
■オリジナルのお茶
西双版納の古茶樹でつくった、熟茶のプーアール茶です。
当店のオリジナル品です。
+【当店オリジナルのお茶について】

「熟茶」は、麹菌や酵母で発酵させたお茶です。
発酵による滋養豊富な成分は、冷えた体を温めたり、消化をたすけたり、体の求めてやまない味となっています。
参考ページ
+【消化をたすける発酵のお茶】
■古茶樹の熟茶
雲南省南部からミャンマー・ラオスの国境にかけてひろがる亜熱帯山岳地帯はプーアール茶の里です。山奥の自然林には樹齢数百年にもなる古茶樹が群生し、山の人々がお茶と共に暮らしています。
近年の環境の変化や人々の暮らしの変化のために、古茶樹は希少になりつつありますが、野生味あふれる味わいの人気は衰えず、高級茶としての魅力を増してきています。

ところが、プーアール茶を代表する「熟茶」には、有名茶山の古茶樹でつくられた例がほとんどありません。熟茶は「台地茶」と呼ばれる畝づくりの新茶園の量産型の茶葉でつくるのが一般的です。
近年の熟茶には「古茶樹」や「野生茶」と印刷された製品も増えていますが、当店が現地で調べた事実とはやや違うところがありました。発酵で変質した茶葉の鑑定は難しいので、一度自らの手で集めた本物の古茶樹の茶葉で、事実を確かめたいと考えていました。
しかし、この試みは簡単ではありませんでした。
古茶樹での熟茶づくりが難しい理由は、その製法にあります。
茶葉を発酵させる工程において、少なくとも数トンは集めて積み上げないことには、発酵がうまくゆかないのです。
新茶園で量産されている茶葉なら10トンでも20トンでも簡単に集まりますが、古茶樹となるとそうはゆきません。産量が少なく、山奥の農家一軒一軒から数十キロ単位の毛茶(原料となる茶葉)を少しずつ集めることになるからです。
そもそも熟茶というのは、量産が目的で生まれてきたお茶です。
大量の茶葉を積み上げて発酵させる「渥堆」(ヲードゥイ)と呼ばれる熟茶づくりの製法は、少なくとも1000年は歴史のある黒茶づくりをもとに、1960年頃から量産の研究が始められ、1970年頃にその製法が完成しました。
国が”製品の大衆化”を求めていた時代でした。
輸出で外貨を稼ぐ高級品を除いて、安く・美味しく・大量に体に良いお茶をつくることがテーマとなり、設備の大きな国営工場に熟茶の生産がゆだねられました。
今からふりかえってみると、渥堆発酵の熟茶は、プーアール茶量産時代の幕開けを告げる製品だったのです。
熟茶の誕生によって、プーアール茶の未来は大きく開けました。今日のみんなの知っているプーアール茶は「熟茶」のことです。数百年かあるいはそれ以上に長い歴史のある「生茶」のことではありません。香港や広東の飲茶のプーアール茶は「熟茶」です。ダイエットの減肥茶も、小粒でかわいい小沱茶も、上海国際空港で3年モノを30年モノと偽って1300元で売られていた60元の餅茶も、みんな「熟茶」です。
今や世界ではプーアール茶=熟茶のことです。
「紅茶」や「緑茶」や「ウーロン茶」に続いて、熟茶のプーアール茶は日常のお茶としてのポジションを確たるものにしつつあります。
熟茶は生まれつきの量産品です。
少量生産の古茶樹との相性は良くありません。有名茶山の古茶樹は高価なので、それで熟茶をつくればそれなりに高価になるはずです。しかし不思議なことに、生茶の高級品よりも高価な熟茶を見たことはありません。
過去の1970年代の銘茶とされる熟茶製品の中には、その当時はまだ安かったせいか、それとも高級茶づくりに余った粗茶葉が使用されたせいか、古茶樹の茶葉の特性が見られる製品がいくつかありました。それらは30年以上の長期熟成の変化も加わって、特別な風味がファンを魅了しています。
当店もファンを魅了するお茶をつくるべきです。
まずはいくつかの茶廠(メーカー)に相談してみました。数トンなんて言わずに、せめて数百キロでできないだろうか?
どこへ行っても「無理」と、あえなく断られました。しかし、そのうちの一軒はちょうど古茶樹の熟茶をつくっているところでした。初めての試みだったようです。茶葉は布朗山(西双版納孟海県の有名茶山のひとつ)の雨の季節の安価な古茶樹のものを集めていました。安価といっても量産型のと比べると数倍の価格です。
渥堆のために積み上げられたその茶葉をちらっと見ましたが、少なく見積もっても7トンはありそうでした(後に5トンであったと茶廠の社長から教えてもらいました)。
その茶廠は2007年から2009年まで2年間かけて、布朗山のあちこちの農家から季節外れの古茶樹の毛茶を買い集めて保存していたのです。そうでもしなければ5トンは集まりません。
やはり当店もその手を使って、二年ほどかけて茶葉を集めるしかないかとあきらめかけていたときに、別の茶廠から「1トン以内でやってみましょう!ただし失敗しても責任は取りません。」との打診がありました。いったん断ったものの、その後も思案してくれていたようです。
職人の話を聞くと、ごく簡単な工夫をするだけのことでしたが、しかしこれならいける!と思う解決策でした。少量で渥堆発酵できるなら、茶葉さえ集まればすぐにつくれます。
渥堆発酵のベストシーズンは、西双版納の気温と湿度の上がる4月中旬から9月です。このとき2009年9月だったので、翌年の2010年4月までに茶葉を集めたらよいのです。
秋の旬の茶摘みの始まる10月までに、まだ1ヶ月はありました。先手を打てば、良い茶葉が入手できるはずです。
■収茶
茶葉の一番の旬は春ですが、秋の10月~11月は二番目の旬です。雨が減り気温が下がってくると味はぐっとのってきます。この季節は茶樹が花を咲かせ実を付けます。春に比べると香りや辛みが弱くなり、風味はおっとりしてやわらかい印象があります。
秋の茶葉は葉のすぐ下の茎の部分が長いのですが、茎は発酵を促す澱粉や糖分が豊富で、お茶を甘くすることにもなり、邪魔にはなりません。
実際に美味しい熟茶には、茎の部分がたくさん入っているものが多くあります。新芽や若葉だけの熟茶をつくる場合も、茎の部分をいっしょに発酵させておいて、後から取り除く方法もあります。
そしてなにより秋の茶葉は、春に比べると価格が安いのです。春の旬よりも3割は安く入手できます。
孟宋はミャンマーの国境まで4kmにせまる山深い辺境地帯で、西側でもっとも有名な老班章に負けないくらいの大きな古茶樹があります。虎が国境を越えて茶園に放牧している黄牛を襲うことがあるという、ナショナル・ジオグラフィックの聖地でもあります。
その土地に昔から住むアイニ族の2つの寨子(村)を訪問し、古茶樹を見学し、何軒かの農家のつくった毛茶を試飲しました。
このときはじめて一軒一軒の農家の製茶技術に、かなり差があることに気付きました。
茶商はあるていど農家の製茶技術を見て選ぶので、農家は自分の技術を他の農家に公開したがりません。小さな村の中でも技術差がひらいているのはそのためです。
当店が集める毛茶の量は1トン以内ですが、それでも1軒100キロだとして10軒の農家を束ねることになります。秋の旬は10月~11月までの1ヶ月間だけ。春に比べるとやや期間が短く、農家一軒がフル稼働しても100キロの毛茶がよいところです。古茶樹は自然栽培のために茶葉の産量が少ない上に、茶摘みは木に登っての作業もあるので、収穫効率が悪いのです。
10軒の農家の技術レベルをそろえるのは至難の業です。たとえそこに住み込んで管理をしても、2年も3年もかかって少しずつ良くなってゆくものであって、この1ヶ月でなんとかできるものではありません。
この問題について頭を抱えていたときに、製茶を専業にしている巴達山賀松寨の農家が、鮮葉の収茶を提案してくれました。それぞれの農家で製茶しないで、摘みたての鮮葉を集めてきて、一箇所で製茶するという方法です。
たしかにそれであれば、技術の問題はなくなります。
鮮葉を仕入れる方法については、『巴達古樹青餅2010年プーアル茶』のページに詳しく書いているのでご参照ください。
+【巴達古樹青餅2010年プーアル茶】

結局それが決め手となって、巴達山の古茶樹にしました。
巴達山には曼邁寨と章朗寨の二か所に古茶樹があります。その2か所は道のりで30キロほど離れていますが、その中間に製茶を行う賀松寨があるので、毎日車を飛ばして摘みたての鮮葉を集めにゆき、賀松寨に持ち帰って、その日のうちに製茶します。それを1ケ月間続けます。
鮮葉なら、古茶樹と量産型の茶葉とが一目瞭然に見分けられるので、品質チェックも確実です。
曼邁寨と章朗寨の農家は自ら製茶する必要がないため、茶摘みに時間を割くことができ、収穫量も少しは増えます。
■その2 製茶(つづき)
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