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92紅帯青餅プーアル茶

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92紅帯青餅プーアル茶
92紅帯青餅プーアル茶

92紅帯青餅プーアル茶 約340~360g

製造 : 1992年
茶廠 : 孟海茶廠
茶山 : 西双版納 旧六大茶山
茶樹 : 大葉種 喬木
茶葉 : 3級
工程 : 生茶
重量 : 340-360g
倉庫 : 香港乾倉→台湾乾倉

甘味
●●○○○ ふくよかな甘味
渋味
●●●●○
とろみ
●○○○○
酸味
●●●○○ すっきり爽快
苦味
●●●○○ 軽快な苦味
香り
●●●●● 香草(バニラ)、檸檬香、蘭香
熟成度
●●○○○

西双版納の旧六大茶山、高山地帯、早春、若葉の3級のみ。その特別な芳香があります。しっかりした旨味、渋味、苦味、酸味、甘味のすべてのバランスが絶妙です。かすかにレモンのような香りと軽快な苦味に気品が感じられる伝統的な高級青餅です。

■このプーアル茶の由来
紅帯青餅とは、茶葉に赤い紐のことで、茶葉にそれが埋められています。1992年につくられたので、「92紅帯青餅」と呼びます。

92紅帯青餅プーアル茶
92紅帯青餅プーアル茶
上: 餅茶の表面
下: 餅茶の裏面

餅面(餅茶の表面)の様相は、表も裏も同じです。異なる等級の茶葉を表と裏とに分けて配置する「配方」はされていません。孟海茶廠の1990年代の製品にしては珍しいタイプです。

92紅帯青餅プーアル茶

92紅帯青餅プーアル茶

香港の茶商が、雲南省西双版納の孟海茶廠にオーダーして作りました。
台湾のプーアル茶専門誌の『茶藝』No.8(2003年11月号)の広告スペースに、台湾のお店の「随縁陶芸」が、このお茶を紹介している文章があります。
以下はその広告文章を訳したものです。
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92紅帯青餅は、孟海茶廠にて生産されたお茶です。
1994年に雲南から香港に移りました。香港では転々として、1997年に台湾に流れ着きました。
このお茶の茶葉は、ヨーロッパに輸出できるレベルの3級単一の茶葉です。面茶(表面の茶葉)、里茶(中の茶葉)、底茶(裏面の茶葉)は同じです。 90年代では非常に珍しい乾倉青餅です。
現在、茶面の色は紅栗色になって、油亮(ピカピカする)で、干浄(キレイ)です。茶湯の色には赤味があります。
茶気(お茶の香り)が強く、湯口飽満(ふくよか)です。
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解説:
「1994年に雲南から香港に移りました・・・・・」
1992年につくられ、1994年に香港に移っています。2年間は孟海茶商の倉庫で眠っていたことになります。それから1997年までの3年間は香港の倉庫に、現在(2007年)までの10年間は台湾の倉庫に保存されていました。
台湾の茶商が香港の茶商にいつの時点でオーダーしたかは分かりませんが、その当時はまだ香港の倉庫熟成に信頼が厚かったため、ある程度の年数を香港で熟成させるという考え方もあったと思います。
そして1997年に台湾に移されました。偶然かもしれませんが1997年はイギリス領の香港が中国に返還された年と一致します。また、ちょうど台湾にプーアール茶ブームの波が来ていた頃です。
「ヨーロッパに輸出できるレベルで・・・・」
この話は、1970年代の名作「七子紅帯青餅プーアル茶」のエピソードとよく似ています。「3級茶葉」という点についても一致します。異なる点は、「3級単一」であるという点ですが、実は逆に、「七子紅帯青餅プーアル茶」こそが、3級単一茶葉ではないかという説もあります。文献の記録をくつがえして「七子紅帯青餅プーアル茶」は異なる等級の茶葉が表と裏に配置される「配方」がされていないということになります。実際に「七子紅帯青餅プーアル茶」は「配方」の跡が見つけにくい品です。
+【七子紅帯青餅プーアル茶】
「90年代では非常に珍しい乾倉青餅です・・・・」
香港の倉庫は比較的湿度の高いところが多いのですが、この「92紅帯青餅プーアル茶」の茶葉には、湿度の高い倉庫に保存された跡が見当たりません。香港にしては乾燥した環境に保存された品ということになります。
それでも台湾の倉庫に比べると香港のそれは熟成がすすみやすい環境です。いったん香港でしっかりと熟成させたものを、台湾でゆっくり寝かすのは、多くの年代モノに共通するパターンです。
1990年代後半からは、香港を介さずに雲南から台湾や広州へ直接移されるパターンが増えています。

■このお茶の茶葉について

92紅帯青餅プーアル茶
92紅帯青餅プーアル茶
92紅帯青餅プーアル茶
3級茶葉は小さな若葉で、新芽も混ざります。小さな新芽と若葉は早春の3月末頃の典型的な形と大きさです。4月中頃から徐々に雨が多くなるため、新芽は大きく育ちますが、風味は落ちてゆきます。小さな新芽と若葉は重量がないため、原料となる毛茶は一年でもっとも高価になります。
茎の部分もわずかながら混ぜてあります。熟成のためには、大きな茶葉や茎の部分は有効なのですが、このお茶は味と香りに重点を置いたギリギリの等級で構成されています。
西双版納の旧六大茶山の例えば易武山の一部の茶園の新芽や3級までの若葉には独特の香りがありますが、この香りを引き出すためには、収穫した茶葉を「晒青毛茶」(原料の茶葉)にまで製茶加工する「殺青」の火入れの温度調整や、「揉捻」の手作業に高度な職人技術が求められます。

92紅帯青餅プーアル茶
92紅帯青餅プーアル茶
92紅帯青餅プーアル茶
92紅帯青餅プーアル茶
さらに餅茶に圧延加工する技術についても考慮されています。

3級という小さくやわらかい茶葉で、しかも圧延が強いと、茶葉は密着し、空気の通りが悪くなり、湿気にデリケートになるため、熟成が難しくなります。この「92紅帯青餅」は圧延がゆるく、茶葉と茶葉のすきまが適度にあるように作られています。そのため餅身に厚みがあります。
3級の若葉が多く使用されている点でよく似た定番銘柄に、「7532七子餅茶」があります。それは圧延がやや強めで、餅身はカチカチに固められるため、空気の通りが悪くやや熟成の難しいお茶です。「厚紙7532七子餅茶プーアル茶」のページに、その熟成の良い例と悪い例を紹介しています。
+【熟成の差・厚紙7532七子餅茶プーアル茶】

左「92紅帯青餅」 右「7542七子餅茶」
左「92紅帯青餅」 右「7542七子餅茶」

他の同じ系統の餅茶と比べてみても、厚みがあります。7542七子餅茶との7枚組みの高さを比べると、「92紅帯青餅」は約1枚分くらい高さ(厚み)が余分にあるわけですが、ひとまわり大きな4級茶葉を主体とした「7542七子餅茶」よりも、3級茶葉のこの「92紅帯青餅」のほうが厚いということになり、やはり意図して圧延がゆるく作られていることがわかります。

上「92紅帯青餅」 下「七子紅帯青餅」
上「92紅帯青餅」 下「七子紅帯青餅」

この「92紅帯青餅」がモデルとしたと思われる「七子紅帯青餅」と比べても厚みがあります。茶商からメーカーへのオーダーには、保存熟成のことを意識した指示があったものと推測しています。

上「92紅帯青餅」 下「七子紅帯青餅」
上「92紅帯青餅」 下「七子紅帯青餅」
上にある餅茶「92紅帯青餅」
下にある餅茶「七子紅帯青餅」

茶葉の様子が非常によく似ています。 この二つのお茶の関係がよくわかります。もちろん年代の差があるので、色は多少違いますが、茶葉の形や質感はそっくりです。

92紅帯青餅プーアル茶
92紅帯青餅プーアル茶
葉底(煎じた後の茶葉)

触感はふわふわと弾力があり柔らかいです。葉脈や茎は肥えていますが、口に入れて食べて違和がない柔らかさです。早春摘みの若葉の特徴のひとつです。レモンのようなバニラのような特徴のある香りを持つことから、易武山の一部の有名茶山のものと思われます。

一芽三葉

雲南の西双版納の山々は世界でもっとも古くから茶樹の栽培がされている土地です。このお茶のような華やかな香りの茶葉が収穫できる場所は、すでに探しつくされ、知り尽くされています。新しい茶園を作るために山をいくら開拓しても、収穫量は確保できても特別に香りや風味の良い茶葉はできません。その現実から考えてみても、この「92紅帯青餅」は歴史のある茶山のものだと思われます。
このように柔らかい新芽や若葉だけを採取するのは手間のかかる仕事です。1970年代の農業改革の影響で切り戻しされて人の背丈くらいに低くされた古茶樹や、古茶樹園でも新旧交代のために植えられている若い茶樹から収穫されたものと思われます。それらは同じ茶園の背の高い茶樹に比べて渋味や苦味が軽快な風味となる特徴があり、このお茶の風味とも共通しています。

■包み紙などの印刷について

七子紅帯青餅プーアル茶
92紅帯青餅プーアル茶
上: 「七子紅帯青餅」1970年代
下: 「92紅帯青餅」

包装紙の文字のデザインは、1970年代のものに似せてあります。「雲南七子餅茶」の「七」の文字はやや縦に細長くデザインされています。また「七」の字のヨコ棒の「一」は水平です。1980年代からのスタンダードな品の「七」の字は、ヨコに広く、ヨコ棒の「一」は斜めになります。

92紅帯青餅プーアル茶
「八中茶」マーク

外包みの印刷の中央にある「茶」の字。
「八中茶」商標の緑色の「茶」の字は手押しの印鑑です。 ひとつひとつインクの乗りが異なります。

92紅帯青餅プーアル茶
「大口中」字版

「中国」の「中」の字の「口」の部分が、タテに長い文字のデザインになっています。これを 「大口中」字版と呼びます。
1960年代末期~1980年代中期まで使用されたデザインです。このお茶のように茶商がオーダーしたものの中には、1990年代にも「大口中」字版があります。

92紅帯青餅プーアル茶
「出口」の「出」の字。

外包みの印刷、「中国土産畜産進出口公司雲南省茶葉分公司」の「出」の 「山」の部分は上下で大きさが異なります。
包み紙の文字デザインは、1970年代のものに似せてありますが、模倣としては不完全なところもあって、例えば内票(餅茶といっしょに包み紙に入っている紙)や、内飛(茶葉の中に埋め込まれている紙)については、孟海茶廠のスタンダードな1990年代のデザインが使用されています。

■試飲について

92紅帯青餅プーアル茶
92紅帯青餅プーアル茶

圧延がゆるく、茶葉はもろいため、素手でもカンタンに端のほうから崩せます。茶葉を傷めないように、ゆっくりと端のほうの茶葉を指で摘んで抜き取るようにするのがコツです。
餅面に鼻を近づけると、かすかに甘いような香りがあります。出来上がってから10年も経つと香りは弱くなるのですが、他の10年モノに比べると強い香りです。香りを意識した茶葉の配合がここからもわかります。

92紅帯青餅プーアル茶
92紅帯青餅プーアル茶

茶湯は明るい栗色。やや濁りがあるように見えるは、「白毫」と呼ぶ新芽の表面にある細かい毛が、湯の中に舞うためです。緑茶ではこの細かい毛のあるものが良く、加工段階では茶葉から離れてしまわないように丁寧にあつかわれます。
台湾の茶商の広告にもあったように、茶気(お茶の香り)が強いです。それもレモンの皮のような滋味のある爽やかさが感じられます。西双版納の旧六大茶山の一部の茶樹の若葉に見られる特徴です。同じくその特徴である梅香や樟香、蘭香もあります。そして5煎めくらいには沈香がかすかにしてきます。
あっさりと薄く淹れるのが美味しく飲むコツですが、多少濃くなっても、味のバランスが崩れません。このバランスの良さは、1990年代のお茶にして、飛びぬけています。

■飲み比べ

この「92紅帯青餅」のモデルである、1970年代の「七子紅帯青餅」と飲み比べしました。
+【七子紅帯青餅プーアル茶】

左「92紅帯青餅」 右「七子紅帯青餅」
左「92紅帯青餅」 右「七子紅帯青餅」
左「92紅帯青餅」 右「七子紅帯青餅」
左: 「92紅帯青餅プーアル茶」 
右: 「七子紅帯青餅プーアル茶」

七子紅帯青餅のほうが熟成が進んでおり、茶湯には赤味が強く出ますが、色の系統はよく似ています。
味の系統もまったく同じです。やはり「七子紅帯青餅」をモデルにしたと思って間違いなさそうです。1970年代と1990年代を同時に比べると、全体的なまろやかさや旨味は異なりますが、バランスの良さにおいては、1970年代とまったくの互角です。
「92紅帯青餅」は若いなりの美味しさがあります。早春の新芽や若葉には尖った刺激のある渋味や苦味が少なく、作りたてでもすぐに口にやさしい美味しさがあります。季節外れの茶葉ではそうはゆきません。

左「92紅帯青餅」 右「七子紅帯青餅」
左: 92紅帯青餅 (このお茶)
右: 七子紅帯青餅

葉底(煎じた後の茶葉)にも色の違いと質感のちがいがあります。「92紅帯青餅」はやわらかく、フワフワしているのに対して、「七子紅帯青餅」は熟成がすすんでいるため、ガサガサしています。

92紅帯青餅プーアル茶
92紅帯青餅プーアル茶
7枚組みで竹の皮に包まれ、針金と紐で縛ってあります。

7枚をお求めの場合には、竹の皮ごとになります。ただし、竹の皮は一度開けて中身を確かめております。
乾倉といえども、いったん香港でしっかりと熟成してあるので、この先、日本の室内の常温で保存しても、まったく茶商の倉庫に入っていないものに比べて、熟成のすすみ具合も良いでしょう。

また新しい情報があれば、ここに文章を追加してゆきたいと思います。


92紅帯青餅プーアル茶 約340~360g

茶葉の量のめやすは以下をご参照ください。
+【5gの茶葉でどのくらい飲めるか?】

保存方法については、以下のコーナーをご参照ください。
+【プーアール茶の保存方法】


つぎにこのお茶はいかがでしょうか?

92紅帯青餅プーアル茶
七子紅帯青餅プーアル茶
+【このプーアル茶の詳細】


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