茶農家とメーカーでのお茶づくりの様子を写真で紹介します。
■茶農家について
1800年代中頃までの世界における茶の産地は中国と日本が独占していました。そのお茶づくりは茶農家の仕事でした。
茶交易によってヨーロッパやロシアやアメリカでのお茶の需要が大きくなり、イギリスは植民地だったインドで工業的手法のプランテーションを成功させ、大量生産の価格競争によって世界を席巻しました。プランテーションはインドネシアやアフリカにも広がり、今や世界のお茶といえば大規模農園と工場のつくるイギリス紅茶です。
一方で、中国のお茶どころではいまだに一軒一軒の農家が茶を栽培し、茶摘みをし、製茶加工をしています。各地に昔ながらの栽培や製法が残り、多種多様なお茶があります。プーアール茶もそのひとつです。
■民族について
ユーラシア大陸の東西からの地殻変動がしわを寄せるように折り重なってできた雲南省山岳地帯には、いくつもの民族が小さな自治を守りながら東南アジアの故郷とも言える文化を育んできました。その南部に古くからあるお茶づくりは、早くから茶文化を発達させてきた漢民族の北の都市との交易により修練されてゆき、現在のプーアール茶の製法となっています。
山岳少数民族のアイニ族(ハニ族)の家は高床式です。一階が製茶場で、二階が生活の場です。
プーアール茶の原料となる毛茶づくりは、アイニ族・ブーラン族・ラフ族・ジーノ族・ヤオ族・漢族が関わっています。製茶方法はどの民族もほぼ同じですが、樹齢が百年を超える古茶樹の栽培にはそれぞれの民族の考え方が繁栄されて微妙に異なり、それが風味の違いを生んでいます。

それぞれの特色については各お茶の紹介ページに詳しく書いています。当店のオリジナルのお茶は古茶樹を使用しています。
一方で、1950年代頃から徐々にできた量産向けの茶畑のお茶栽培には民族ごとの特色はありません。世界の価格競争に対応するために国の専売公社制などによって大規模に開墾された茶畑は、自由化された現在も廉価なお茶づくりに利用されています。

■製茶について
鮮葉―萎調―殺青―揉捻―晒干―篩分(挑黄片)。
茶農家は茶摘みしたその日の「鮮葉」を持ち帰ります。
「萎調」(weidiao)は、農家に持ち帰った茶葉をまず竹籠に広げて室内で乾燥させる工程です。このとき茶葉にもともとある酵素によって香りに微妙な変化が起こります。
「殺青」(shaqing)は茶葉を鉄鍋で炒って成分変化を止める工程です。茎の部分がポキッと折れるようになるまで何度も茶葉をひっくりかえして火入れされます。
「揉捻」(rounian)は茶葉をもんで成分を引き出したり水分を散らしたりする工程です。揉捻を強くするほど茶葉はより強くよじれます。よじれ具合によって風味や耐泡(何煎もつづく)が違ってきます。
「晒干」(shaigan)は、次の日の太陽を待って行われます。揉捻の後にも実は少し萎調の変化がつづいています。太陽の下で乾燥しきってようやく変化が止まって安定します。この微妙な変化が独特の風味をつくります。また紫外線による成分変化が長期保存に適したお茶にします。
晒干はカラッと晴れた日に1日で完了するのがベストです。雨が降ると乾燥に時間がかかりすぎて風味が悪くなります。予期せず雨が降ったときや雨の季節のお茶は、家の軒下に仕舞われたり、乾燥器が使われたりしますが、焚き火の煙の臭いが茶葉に移ることがあります。
「煙味」(yanwei)は茶葉の価値を落すので、雨の日の乾燥には各農家がさまざまな工夫をしています。 とくに近年の高級茶には煙味が嫌われる傾向があります。
篩分(挑黄片)。見掛けの悪い茶葉を取り除きます。
これで「晒青毛茶」の出来上がりです。 一袋約20kgをメーカーや茶商が買い取ります。
■機械製茶について
近年では茶農家でも機械を使った製茶を行うところが出てきています。古茶樹の茶葉は一般的に手作業で製茶されますが、茶畑の茶葉は大量生産のためにすべて機械作業で製茶されます。
■古式の餅茶作り
固形茶づくりは古いお茶づくりの手法です。
プーアール茶を円盤型に圧延する「餅茶」(bingcha)は、1700年頃からと思われます。茶葉を蒸して柔らかくして、型に入れ圧延し、乾燥するという単純なものです。
ここでは比較的高級品となる円盤型の餅茶の圧延加工を紹介します。
数人の職人が作業する小規模な工房は易武山に一部ありますが、その他の多くは機械設備を備えた茶廠(メーカー)で圧延を行います。
高級茶ブームもあって近代的な茶廠でも古式の石模(石型)の道具をそろえているところがありますが、以下の写真は小さな工房のものです。

茶葉を蒸すための蒸し釜は、鉄鍋をひっくりかえして中心に穴をあけたような専用のものが使われます。
毛茶を計量して筒に詰め、蒸気にあてて柔らかくなった茶葉を布で包んで石型で圧延します。石型の上に人が乗ってゆさゆさと揺さぶり茶葉を固めます。
茶葉には蒸した時の水分があるので布ごと涼干(陰干し)し、1時間ほどで布を外してさらに涼干し、粗熱が完全にとれた次の日の朝から晒干(天日干し)します。
太陽光線が強すぎると餅面の茶葉が日焼けするので、適当な時間に裏返したり、日陰に移動させたりして一日干して出来上がりです。
■熟茶づくりの茶廠(メーカー)
熟茶づくりには茶葉を大量に積み上げて水を含ませて発酵させる「渥堆」(wodui)の工程があります。5~20トンもの茶葉を発酵させるための倉庫と、発酵にかかせない良い水ときれいな空気と、温暖な気候が条件となるので、西双版納では孟海鎮に熟茶づくりをする茶廠が集中しています。水田のひろがる盆地で、地下水流が豊富にあります。
海抜1200メートルの孟海鎮は、亜熱帯地方ながら高地の安定した気温と湿度で、発酵に最適な環境です。
熟茶づくりには発酵の設備のほかに、大量の茶葉を保存しておく倉庫や、熱風乾燥のための (火共)干(honggan)室など、比較的規模の大きな設備を要します。
渥堆は70センチほどに積み上げた茶葉に水をかけ、温度と湿度を保つためにシートが被せられます。古い倉庫には壁や床に「蔵持ち酵母」と呼ばれる発酵に最適な変化を遂げてきた優良酵母や優良麹菌が生息していて、水分を含んだ茶葉を発酵させます。麹菌などグループの活動がはじまると茶葉は発熱しはじめ、中心部の温度は50度を越えます。発酵状態が均一になるようにくりかえし混ぜられ、塊になる茶葉を「玉解」(ほぐし)、そのたびに水が足されます。その期間は1~2ヶ月ほどです。
ゆっくり発酵させるほど上品な風味に仕上がります。
発酵の終わった茶葉は室内で熱風乾燥もしくは天日干しされ、専用の機械でふるいにかけられ、圧延加工を待ちます。
原料の晒青毛茶が例えば10トンとすると、発酵が終わって熟茶となった茶葉は7トンほどに減っています。

大量の固形茶を作るメーカーでは、茶葉の圧延加工の工程、乾燥の工程、包装の工程に部門が分かれていてます。
設備や道具には茶廠それぞれに考え方があり工夫があるので、一般的には見学不可能となっています。
茶廠にて出来あがったお茶はすぐに出荷されます。
プーアル茶を長期熟成する技術は、香港や広東が本場です。
+【茶商の倉庫がプーアール茶の味をつくる】
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