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プーアール茶の里と自然環境

■西双版納(シーサンバンナ)
中国の雲南省の南、ミャンマー・ラオスに広がる山岳地帯の中心に西双版納があります。ここは世界のお茶の原産地であり、プーアール茶の里でもあります。
太古の時代にユーラシア大陸の地殻変動によって左右から押し寄せた地盤が深い山と谷をつくり、亜熱帯気候が豊かな緑を育んで、植物の種類の多さは世界屈指です。
海抜1200mから2000mの森にお茶の樹が実生しています。
山岳民族がこれを薬草のように利用したところから、人とお茶の関係がはじまったと言われています。

西双版納 西双版納

雲南省の省都、昆明から南西に約500キロメートル。
飛行機ではたった50分で西双版納に着きますが、その間にある3000m級の哀牢山脈と無量山脈が、北のシベリアから降りてくる寒気を止めます。このため昆明では雪の降ることがあっても、西双版納に雪の降ったことは一度もありません。

無量山の山脈 無量山の山脈

雲の上に頭をだしている山脈が気流を堰き止めている様子が飛行機の窓から見られます。

チベット高原から流れる水を瀾滄江(メコン川)が集めて、西双版納を縦に流れています。景洪港から出る船で川を下れば、ラオスとミャンマーを経由してタイのチェンセーンへ抜けます。
「ゴールデン・トライアングル」と呼ばれるこのあたりの山深い国境地帯は、一昔前まで世界有数の麻薬の産地でした。現在でも麻薬密売の事件が後を絶ちません。

西双版納 瀾滄江

西双版納の気候はおだやかで、「常春」と呼ばれています。
夏は涼しく冬は温かく、山はいつも緑です。風はおだやかで心地よく、すべてがゆったりとしています。

山間の平地には古い水田が今も残っています。このあたりは東南アジアの稲作の発祥地でもあり、例えば日本人にもなじみのある納豆やなれ鮓など、稲作の育んだ食文化が今も残っています。
ちなみに漢字の「西双版納」はダイ族の言葉の「シップソンバンナー」の当て字で、12の水田地帯という意味があります。
ダイ族はこの土地でもっとも人口の多い民族で、ここから南下してタイの東北部でランナータイ王国をつくった泰族の祖先でもあります。
西双版納にはダイ族をはじめとして13の少数民族が暮らしており、約100万人のうちの70万人が農業に従事してる農業王国です。

西双版納 西双版納
西双版納 西双版納
西双版納 西双版納
西双版納 西双版納
西双版納 西双版納
西双版納 西双版納
西双版納 西双版納
西双版納 西双版納
西双版納 西双版納
西双版納 西双版納
西双版納 西双版納
西双版納 西双版納

近年は観光拠点としても注目され、団体の観光客が押し寄せ、観光施設や道路の建設が急ピッチにすすめられています。そして中国の地方のどこにでもあるハリボテ街づくりと、偽物の文化の演出がされていますが、街を離れて山へ登れば、この土地の本当の姿を見ることができます。

農業は家族単位の小規模経営がほとんどで、山に暮らし、自家菜園と家畜を養う半自給自足の生活をしています。
澄んだ空気、美しい山、心地よいそよ風。
子供も大人も老人も、動物も虫も植物も、バランスよく共に生きる生態系には隔世の感があり、まさに「桃源郷」と呼ぶにふさわしい場所です。

高等植物は世界で最も種類が多く約5000種。西双版納固有の植物は約152種、絶滅危機類は約135種、生きた化石と呼ばれるの植物は約30種、農作物となる植物は565種あります。
動物は539種、鳥類は427種。アジア象、虎、豹、ニシキヘビ、キングコブラ、テナガザル、孔雀、白腹黒キツツキ、ゼンザンコウ、など重要保護動物は45種生息しています。

西双版納 西双版納
西双版納 西双版納
西双版納 西双版納
西双版納 西双版納

山が深く高低差があるため、一箇所に四季があるとも言われます。

北熱帯気候
海拔800メートル以下の盆地地帯
南亜熱帯気候
海抜800-1500メートルの丘陵地帯
中亜熱帯気候
海抜1500-2000メートルの山岳地帯
北亜熱帯気候
海抜2000メートル以上の高山地帯

低いところと高いところでは気温差が15度にもなり、車で移動するだけで何枚も重ね着したりまた脱いだりと忙しくなります。
この気候差を利用して、1000メートル以下の比較的低地にはトロピカルフルーツやサトウキビや高原野菜、1000メートル付近では工業用の原料となるゴムの木やタバコの葉や観賞用の花、1500メートル付近では茶が栽培されるという具合に、多種多様な農産物が生産されています。

ゴムの木 ゴムの木
ゴムの木 ゴムの木

近年もっとも栽培の盛んなのは天然ゴムです。中国やアジアの経済発展により車がよく売れて、タイヤをつくるために需要があり、オーストラリアなどの資本参加による大規模農業も始まっています。
また、漢方素材を使った清涼飲料水が中国国内でヒットしていますが、その原材料となる薬草の大規模栽培もはじまっています。

このように産業は農業がメインのため、工業汚染とは無縁です。
しかし、発電所のためのメコン川のダム開発や、大規模なゴム園の乱開発が増え、自然環境は破壊されつつあります。
また、西双版納の農村にも近代的な消費生活の波が押し寄せ、経済格差やゴミ処理の問題が新しく出てきています。

■古茶樹について
西双版納には樹齢数百年にもなる古茶樹の栽培が続いています。
その農法は古くから変わっておらず、今もなお無農薬・無肥料の自然栽培が基本です。畝づくりの茶畑の若い茶樹とは対照的に、山の斜面に一本一本が独立して実生しています。
品種改良をしない在来種ですが、種子から栽培されるために雑種化しており、葉の形や色などがひとつの農地に混生しています。
土の面積の割に収穫量が少ないため、葉の栄養が集中し、根を深く広く張った地層から吸い上げられるミネラル成分の多い滋味ある風味が特徴です。

追記:2012年09月09日
世界農業遺産(GIAHS)に雲南のお茶どころが認定されました。
【世界農業遺産(GIAHS)】外部サイト

茶農家 茶農家
茶農家 茶農家
古茶樹園 古茶樹園
古茶樹 古茶樹

山の茶農家は半自給自足生活のために、田畑を耕し、家畜を養っています。
お茶づくりのための薪を山から採集したり、茶の花の受粉をたすける蜜蜂を飼って蜜をとったり、菜園のための堆肥をつくったり、水源確保のために手付かずの森林を残したり。自然と共存する人々の暮らしは、山の生態バランスを保つ大切な役割を担っています。
古茶樹の森もまたそのエネルギー循環の歯車の一部にあり、全体のバランスをとっています。

古茶樹 古茶樹
プーアール茶喬木 プーアール茶喬木
古茶樹 古茶樹

広葉樹 プーアール茶の古樹

農地にたくさんいる虫や茶樹に生える寄生植物もまた生態環境の一部であるため、これらを駆除するという考えはありません。昔ながらのやり方でバランスを保ち、この土地のお茶の風味が守られています。

プーアール茶の茶葉
プーアール茶の茶葉

品種改良されていない古茶樹は、野生種からの特徴を引き継いだいくつかのタイプがあります。大まかに分けると葉がやや小さいタイプのと、葉が大きいタイプ。その他にも葉の色が薄黄色、朱色、紫色、濃い緑とあり、さらに風味にもバリエーションがあり、極端なものは甘いだけや苦いだけといったお茶もあります。
共通した特徴は、葉が肉厚で形がそろわず、茎の部分が丸く太く育っていることです。

古茶樹の葉の特徴 古茶樹の葉の特徴

これらを総称して「雲南大葉種」と名付けられています。椿属の学名「カメリアシネンシス」で、世界中で栽培されている緑茶や紅茶の茶葉と同じ山茶属です。
+【易武山 品種のオアシス 写真】
古茶樹は民族によって栽培方法が少しずつ異なります。
農薬や肥料を必要としないのは共通していますが、人と自然の関わり方が異なり、それが茶樹の大きさや形にも現れています。このことでお茶の風味にも違いがあります。

古茶樹の特徴 古茶樹の特徴
古茶樹の特徴 古茶樹の特徴

ヤオ族や彝族(イ族)や漢族は、明代からの喫茶文化の影響を受けて、剪定などの手入れをし、自然に積極的に働きかけた栽培により、華やかな風味をお茶に求めます。

山岳少数民族の愛尼族(アイニ族)や布朗族(ブーラン族)うあジーノ族は、自らの農地を持った定着型の農業をしています。茶樹の手入れはそこそこにして、大きく育つのを許しています。茶馬古道交易で知られる西南シルクロードの遊牧民やチベットの僧侶にお茶を供給していたせいか、その嗜好に合わせた苦味の強いお茶を栽培しています。

かつては移動の民であったヤオ族や布朗族(ブーラン族)やラフ族は、土地を所有するという概念を持たないため、現在でも季節になると森へ入ってお茶を採集してくる人々がいます。自然林の中で茶樹の手入れはほとんどしないので、野生茶を採集するのに近い感覚です。

無農薬・無肥料と言っても上のように様々で、それぞれに特徴ある風味のお茶が栽培されています。

■野生の茶樹

野生茶樹 野生茶樹

西双版納の茶山には農地以外の裏山にいくらでも茶樹が自生しています。雑木の半日陰を好み、枝をまっすぐ上へ伸ばしています。
(※この茶樹が古来からあったものなのか、それとも人が種を持ち込んで育てた過去があったものなのかは、現在のところ証明されていません。)
場所によっては山深いところにあるので、山小屋に鉄鍋を持ちこんでその場で製茶加工して毛茶をつくります。

野生茶樹の発芽は年に一度、気温が上がって雨の季節が近づく4月中旬になります。そのため栽培型の古茶樹にくらべると、春いちばんの特別な風味を持つことはありません。
また、野生の茶は他の動植物との生存競争に負けないための強い免疫力を持ちます。虫や植物の嫌がる成分を多く持つようになるので、辛味やエグ味が強いものも少なくありません。

製品には「野生茶」と称するものが多く販売されていますが、実際のところはそのほとんどが過去に人が栽培していた茶樹が長い間山に放置され半野生化した茶樹のものであり、純然たる野生茶というものの存在は証明されていません。

■農地のリサイクル
茶山には過去に農地だったところが、何らかの理由で自然林に戻っているケースがあります。そこには野生化した茶樹が今も生き延びています。周りの雑木の日陰に甘んじて、ひょろひょろと育っていますが、幹の太い樹齢の古いものもあります。

近年のプーアール茶ブームによって古茶樹の需要が増えたので、こうした自然林を農地に戻す動きがあります。周囲の雑木を間引いて、伸び放題になっている茶樹の枝を剪定したり切り戻したりして採光が確保されると、翌年から春いちばんの茶葉が収穫できるようになります。

野生茶樹園の開発 野生茶樹園の開発
野生茶樹園の開発 野生茶樹園の開発
野生茶樹園の開発 野生茶樹園の開発

この数年は自然林を農地に戻す動きが広がりましたが、景気低迷などによってふたたび需要がなくなると、人が農地や茶樹の手入れをしなくなり、また長い年月を掛けて自然林に戻ります。
何百年も生きる茶樹にとって、こうしたサイクルはかえって新陳代謝をうながし、より長寿になるのを助けているのかもしれません。

■新茶園について
歴史的にみると、世界市場で隆盛を誇っていた中国のお茶づくりが衰退したのは、イギリスがインドでのプランテーションに成功し、安く大量に世界中に紅茶を販売するようになってからです。それ以降、家族単位の小規模農業のつづく中国のお茶づくりは、世界での価格競争に苦戦しています。

ここにきて小規模農業ならではの自然栽培やバラエティーに富む風味が見直されていますが、それでもインドネシアやアフリカなどの新興産地のプランテーションとエステート式の大規模製造にはコスト面で大きな差がついています。

中華人民共和国成立の1949年頃からこの問題に着手するべく、辺境地の西双版納でも茶園の大規模開発が試みられました。
インド式に畝づくりの茶畑に若い茶樹を密集して植えるお茶づくりがはじまったのはこの頃からです。このタイプの茶園を「新茶園」または「台地茶」と呼んでいます。あまりにも世界中に普及しているので、このほうが一般的な茶園のイメージとして定着しています。

1970年代から熟茶プーアール茶の販売が拡大し、新茶園の需要は高まります。2000年以降は、中国大陸でのプーアール茶ブームによって、新茶園のお茶の生産量はますます増え、より収穫効率の良い栽培方法や、新種の開発、肥料をつかった量産技術が研究されています。

新しい茶園 新しい茶園

新しい茶園 新しい茶園

日当たりの良い新茶園の茶樹はたくさん葉をつけ、収穫効率は良いのですが、土から吸収する成分を多くの葉で分散させるので、それなりの軽い風味、それなりの栄養価値になります。

■新茶園のかかえる10年問題
経済発展の著しい中国では国内需要が活発になり、お茶もまたよく売れています。2006年にはプーアール茶ブームがバブルと言われるまで過熱しました。たくさんつくればつくるほど売れる状況となって、多くの新茶園が開墾されました。自然林や休耕地を焼き畑して、若い茶樹が畝づくりに密植えられます。

下の写真は、有名茶山「班章」に向かう途中の山が開墾され、新しい茶園がつくられているところです。班章とおなじ山続きの土地なので、収穫できた茶葉もまた班章ブランドで売り出されます。
新茶園は収穫効率を追求するがゆえに、周りの雑木も残さず切られ、生態バランスが良いとは言えません。


他の動植物が生活しにくく、害虫の大量発生をまねいたり、土が枯れたり、茶樹が病気になりやすくなったりして、やがて農薬や化学肥料の助けを必要とするでしょう。茶葉を肥えさせるための化学肥料の使用は、新茶園ではすでに始まっています。

いくらでも山のある雲南省では、つぎからつぎへと焼畑によって自然林や休耕地を焼いて農地をつくればよいのですが、規模が大きくなると山全体の生態バランスを崩します。

その点、森の古茶樹は山の自然と共存しながら1000年以上も続いている農法です。収穫効率が悪いので原料価格がどうしても高くなり、製品価格にも反映されますが、飲む人の理解も必要です。
旬の古茶樹は風味もさることながら、山の栄養や滋養が漢方薬のようにあり、健康的に利用すると、価格にみあった選択になると当店は考えています。

■西双版納の江北と江南
西双版納の中心を縦にメコン川が流れています。
そしてそれを境にして、川の東西に有名茶山があります。
東側の孟臘県(モンラー)は江北と呼ばれる地域で、旧六大茶山があります。西側の孟海県(モンハイ)は江南と呼ばれる地域で、新六大茶山があります。
それぞれに独自の歴史をもち、お茶の風味もまた異なります。次のページでは江北と江南のそれぞれの茶山を紹介してゆきます。

メコン川

■瀾滄江(LanCangJiang)
瀾滄江はメコン川のことです。揚子江、黄河に次ぐアジア第3の大河です。全長は4500キロメートル。チベット高原に源流にして中国雲南省、ミャンマー、ラオス、タイの国境線を通り、カンボジア、ベトナムに抜け、南シナ海に注いでいます。

江北と江南の茶山について次のページに紹介します。
+【西双版納の江北の茶山について】
+【西双版納の江南の茶山について】


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