葉の成分が浮き出てところどころ白くなっています。「白露(バイルー)」と呼ばれるもので、茶葉が湿ったときに成分が浮き出て白くなるものですが、温度と湿度が適切であれば、熟成具合に問題はありません。それは試飲鑑定ではっきりとします。この2つの写真のものはどちらも美味しく仕上がっているプーアル茶です。


この2つの写真の茶葉は水分を含み過ぎて熟成に失敗した例です。白露(バイルー)のようでもありますが、茶葉が全体的にくすんで、ツヤがありません。倉庫の風通しが悪かったり、茶葉に直接水が掛かるようなことがあると不良発酵します。そうなると、味を悪くする成分や人体に害のある成分がつくられます。茶葉を鼻に近づけて嗅いでみたり試飲をすると、はっきりと異臭や異味に気付きます。いくらか経験を積むと試飲するまでもなく、茶葉を見ただけで判るようになります。

カビが生えたプーアール茶 カビが生えたプーアル茶
緑カビがついています。このお茶はもう飲むことができません。水はかかっていませんが、意図的に湿度を上げたところに置いて実験をしたものです。いわゆるかび臭さがあります。

カビのある茶葉 カビが消えた茶葉
ところが、この茶葉を乾燥状態で保存し、約5ヶ月が経過すると、右の写真のように元に戻ります。見かけは戻っても悪い成分は残っているので飲むことは出来ません。見た目だけの判別は難しくなりますが、もちろん煎じた時には腐臭があります。


この写真は、茶葉に水をかける実験をしたときのものです。茶葉は焦げると表現されるように、黒く変色しています。また、表面の白くなったところの色は、白露の様子とは異なります。
茶葉を崩してみると粘り気がありアンモニア臭を出しています。こうした茶葉の香りや色を覚えておくのも、質の良し悪しを見分けるのに役立ちます。


「金花」と呼ばれる麹カビの一種で、人間にとっては良性のものです。「金花」は六安茶など黒茶の後発酵にも活躍する菌類で、お茶を美味しくし、栄養成分をつくります。温度28度前後、湿度75%前後で活発になるとされているので、茶商の倉庫内やあるいは日本の室内においても、夏の間の一時期はこうした菌類の活動があるかもしれません。
「金花」のあるプーアル茶には、強い甘みとほろ苦味があるのが特徴です。「金花」そのものにも栄養や旨味があるので、茶葉といっしょに煎じて飲まれます。

■未入倉のプーアル茶

雲南の標高の高いところや、上海、北京など、比較的気温が低く乾燥した地域で保存されたものは、茶商の倉庫と同じような熟成の風味にはなりません。倉庫に入っていないということから、当店では「未入倉」と呼んでいます。
乾燥状態では菌類は活動しにくいと思われますが、茶葉の成分の変化はごくゆっくりと続きます。こうした味の変化も含めて「熟成」という言葉がつかわれています。
「未入倉」のプーアル茶の生茶の風味は、もともと緑茶の味覚で育った上海や北京の人たちに好まれています。また、年代モノの「未入倉」のプーアル茶の数は少ないことから、近年は価値が上がっています。
1990年代後半からは、茶商の倉庫では保存されずに、直接小売店に流通するプーアル茶が増えたため、「未入倉」モノは急増しています。


1972年の孟海茶廠の餅茶の生茶。完全に未入倉。
30年も経つのに、いまだに茶葉は鶯色。煎じても茶湯の色に赤味はありません。やはり緑茶に似たところのある味わいですが、渋みや苦味は角が取れて、まるくなっています。 わずかながら旨味や甘味も増しています。


■葉底を見る

葉底 (ye di)は、煎じた後の茶葉のことです。
葉底の様子から、もとの茶葉がどんな質のものか、どんな茶葉がブレンドされているか、どのくらい熟成されているかなど、知ることが出来ます。試飲したときは、葉底をチェックしてみましょう。

後期紅印圓茶(プーアール餅茶・プーアル餅茶)
左: 小沱茶やティーバックの葉底
右: 生茶の餅茶の葉底
小沱茶やティーバックの葉底は粉末状になっているため、形がはっきりしません。弾力がなくべちゃっとしています。
生茶の餅茶は茶葉がはっきりと形を残しています。弾力もあり、活き活きとしています。

後期紅印圓茶(プーアール餅茶) 左:プーアール生茶10年もの、中:プーアール生茶20年もの、右:プーアール熟茶7年もの 左:プーアル生茶10年もの、中:プーアル生茶20年もの、右:プーアル熟茶7年もの
左: 生茶の年数の異なるもの。
右: 生茶10年モノ、生茶20年モノ、熟茶7年モノ。
葉底の色の差があります。茶葉は同じ量で煎じていますが、煎じた後の茶葉は新しいほど弾力があり、膨れて体積が大きく見えます。

プーアール生茶 プーアル生茶 鳳凰プーアル沱茶
左: 生茶の20年モノ
右: 熟茶の12年モノ
熟茶の茶葉は生茶に比べて弾力がなく、形が崩れます。「渥堆」のときに発酵のムラをなくすために茶葉が裁断されます。そのため少し形が崩れています。また、裁断されなくても発酵して成分の変化によって茶葉の形が崩れているケースもあります。

■茶湯の色を見る

煎じたときの湯の色や、色の出方から、生茶と熟茶、圧延の具合、熟成年数、熟成具合の違いなどを見ることができます。

プーアール生茶 プーアル生茶 プーアール生茶 プーアル生茶

生茶の湯の色は明るく、透明感があります。熟成の弱いものは、緑が残る鶯色からやまぶき色。熟成の強いものは赤味が加わる栗色になります。

プーアール熟茶 プーアル熟茶 プーアール熟茶 プーアル熟茶
熟茶は、赤味が強く、やや暗い色になります。色の出るスピードが早いため、写真のように、底のほうに濃い色が溜まります。「渥堆」の熟成度によってもこの色は変わります。
熟茶は年代によって熟成度が異なります。 1970年、1980年代、1990年代、2000年代と、だんだんと熟成度が強くなる傾向があります。1970年代の熟茶は、熟成が弱いので、どちらかというと生茶に近い色をしています。

プーアール熟茶 プーアル熟茶 プーアール熟茶 プーアル熟茶
左:  73厚磚プーアル茶
右:  天字沱茶90年代プーアル茶
熟茶初期の製品である「73厚磚」です。初期の熟茶製品は、「半生熟茶」と呼ばれる熟成の弱いものが多く、生茶の年代モノに似た色をしています。風味もまた、生茶の老茶に似ています。
「天字沱茶90年代」です。メーカーでも茶商の倉庫でも、強く熟成された熟茶です。黒々として透明感があります。

煎じるとホコリの浮くプーアル散茶 プーアル散茶
表面にホコリや茶葉の粉の浮くものもあります。これはバラバラになって安く売られている散茶に多いのですが、茶葉の粉もありますが、ホコリもありますので、洗茶をしっかりしてから飲むのが良いでしょう。

■茶葉の混入物について

茶葉以外の混入物がよくあります。

プーアル茶・プーアール茶の茶葉からでてくるもの
植物の繊維?髪の毛?竹の皮?小石?ビニールの紐?と思われるような茶葉意外のものが見つかることがあります。これらは、高級な茶葉にもあることで、茶葉の良し悪しとは関係しません。茶農家やメーカーでの製茶のときに自然に入ってしまうものです。

ビニールの袋に包まれた茶葉 ビニールの袋に包まれた茶葉
とくにビニールの紐の切れ端のようなのが多いのですが、それは写真のようなビニールを編んだような袋に茶葉が入れられ、茶農家からメーカーに運ばれるためです。
固形の茶葉を崩したり、煎じるときに茶葉を分けるときに見つかるので、いっしょに煎じてしまうことはまずないでしょう。当店の扱うお茶にもこのようなことがあるかもしれませんが、これは商品価値を落とすものではありません。あらかじめご理解願います。

ここでは、ざっとおおまかな茶葉の見かたについて書きました。
さらに上級の茶葉の見かたについて、次のページでご紹介します。
+ 【プーアール茶の茶葉の見方上級編】

ご質問やご意見は、
+【店長にメール】


関連ページ
+【プーアール茶の保存方法】
+【5gの茶葉でどのくらい飲めるか?】


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