プーアル茶のことならプーアール茶.comプーアル茶選びのポイント

【ホームページ】 


茶商の倉庫がプーアール茶の味をつくる

年代モノのプーアール茶は、同じ銘柄でも異なる風味のものがあります。 それは長期保存された熟成環境が異なるからです。
熟成風味を魅力的に仕上げる茶商の倉庫を紹介する前に、ちょっと歴史をさかのぼって、その背景に触れてみます。

プーアール茶 プーアル茶の保存

産地の雲南省では、プーアール茶を長年保存することは少なく、ほとんどが生産後すぐに出荷されます。
紀元前からあったとされる茶馬古道を交易キャラバンが何カ月もかかって遠くへ運んでいたプーアール茶は、運搬の途中にも熟成変化が起こっていたことでしょう。
茶馬古道の起点のひとつ「易武山」には、1950年頃より以前に生茶が自然発酵して熟茶になっていたものがありました。

丁家老寨古樹の黄片2012年プーアル茶
参考ページ
【丁家老寨古樹の黄片2012年プーアル茶】

明代の記録によると、関所で徴税される税率の有利なタイミングを待つために、倉庫に大量保管して何年か出荷を待った商人もいました。そのため政府が貯蔵禁止令を出すといった事態もあったようです。
熟成風味の美味しさは、そうした取引の間に、すでに見つけられていたと考えられます。

17世紀からはじまる西洋との茶交易においては、海路を行く帆船が、南海の港から港へ海を渡り、西洋人の手元に届くのに2年もかかっていた記録があります。貿易風にたよった海路は、東南アジアの海峡の港で風向きが変わるのを半年待つこともありました。

プーアール茶 プーアル茶の保存

海運の拠点となった広東・香港・マカオ・マレーシア・シンガポール・インドネシアなどの港の仕事に従事していた東南アジアの華僑に、長期熟成の風味が好まれるのは偶然ではないでしょう。

さらに、貿易港として栄えた広東や香港には、飲茶の習慣があります。
毎日大量にお茶を飲むその嗜好に、まろやかに熟成した風味のプーアール茶が好まれたのも、偶然ではないと思います。

プーアル茶の香港
茶葉に水を吹きかける

1950年代の香港では、茶楼(飲茶レストラン)ブームがありました。
その当時の飲茶は現代のような点心(料理)よりも、お茶が主役でした。例えば、お茶一杯を注文すると点心が無料で2つ選べるというようなルールだったそうです。茶楼は美味しいお茶を競い、茶商たちがそれに応え、上質なプーアル茶が集まっていました。

その頃、中国では社会主義改革が農業にも及び、雲南の茶業は国の専売公社制となり、統一買い付け統一販売の品になりました。国営の貿易会社から配給という形できまった量を茶商に割り当てて輸出されます。需要のあるなしにかかわらず、茶商はすべて引き取るしかありません。そこで規模の大きな倉庫での保存が必要となりました。

珠江デルタに位置する亜熱帯気候の広州や香港の夏は、気温30度以上湿度90度以上の日も多く、常温の乾燥したところに置くだけでも茶葉に湿気が入り込みます。そうして水分を含んだ茶葉には、3つの変化が起こったと推測できます。

  1. 茶葉の成分変化がゆっくりすすむ。
  2. お茶を美味しくする麹菌類が緩慢に活動する。
  3. 雑菌が繁殖し腐敗する。

プーアール茶 プーアル茶の保存

これら現象の起こる条件については、はっきりと解明されていません。条件が多岐にわたりすぎるため、応用可能なノウハウとして確立されていないのです。したがって、今も人の経験や勘に頼られています。上手に熟成させる茶商もいれば、カビ臭くしてしまう茶商もいます。

倉庫熟成の上手な茶商の醸しだす風味は、プーアール茶全体量からするとごく一部の少量ながら、その官能的な美味しさは中国茶ファンに語り継がれ、お茶の味の世界に美の多様性を与えました。

■熟成壺準備中
長期保存熟成の魅力が家庭でお楽しみいただけます。
プーアール茶の保存 プーアール茶の保存
出品までしばらくお待ちください。

茶商の倉庫のある地域

本格的な茶商の倉庫のある地域は、限られています。


■香港倉
乾倉 : 乾燥した状態(風通しがある倉庫)
湿倉 : 加湿した状態(風通しの悪い倉庫)
常温乾倉 : 常温常湿で乾燥した状態、もしくは除湿している室内。
香港人の倉庫が過去のプーアル茶の加工技術においてもっとも高い評価を得ています。香港倉の1970年代よりもっと前の「老茶倉」と呼ばれる倉では、茶に「老味」があり、独特の香りがします。

■広州倉
乾倉 : 乾燥した状態(風通しがある倉庫)
湿倉 : 加湿した状態(風通しの悪い倉庫)
重湿倉 : 水分を加えた状態(茶葉に直接水を撒くなど)
常温乾倉 : 常温常湿で乾燥した状態、もしくは除湿している室内。
広州人は清の時代の貿易指定港でしたが、保存熟成の技術は香港人から学びました。2000年頃からの雲南の茶業の自由化により大陸での販売量が増えたため、熟成された老茶の流通量もすでに香港を越えています。中国最大の茶葉市場にはもともと穀物倉庫だったところをお茶の倉庫にするなどして、大規模な倉茶づくりが行われています。
広州倉はほんのり甘味の香る「土味」が特徴です。

■深セン倉
乾倉 : 乾燥した状態(風通しがある倉庫)
湿倉 : 加湿した状態(風通しの悪い倉庫)
重湿倉 : 水分を加えた状態(茶葉に直接水を撒く)
常温乾倉 : 常温常湿で乾燥した状態、もしくは除湿している室内。
深セン倉は1997年頃からの新倉で、香港に近いことと土地の安さから、香港から移転した倉庫も多くあります。新茶を深センの倉に2~3年置いてから、香港倉に移すというのもあるそうです。

■台湾倉(未入倉・退倉)
常温乾倉 : 常温常湿で乾燥した状態、もしくは除湿している室内。
台湾には1990年代中頃からのプーアル茶ブームによって、倉庫が最もたくさんあると言われていますが、加工用(風味を大きく変化させる)の倉庫ではなく、常温の乾燥した倉庫です。また規模も小さなものです。
台湾の商人のあつかう老茶のプーアル茶は、そのほとんどを香港の商人から仕入れてたものです。いったん香港の加工用の倉から出ているため「退倉」モノと呼びます。
1980年代以前のプーアル茶は、そのほとんどが香港の加工用の倉庫に置かれたことがあります。香港倉から出たすぐには倉庫臭と呼ばれるカビ臭みのあるものがあり、「退倉」をして乾燥状態で1年以上置くと倉庫臭が消えて、さらに数年間寝かされて美味しく仕上がるものがあります。



常温乾倉のプーアル茶倉庫


倉庫のタイプによる環境の違い

■常温乾倉(未入倉・退倉)
常温で湿度も自然のままで、菌類による発酵はごく少ないか、もしくは成分変化だけの倉庫です。台湾がもっとも多く。香港、広州にもあります。人がそこで生活できるレベルの温度や湿度の環境です。
厳密に言うと倉庫ではなく、例えば専門店などで棚に置いてあるプーアル茶や、マンションなどの空いた部屋を倉庫にしているケースも該当します。
この場合その土地の気温や湿度が熟成を大きく左右します。また人の居る室内でエアコンが入る場合は乾燥状態が保てるので、変化はより少ないと言えるでしょう。

プーアル茶の問屋 プーアール茶専門店
左: 広州の卸問屋
右: 香港の小売店

新しいプーアル茶を一度も加工用(風味を大きく変化させる)の倉庫に入れない場合を「未入倉」と呼びます。上の二つはどちらも未入倉です。
一度加工用(風味を大きく変化させる)倉庫で熟成させたものを、このような常温の乾燥状態のところに移すのを「退倉」と呼びます。
乾燥した状態では菌類の活動はなく、ゆっくりと成分が変化して熟成してゆきます。小売店の棚から一般家庭の部屋に移ってからも、ゆっくりと変化は続いています。

1990年代中頃から「未入倉」のお茶が増えています。プーアール茶の商売が自由化され、新しいメーカーが多くでき、それまでにはプーアル茶を飲まない地域の人たちが飲むようになったため、生茶でも熟成させないでそのまま販売するケースが増えました。

常温乾倉(未入倉・退倉)に対して、以下に紹介する茶商の倉庫はどれも積極的に味を変化させるための環境を作り出しているため、ここでは加工のための倉庫と呼びます。

■乾倉
常温より少し高いめの温度と湿度。
乾倉においては夏が大切な季節で、温度は35℃以上になります。湿度は年間を通して60-70℃くらいに保たれますが、雨の日などはさらに高くなります。
冬には気温20℃くらいまで下がり、湿度も50%以下となる日が多く、大きな変化はありません。

■湿倉
倉庫は温度・湿度ともに高めに保たれます。
温度は乾倉の温度より4-5度高く、湿度は80%。倉庫の中は茶の香りがムッとして息苦しいほどです。ほどほどに風通しがあり茶葉の中にまでカビの生えるようなことはありませんが、風通しのわるい場所のプーアル茶には白露(茶葉の成分が浮き出て白くなる)があります。一番底に置かれるものはすべてカビの一種で白くなります。(それが良性のカビの場合は美味しくなり、悪性のカビの場合は飲めなくなります)
この湿倉はとくに加湿をしていないところが多いと聞きますが、外気が湿度60%のときに倉庫内を湿度80%に保つために、茶商によってそれぞれ独自の工夫があるものと思われます。

■重湿倉
広州の肇慶には「防空壕」(戦争のときに作られた)を利用した倉が多いそうです。高温多湿のうえ、さらに水をかけます。温度は湿倉とほぼ同じです。水を直接茶葉にかけるくらいですから、白露(茶葉の成分が浮き出て白くなる)や、カビの生えるものがたくさんがあります。
さらに底のほうに置かれる茶葉は通気性が悪く、黄色く焦げたようになります。「焼ける」といわれる現象がおきます。茶葉はアンモニア臭を持ち、人の体に悪い成分もあります。
評判の悪い「湿倉」のお茶というのはこの「重湿倉」のことです。
水をかけて発酵を促すことにおいてはメーカーで熟茶を作る際の「渥堆」(ウォードゥイ)発酵と同じなのですが、「渥堆」(ウォードゥイ)は衛生管理のできている雲南省のメーカーの設備の中で行われますが、それに比べると重湿倉の管理は大雑把で、茶葉の水分が多すぎて味を悪くするケースが多いようです。

加工のための倉庫の設備にかかせないのが扇風機です。
湿度が高くなると水はより冷たいところに溜まろうとします。倉庫の中に温度の差ができると、あるところに置いた茶葉は美味しくなり、あるところにおいた茶葉は不味くなり、腐敗のカビが生えたり、ということが起こります。
そのため扇風機を回して倉庫内の空気を攪拌します。

茶葉に水を吹きかける 茶葉に水を吹きかける

香港で見つけた問屋さんの出荷作業。
竹の皮の筒にスプレーで水をかけてから、ビニールでくるんでダンボールに詰めています。 密封することで水分を逃がさないため、茶葉の湿った状態が保たれます。
茶葉が一時的に湿っても、通常であれば水分が蒸発して乾燥します。
ビニールでくるんで水分が逃がさないのは、意図して変化を促すものと思われます。

プーアール茶 プーアル茶の保存

※ ここでの倉庫の情報は一般的なものであり、茶商は個人個人によって考え方が異なるため、これが正しいという情報ではありません。

■保存熟成のプーアール茶は減っています。
2000年頃を境にはじまった雲南の茶業の自由化と、中国国内でのプーアール茶ブームによる急速な需要の拡大により、プーアール茶は従来の流通のメインであった広州や香港の倉庫に入らないで、雲南のメーカーから直接各地へ流通するようになりました。
そして、保存熟成されないプーアール茶が現在は主流となりました。
倉庫熟成のしっかりした少し古いプーアール茶は、経験のある限られた店だけで扱われています。
ところが、中国各地の店で10年モノ20年モノが販売されているという矛盾があります。

プーアール茶 プーアル茶の保存


■お客さまのご質問と回答 

ご質問:
「倉庫のにおい(味)」って、どんなにおい(味)?私も何となくわかるのですが、「これが」と具体的に表現(説明)できないのです。
回答:
今パッと思いついたので言うと、「真夏の突然夕立が降ったときの地面から発する臭い」でしょうか・・・。
解説:
香港あたりの茶商が味を変える目的でプーアル茶を長期保存する倉庫は、常温で加湿されていなくとも、発酵臭があります。倉庫から出したすぐのお茶にも独特の発酵臭が残っています。常温で乾燥した状態の環境に移動させて(退倉と呼ぶ)、保存させるとその臭いは消えてゆきます。

ご質問などお気軽にメール下さい。
+【店長にメール】


関連ページ

個人が室内で茶葉を保存することについて
+【プーアール茶の保存】

店長のブログにて、7542七子餅茶の熟成違いについて
+「7542七子餅茶の熟成の比較」


【ホームページ】 

プーアル茶のことならプーアール茶.com

請別轉用盗用本网站的文章和照片
当サイトの文章や写真を転用しないでください
Copyright puer-cha.com All rights reserved.