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易武古樹青餅2010年 その5

yi wu gu shu qing bing cha

易武古樹青餅プーアル茶

■長期熟成
このお茶は長期熟成ができます。
2010年春の茶葉でつくったお茶ですが、それから後にゆっくりと変化して、風味の印象を変えてゆきます。
定期的に試飲のリポートをします。

熟成プーアル茶

■保存環境

場所
西双版納州景洪市の室内
海抜650メートルのやや高地
室温
冬期の寒い日で16度
夏期の暑い日で34度
湿度
乾季で45度
雨季で70度
備考:
西双版納で紙包みと竹皮包みのまま長期保存しています。 出荷前の少量を上海に転送して、陶器の壺で保存しています。

■2014年2月(約4年)new
この1年でさらに熟成がすすみ、易武山の高級茶らしい風格が出てきました。
試作品と本作品との違いについて新しく分かったことがあるので、そのことを中心にリポートします。

易武古樹青餅2010年
左: 試作品
右: 本作品

試作品と本作品は農家での殺青(鉄鍋で炒る)における火入れ加減の違いと見てきましたが、これは間違いでした。火入れの差も多少はあるのですが、それよりも品種の違いが1枚ごとの差異となって大きく現れていることが分かってきました。何枚も崩して調査したところ、これまで試作品の特徴と見ていたものが、いくつかの本作品にもあることがわかりました。
西双版納の歴史の古い茶山である易武山の古茶樹は混生の品種です。
写真のページをご参照ください。
【易武山 品種のオアシス 写真】
一日に茶摘みをする数本の古茶樹が、同じ母樹から育った同じ系統の品種だった場合茶葉の性質は兄弟のように似ていますが、まったく別の品種の母樹から育ったものは異なる性質を持ちます。晒青毛茶が仕上がった段階でしっかり混ぜ合わせると均質化しますが、高級となるクラスの茶葉は崩れるのを嫌って一般的には軽く混ぜるのみです。その結果が一枚ごとの差異となります。 近年はこれを意識して、同種の数本の茶樹や、一本の茶樹から採集して品種を揃えたお茶が出品されています。
【易武山落水洞の散茶2013年プーアル茶】

易武古樹青餅2010年
左: 試作品
右: 本作品

写真に見るように、茶葉の形状が試作品の品種はやや細長く、本作品はやや平べったくなります。
また、熟成による色の変化は試作品のがやや黒々となりやすく、本作品のは明るい色を保ちやすくなります。
(※別の本作品には試作品のような茶葉の形状や色をしたものがあります。)
品種のバラエティーがあるとはいえ、お茶の味の違いとなって現れるのは、大まかには試作品と本作品で紹介している2つのパターンに納まります。

易武古樹青餅2010年

易武古樹青餅2010年
左: 試作品
右: 本作品

熟成約4年目で双方に甘味が加わった感じがしますが、この甘味に違いがあります。試作品のは香りによる甘味。本作品のは味による甘味。
香りの成分は苦味をともなうのが多いのですが、たしかに香りの強い試作品のほうが苦味が強く感じます。本作品はその点でおっとりとしています。舌に残って唾液が沸くような蜜の甘さは本作品のほうにあります。
どちらの風味も過去の易武山の銘茶にある特徴ですが、銘茶にも2つのタイプがあります。試作品のほうの品種はより早春に新芽・若葉を出すせいか、それにこだわってつくられたお茶に似た印象です。
【七子紅帯青餅プーアル茶】
【92紅帯青餅プーアル茶】
本作品のほうは少し育った茶葉のお茶に似た印象です。
【7582大葉青餅70年代プーアル茶】
【同興號後期圓茶70年代プーアル茶】
もちろんここまで極端な差異はありませんが、茶葉の性質それぞれに美味しさの鑑賞のしどころが異なると思うので、お手元のお茶がどちらの性質かを見極めて、品種による個性の違いを楽しんでいただければ幸いです。

■2013年3月(約3年)
越陳越香。そのものです。
年数を重ねるほどにしっとり艶やかになるお茶。
易武山のプーアール茶の特徴が現れてきました。
昨年(2012年3月の下のリポート)から1年で、ほんのり色気が出てきた気がします。口あたりまろやかで、甘味が増し、渋味や苦味はすこし間をおいてから舌に残る。奥行きのある味わいです。

易武古樹青餅2010年

易武古樹青餅2010年
左: 試作品2010年
右: 本作品2010年

さて、試作品と本作品の違いについてわかったことがあります。
2つの違いは火入れの違いですが、その結果、製茶工程における軽発酵度に差があることがわかってきました。試作品は、より発酵のすすんだ甘い香りをまとって、風味にアクセントがつき、本作品よりも変化や奥行きを感じさせていたのです。写真にも見える餅面の色の差は、その発酵度の違いです。
本作品は火入れがしっかりしているので、軽発酵度が浅く、緑の鮮味にしっかり輪郭を持ちます。その輪郭が強いため単調に感じたのですが、ここにきて違ってきました。経年変化によって得た香りの変化やまろやかさにより、輪郭のあることがかえって奥行きを表現する結果となっています。
個人の好みとなりますが、ぼんやりした風味が好きなら試作品。キリッとした風味なら本作品。といったところでしょうか。まだ全体的には試作品のほうが甘味(甘い香りによる錯覚)が強いので、初めて易武山のお茶を飲む方には入りやすいかもしれません。
また1年後をめどに熟成リポートをします。
来年あたりは、試作品と本作品のなにかが逆転しているような予感がします。

■2012年9月(約2年半)
易武山大漆樹の茶葉でつくられた2004年の餅茶を入手しました。
これとの比較をリポートします。

易武古樹青餅2010年

易武古樹青餅2010年
左: 2004年易武大漆樹青餅
右: 2010年易武大漆樹青餅(このお茶)

2004年のお茶は易武山の個人が所有していたものです。当店の保存環境と比べると湿度が高く、色の違いにそれがはっきりと現れています。そして圧倒的な甘味を感じます。蜂蜜の香りがして、口に含んでも甘く、お茶の味とは思えないくらいです。
2010年のこのお茶は、それに反して苦い印象のほうが強いのですが、ところが、この2つを同時に飲み比べると、 よく似た味であることがわかります。
これには味の錯覚が関係しています。香りや、わずかな痺れ成分や、なんらかの味が欠落しているかのような空間など、甘味成分とは別のところが作用して甘く感じさせているのです。
易武山のお茶は風味のバランスが大きく揺れて、様々な表情を見せるのが魅力のひとつです。熟成によっていかようにも変化する可能性を秘めています。

■2012年3月(約2年)
2010年4月から2年になろうとしています。
易武山のお茶には長期熟成の歴史があります。50年を超えるものもありますが、今もなおその美味しさは健在です。それらの多くはお茶の貿易に関わっていた香港の茶商の倉庫で寝かされていました。

このお茶『易武古樹青餅2010年』を保存している西双版納は、亜熱帯気候ながら山岳地帯のため、香港に比べると涼しく乾燥しています。そのため変化はゆっくりで、香港の倉庫のように醸し出される妖しい魅力はありません。
それでもしばらくはこの環境での熟成をつづけてみるつもりです。

易武古樹青餅2010年
左: 試作品2010年
右: 本作品2010年

このお茶は「本作品」と「試作品」をつくって、製茶技術の差をみるようにしていました。それが熟成によってどう変わるのかを比べてみます。

餅面は「試作品」のほうがより熟成した赤味のある色をしています。
茶湯の色は、「試作品」のほうがはじめに良く出ますが、4~5煎めになると逆転して、「本作品」のほうが色の濃さを保ちます。

易武古樹青餅2010年
左: 試作品2010年
右: 本作品2010年

「本作品」と「試作品」の風味の違いは2011年(このページの下)に紹介した通りなのですが、2012年3月現在では試作品の方が魅力的に感じました。香を焚いたような香りのアクセントがあり、それが奥行きや変化をつくっています。本作品はそれが全体的に単調です。
逆に、本作品は喉越しがまろやかですが、試作品はごくわずかに喉にイガッとくるものがあります。

殺青の火入れの差だと考えていますが、もしかすると農地の斜面の位置の違いなど、微妙な差があるのかもしれません。この検証には時間をかけてみます。

なお、試作品は「アウトレット」のほうで少しずつ販売してゆきます。本作品『易武青餅2010年』1枚の購入実績のある方を条件としています。
「アウトレット条件付き」

■2011年5月(約1年)
2010年4月から1年が過ぎました。
餅面(餅茶の表面の茶葉)は黄銅色を帯びています。
早春の茶摘みなので黄金色をした新芽が小さすぎて少なく見えますが、雲南大葉種ではこのほうが上等です。

香りにも味にも、甘味が増しています。
出来たての生茶は「のど越し」と1年前に書いていましたが、粗っぽさの消えた1年後の今は、もっと多彩な味わいが楽しめるようになりました。

易武古樹青餅2010年

このお茶は「本作品」と「試作品」をつくっていました。その違いに注目してみます。
つくりたてのときは茶湯の色は同じでしたが、1年経った現在では色に違いが出ています。
「試作品」のほうがやや熟成のすすんだ色です。味にもその傾向があり、甘味がより強く出ています。
しかし、まろやかな印象や喉越しの滑らかさは「本作品」が上です。

これは「殺青」の火入れ加減によります。簡単に言うと「試作品」は火の通りにムラがあります。良く見ると一部に生焼けや焦げがあります。「本作品」はそれに比べて均一にやわらかな火が通っています。

易武古樹青餅2010年
左: 試作品
右: 本作品

「試作品」には「火胡」(一文字)hu味と呼ばれる焦げ味が少しあります。「火胡」味は、現時点ではアクセントとなっています。一方で「本作品」のまろやかさや滑らかさは、口に含んだ瞬間はかえって軽い印象を与えますが、密度の濃い液体の質感は後味の余韻につながり、十分な存在感が感じられます。
葉底(煎じた後の茶葉)は今のところ見るべき差がないので省略します。違いが大きくなる数年後に改めてリポートします。

易武古樹青餅2010年
左: 2011年春の毛茶
右: 2010年『易武古樹青餅2010年』このお茶

同じ易武山大漆樹の、2011年春の毛茶と比べてみました。
2011年は4月以降に雨が多く、全体的に味が薄くなっていますが、ここで比べた毛茶はまだ雨の少ない3月の茶葉なので風味は濃く、青臭いほど鮮烈で、存在感があります。

茶湯の色には、2010年のほうに熟成による赤味が加わっています。味にも丸みが出てきて、口に入れた瞬間よりも後からじわじわ広がる印象があります。
易武山のお茶は変化がまっすぐではなく、紆余曲折します。
次回のリポートではまた違った風味が報告できるでしょう。


易武古樹青餅2010年 1枚 380g


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