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易武古樹青餅2010年 その3

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易武古樹青餅プーアル茶

■挑黄片
晒干で仕上がった茶葉を「晒青毛茶」と呼びます。略して「毛茶」です。毛茶は「挑黄片」を経て袋詰めされ、メーカーで圧延加工され、餅茶となります。
「黄片」は、成長しすぎてやや硬くなった茶葉のことです。揉捻してもよじれずに開いたままで、乾燥すると黄色っぽくなって目立ちます。黄片を残したまま餅茶にすると、見た目が悪くなったり、たくさん混じると粘着力が悪くなるので圧延がうまくゆきません。

毛茶を広げて黄片を取り除きます。
これも手作業です。晒干で乾ききった茶葉はパリパリになって壊れやすいので、指先の力を加減してひとつひとつつまみ出します。

易武古樹青餅プーアル茶

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黄片を取り除くお茶づくりは、漢族の喫茶文化の影響があります。
易武山の「落水洞」・「麻黒」・「大漆樹」の一帯は漢族の集落です。明の時代の末期の1570年頃に南下してきた漢族によって、この土地に新しい技術がもたらされました。

漢族の農業は、自然にたいして積極的に働きかけます。例えば、農地の周囲を残して雑木を伐採し、茶樹への採光を確保したり、下草が乾いて枯れる冬に鍬入れをして、土に栄養と空気を与えたり、枝の剪定によって春の発芽を早めたり。
その結果、麻黒村一帯の茶樹は丁寧に刈り込まれ、日本庭園のつつじのように見えなくもありません。

無農薬や無肥料の自然栽培を守りながら、しっかり手入れし、山全体では自然林を多く残してバランスを保っています。今の流行りの言葉でいうと、「サスティナブル」(長期継続可能な)農業ということになります。

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一方で、いくつかの山岳少数民族の山では、農地の乱開発が目立ちます。古来から焼畑で様々な作物をつくり、転々としてゆく移動型のライフスタイルがあります。経済や社会の環境が変わって、移動型から定住型に変えてゆくべきなのですが、習慣を変えるには年月がかかります。お茶の収入が安定してくると、山に自然林を多く残せるようになるので、そのようなサイクルになるのを待つしかありません。

黄片から話がそれましたが、農地の手入れをすればするほど黄片の割合が多くなります。手入れをした茶樹は、柔らかい若葉の時期を通り越して、黄片となる率が多くなるのです。

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黄片は香りが弱く味はおっとりとしています。それなりの美味しさがあり、農家の人々が自分たちで飲むために手元に残しています。
ちなみにこの地方では茶泡飯(お茶づけ)を食べる習慣があります。お茶づけには黄片を使っています。

■圧餅
農家から毛茶を引き取り、圧延設備のある工房に持ち込みます。
いよいよ円盤型の餅茶になります。
工房もまた易武山の集落にあります。茶葉を蒸して柔らかくして、圧延成形して、陰干しと天日干しをします。設備は簡単なものです。

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鉄の大鍋を逆さにしたような、ドーム型の窯のてっぺんに穴がひとつ空いていて、そこから蒸気が勢いよく吹き上がる仕組みです。薪を燃やす火で湯を沸騰させるので、煙が風味を損ねないように焚き場は部屋の外にあります。

円筒形のアルミの筒に計量した餅茶一枚分の茶葉を詰め、それを蒸気にかざして柔らかくして、布袋に移して包みます。
布を絞って円盤形に成形するときの結び目を中央に押し込むので、餅茶の裏面中央に窪みができます。
布のまま重石を乗せて、人が重石の上に乗り、ゆらゆら揺すって圧し固め、カチカチの餅茶になります。

易武古樹青餅プーアル茶

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餅茶の円盤は直径18~19センチ。重量357gが標準です。
当店は直径19~20センチ。重量385g。少し大きめにしました。400gサイズの餅茶も最近は増えていますが、少し大きいほうが見栄えが良く、熟成もよいとされています。

357gという餅茶の標準サイズは、馬で遠方へ運んだ時代に決まりましたが、現在においても圧延や乾燥や長期保存熟成など様々な観点からみて、バランスの良いサイズです。

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易武山の茶葉を圧延するのは、易武山の工房が良いと考えました。
しかし近年はほとんどが設備の良い孟海のメーカーで圧延されています。易武から孟海へは車で6時間ほどの道のりですが、孟海の茶廠のほうが技術も設備も優れており、時代おくれな易武山の工房よりもずっと出来がよいのです。たとえそれが昔ながらの石型を使ったにしても、孟海の一部の茶廠のほうがよく研究しています。
それでも易武山にした理由は、圧延後の乾燥が古式の天日干しだからです。

易武古樹青餅プーアル茶

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圧餅のために蒸した水分が残っているので、それを乾燥させる必要があります。易武山では「涼干」(陰干し)と「晒干」(天日干し)で乾燥させます。

孟海のメーカーでは「(火共)干」と呼ぶ室内での熱風乾燥になります。熱風乾燥はいちどに大量に処理でき、天候に左右されませんが、やや温度が高いので、風味が損なわれる心配があります。
また、孟海は易武山に比べて空気がやや乾燥しているので、太陽光線が強すぎます。加減を間違うと、茶葉は日焼けを通り越して火傷してしまいます。

易武山はその地域の独特の気候のせいで、午前中は霞や霧が多く、太陽光線はおだやかです。午後になってようやく高地の強い太陽が照りつけ、ちょうど良い仕上がりになります。

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工房に持ち込んだすべての毛茶は一日で圧延を終え、餅茶となって室内の棚に並べて涼干され、翌朝の太陽を待ちます。
朝の8時半から青空に向かって餅茶をひろげ、昼の12時にはすべてをひっくりかえして裏面を干します。
太陽が強くなる午後3時までには日陰に移動させて、粗熱を冷まします。しっかり冷めてから、手すき紙で包装して完成です。

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晒干で仕上げると太陽の香りがします。
太陽の香りとは、たとえば同じように天日干しで仕上げる乾物の海苔や昆布、古い木造家屋の日当たりのよい縁側、あるいは天気の良い日にパリッと乾いた洗濯モノにも感じられる、あの懐かしいような香りです。

できたての新しいうちはまだ餅茶からその香りが漂うのですが、時間が経つと弱くなって消えてゆきます。それでも湯を注いだ瞬間には、かすかにその香りが蘇るような気がします。

易武古樹青餅プーアル茶

圧餅の工程にも落とし穴があります。
易武山にもいくつかの地域に古茶樹があって、それぞれに風味が異なり、価格差はおよそ2~3倍あります。しかしぱっと見た目は易武は易武で、古茶樹は古茶樹です。
工房が所有している安い茶葉と差し替えられることのないよう、現場でにらみをきかせないといけません。
毛茶を入れている袋はみんな同じような色と形をしているので、ちょっと眼を離したすきにすり替えられます。

今回の工房は、農家と親戚関係にあるので、その点はやや安心できましたが、それでも職人のうちの一人が裏切る可能性があります。
泥棒の多い辺境地でのお茶づくりは緊張の連続で、心も体も休まる暇がありません。

易武古樹青餅プーアル茶

圧餅が完成してからあるトラブルに気付きました。
1枚1枚の餅茶の重量に差があるのです。一般的には+10g-10gくらいが誤差としてゆるされる範囲です。しかしこの餅茶には最大40gほど誤差があるのです。
工房の技術者とともに圧延工程を振り返ってみて、てんびん秤が故障していることに気付きました。もっともこの工房ではずっと昔からこの秤を使用してきたので、これまでにも40gくらいの誤差を見逃していたことになります。

茶葉の品質にはまったく問題ありませんが、385gの品に40gの差は不公平になるので、重量にあわせた価格設定をすることにしました。

重量のトラブルはあったものの、その他は順調で、お茶づくりはここでひとまず終了です。手配した車で易武山から餅茶を運びだし、町の保管場所に移しました。

■その4 品茶(つづき)

+【易武古樹青餅2010年 その4】


易武古樹青餅2010年 1枚 380g


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