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版納古樹熟餅2010年 その6

ban na gu shu shou bing cha

版納古樹熟餅プーアル茶

■長期熟成
このお茶は長期熟成ができます。
2009年秋の茶葉を2010年5月~7月にかけて発酵させた熟茶です。
熟茶の風味は年数が経つほどに浄化されてゆくような変化があります。このページはそんな熟成変化の様子をリポートします。

熟成プーアル茶

■保存環境

場所
京都東山の木造2階建ての一階の室内
海抜約70メートル
室温
冬期の寒い日で0度
夏期の暑い日で34度
湿度
乾季で40度から75度
75度以上は除湿機で調整
備考:
茶箱熟成
場所
2018年まで
西双版納州景洪市の室内
海抜650メートルのやや高地
室温
冬期の寒い日で16度
夏期の暑い日で34度
湿度
乾季で45度
雨季で70度
備考:
西双版納で紙包みと竹皮包みのまま長期保存しています。 出荷前の少量を上海に転送して、陶器の壺で保存しています。

最新の熟成についてはブログ”茶想”ごご参照ください。
+【茶想 版納古樹熟餅2010年】new


■2014年1月31日(約3年半)
前回の試飲から約1年経ちました。この間に目立った熟成変化はありませんが、熟茶の「熟成」について少しわかってきたことがあるので書き足します。
まず、熟茶は茶葉に残る大量の酵素物質が熟成に大きく関わるということです。渥堆発酵で活動する微生物がつくりだした酵素です。微生物は圧延加工時に枯れ死にますが、残った酵素の作用はまだ活きています。
この酵素は水分の無い乾燥状態ではほとんど機能しませんが、空気中の水分、つまり「湿気」を得るとわずかに機能し、これが茶葉の成分に作用して、「年数を経るごとに清い風味になる」という結果につながっているようです。
この理屈では、前回報告した「生茶に戻るような変化」はありえません。その逆で、もっと熟成度を深めてゆく方向へ向かうはずです。西双版納の倉庫では、竹皮や手すき紙など透水性のある素材で、緩慢な変化を持続させています。この方向には過去に銘茶がひとつあります。渥堆発酵も熟成変化もしっかりしたこのお茶です。
【天字沱茶90年代】
もっと昔の時代の1980年代の渥堆発酵は、現代よりもずっと水分の少ない発酵技術だったと推測しています。それに対して2000年以降は水分の多い発酵技術が主流となり、このお茶もその系統になります。
発酵のタイプが異なると、菌類のグループ構成や、その活動のもたらす結果が異なってくるので、単純に発酵が強い・弱いでは表現しきれないところがあります。
ここに発酵のタイプの異なる2つのお茶の飲み比べを記録しておきます。

版納古樹熟餅2010年

版納古樹熟餅2010年

版納古樹熟餅2010年

版納古樹熟餅2010年

左: 版納古樹熟餅2010年 (このお茶)
右: 7581荷香茶磚97年
比較した『7581荷香茶磚97年』は1997年のお茶ですが、1980年代の製法が再現されています。茶湯の色や葉底(煎じた後の茶葉)を見ると、発酵が浅い(軽い)ように見えますが、風味の違いはそれほど単純ではありません。
『版納古樹熟餅2010年』は、旨味や甘味につながる成分が多くできているようで、分かりやすい味の濃さがあります。
『7581荷香茶磚97年』は、淡く清涼な味わいながら発酵の香りは強く、独自の印象を持っています。
見えない成分の変化はさておき、味や香りに現れるところで、酵素がどのような変化をもたらすのかに注目してゆきたいと思います。

■2012年12月(約2年半)
「あっさり淹れても十分な味わい」と前回のリポートに書いていましたが、それがより際立ってきました。香りに荷香や樟香や梅香をかすかに感じたり、生茶の鮮味を連想させる酸味や苦味の輪郭が現れてきたり、といった変化が背景にあります。

版納古樹熟餅2010年

版納古樹熟餅2010年

過去にこんな味の熟茶があったと振り返ってみると、『7581後期文革磚80年代』がそれに近い気がします。意外にも、孟海茶廠の熟茶ではなく昆明第一茶廠の熟茶で、しかも「半生熟茶」と称されるタイプです。
【7581後期文革磚80年代】
もっとも「半生熟茶」というのは1980年代当時の「昆明第一茶廠」内部での呼び方であり、発酵具合の基準にできるものではありませんが、しっかり発酵したこの『版納古樹熟餅2010年』とは別の方向の変化であることは確かです。
このお茶ができた2010年夏頃の「品茶」のページを振り返ると、強い甘味やお汁粉のような舌触りを報告しています。しかし、現在では甘さはやや控えめになり、さらに酸味や苦味が際立ったせいか、口当たりにサッパリ感があります。
なにかを失うことでなにかが強調される、引き算の熟成変化が起こっているようです。

■2012年4月(約2年め)
熟成2年にはまだ4ヵ月ありますが、ひと足先にリポートします。
熟成の変化はゆっくりですが、昨年よりもじっくり味わえるところがでてきました。あっさり淹れても十分な味わいがあります。
西双版納は渥堆発酵の本場で、様々な熟茶を試す機会があります。これぞ!というのを見つけてきてはサンプルを持ち帰って飲み比べしましたが、このお茶『版納古樹熟餅2010年』よりも美味しいのは見つかっていません。(手前味噌ですみません)
古茶樹をつかった熟茶もいくつかのメーカーで試されるようになりましたが、いずれも旬のタイミングを外した茶葉で、それなりの結果でした。
そしてついに、このお茶と同じ古い蔵での発酵が試みられました。布朗山の古茶樹の2011年4~5月頃の茶葉が使われています。雨の季節で旬を外してはいますが、これは手ごわいと思いました。

版納古樹熟餅2010年

ちなみにそのお茶『布朗山の古茶樹の熟茶』(仮名)は散茶のまま仕上げられ、圧餅されていません。しかも篩分けして等級を3つに分け、いちばん細かなのは「宮廷プーアル熟茶」として販売するそうで、グラム当たりはこのお茶よりも高価になります。入手したのは7級茶葉です。これがいちばん個性あると感じました。

版納古樹熟餅2010年

そのお茶『布朗山の古茶樹の熟茶』をメーカーで飲んだ時は、スパイシーな風味に「これは!」と思いました、しかし持ち帰って飲み比べると、やはりこのお茶『版納古樹熟餅2010年』の美味しさが際立ちます。
『布朗山の古茶樹の熟茶』の香りは、過去の名作「7581雷射磚茶プーアル茶88年」にも通じるスパイシーさがあります。ぱっと分かり易い個性ある風味です。このお茶『版納古樹熟餅2010年』は蒸しパンのような甘くやわらかな香りで、単独で飲むと地味な印象です。
しかし比べると圧倒的に密度が濃くて、存在感があります。
スパイシーな個性は、強くて明瞭ですが、密度がありません。
密度がないと、製茶の技術不足による煙燻味などが見えてしまいます。

版納古樹熟餅2010年

葉底(煎じた後の茶葉)には揉捻の違いが見つけられます。
『布朗山の古茶樹の熟茶』は発酵の浅い緑色の残った茶葉があります。それは意図されたものではありません。揉捻の弱い茶葉は堆積したときの空気の通りが悪いため、好気性の酵母や麹菌の活性が鈍ります。発酵のすすみ具合に差がでます。その風味のちがいは、喉越しの滑らかさに現れます。
また揉捻の強い茶葉は耐泡(煎のつづく)があります。これによって熟茶づくりにも製茶工程の「揉捻」は有効であることがわかりました。
『布朗山の古茶樹の熟茶』は、「アウトレット条件付き」で出品する予定です。数年寝かせると風味が落ち着いて、また違った魅力を持つと思います。

■2011年7月(約1年め)
完成から1年が過ぎました。
熟茶は生茶に比べてゆっくり変化するので、変化の面白さをリポートするにはまだ年数が足りません。
わずかながら、もっともわかりやすいのは、香りに華がでてきたことです。 甘酒や蒸しパンにもあるような、麹の甘い香りがします。少し濃く淹れると、ミルクのような香りです。素朴でさりげないので、取り上げて言うほどのことではないのかもしれません。
味は濁りが消えて透明を増し、ちょうど米の味がにじみ出たお茶漬けのような淡泊さです。少し濃く淹れると、豆乳のようなコクがあります。
熟茶に特別な風味は要らない。

版納古樹熟餅2010年

と、最近思うようになりました。
熟茶は日常のお茶です。ご飯やパンと同じです。しっかり良い素材で、きっちりつくられた、まっすぐなのが良いのです。
このお茶に非日常を感じるところがあるとしたら、飲んでからしばらくして突然やってくるクールミントの刺激です。それは一日の生活リズムの変化をつけるのに十分な覚醒をもたらすでしょう。朝いちばんや、午後のお茶で気分転換を体感してみてください。
さて、ここから先は制作ノートになります。
この熟茶は他の多くの熟茶に比べて、渥堆発酵のすすんだ状態に仕上がっているのですが、その原因が古茶樹の豊富な栄養と、手揉みの揉捻との相乗効果にあることが分かってきました。揉捻でしっかり細く捻じれた茶葉にはピンとした弾力があり、堆積したときに隙間をつくります。空気の通りが良いので、発酵の菌類がより活発に仕事をします。

版納古樹熟餅2010年

もちろんその他にも水の成分、倉庫の環境、職人の勘や技、そのときの気候など、発酵に関わる要素はいくつもありますが、似たような条件でつくられたはずの別の熟茶が、それほど発酵のすすんだようには仕上がっていないので、上の2つの要素を特定したのです。
2010年の年末に、業界最大手メーカーのオーナーの「老大」(ボス)がこのお茶をたまたま飲んで、数件(1件は42枚)ほしいという話になりました。嘘のような本当の話です。
その場には居合わせなかったので人づてになりましたが、後日丁重にお断りし、業界のトップを相手に秘密もないので、どのようにつくったかを伝えました。しかし、そのときはまだ揉捻による茶葉の堆積の隙間について、自分でも気が付いていませんでした。後から言うべきかとも思いましたが、分かり切ったことかもしれないので 、そのまま黙っておくことにしました。


版納古樹熟餅2010年 1枚 380g


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