■品茶
圧餅後2~3カ月経って、ようやく味が落ち着きます。
出来立てのうちは揮発性の成分が残っていて、それがゆっくり拡散してゆくためだと思われます。
したがって、出来立ての品茶は、正確なところが掴めないかもしれません。
熟茶にも熟成の風味があります。
例えば当店で過去に紹介した『73厚磚』(1973年)、『後期文革磚』(1984年)、『下関銷法沱茶』(1990年代)、これらの銘茶は、年数を経るほどに風味が浄化されてゆくようでした。
熟茶は苦みや渋みがおだやかに仕上がるので、熟成によってまろやかになってゆく生茶のような変化は限られています。
年数を経ることで、逆にまるみのある風味の中から際立った個性が現れてきて、味の印象が深くなってゆきます。その観点からすると、5年ほど経ってからの風味が魅力あると思います。
現時点ではそれを占うための、素質を見る品茶になります。
茶葉を崩して見てみます。
理想的な赤味の強い色で、新芽と若葉は明るいオレンジ色です。成長した茶葉や茎の部分は黒っぽく、これも正常な色です。不良発酵による真っ黒に焦げたところや、くすんだ灰色になったところはひとつもありません。発酵不十分な緑色を残した茶葉も見当たりません。
ブレンドしていないので、裏も表も内側もずべて均一です。
比較するために、別の茶廠の布朗山の雨の季節の古茶樹でつくった熟茶を一枚入手しました。「布朗山古樹茶熟餅」(仮称)とします。
このお茶「版納古樹熟餅2010年」(写真左)は全体的に朱色で、「布朗山古樹茶熟餅2009年」(写真右)は全体的に黒っぽい色をしています。
この色の差は、茶葉の成長度です。
新芽や若葉は明るい朱色となり、成長して開いた茶葉は黒っぽい色になります。成長度によって成分が異なるので、発酵の具合も異なります。
新芽や若葉には華やかな香りと密度の濃い舌触りがあります。成長した茶葉には野趣のある香りと滋味があり、舌触りは荒っぽい感じになります。
このお茶「版納古樹熟餅2010年」を飲んでみた第一印象は、びっくりするほど甘い液体です。
透明感と甘さとは、自分の知っている「お茶の味」というカテゴリーから外れるほどなので、「液体」と表現してみました。あえて言うと、「ココア風味のお汁粉」です。
それに比べると「布朗山古樹茶熟餅2009年」は、一般的な熟茶の、いわゆる「お茶」の印象を持っています。差が大きいので、2つの違いからなにかを見つけることは難しくなりました。
どんな熟茶でも真黒になるくらい濃く煎じると、バランスを崩して不味いのですが、このお茶「版納古樹熟餅2010年」はまったくバランスを崩しません。
苦みを強くしながらも淡々としています。後味はさっと消えて、清々しささえ感じます。
飲んだ後に血のめぐりが良くなって、身体が浮かぶような感覚や、腹の底から温かくなる感覚も格別です。
渥堆発酵にいったいなにが起こってこうなったのか?
古茶樹、秋摘み、茎の部分、でんぷん質、酵素、糖化、麹菌、水の量、水の成分、温度、乾燥までの時間、蔵の中の風通し、玉解(茶葉の撹拌)の頻度・・・・いろいろな関わりが頭の中をぐるぐるめぐっていました。
数カ月経ってわかってきたのは、発酵がかなり勢いよくすすんだ結果であるらしいということです。
湯を注ぐとしばらくして黒々とした色が出てくるのに、それが何煎もつづくというのは、茶葉が内部までくまなく変質しているということです。
熟茶の発酵成分をたくさん摂取したいダイエットや健康の目的にも、有効な仕上がりと言えます。
■茶頭と茶末※終了
「茶頭」と「茶末」は、熟茶づくりの過程でできる、半端な茶葉です。「茶頭」は発酵の時に水分を含んだ茶葉がくっついたまま固まりとなる現象で、玉砕の作業から漏れて残った部分です。圧餅することができないので、茶頭だけを残して売られます。茶頭には特別な風味があると言われて好む人が増えたせいか、近年はいくつかのメーカーが茶頭をレンガ型の磚茶にした製品を出しています。
しかし、このお茶では茶頭に特別な風味はありません。むしろあっさりしています。茶頭は餅茶にくらべて乾燥がうまくゆかないので、念のために当店で「殺青」の要領で2度めの火入れを行っています。そのため若干焦げ味があります。
煎じるときに塊のままではなかなか抽出できないので、少しほぐしてから湯を注ぐようにしてください。
「茶末」は発酵の時に崩れて粉となった茶葉です。一般的には茶廠が他の熟茶の茶末もふくめてたくさん集まったところで「小沱茶」と呼ぶキャンディーサイズの固形茶に加工します。
今回は古茶樹の高級茶末となるので、このまま販売します。
味は同じですが、茶葉の形状の性質で最初にドッと濃く出て煎がつづきません。ダイエットや健康の目的で大きなやかんに一度にたくさんお茶をつくる方には便利です。洗茶不要です。店で混入物を取り除き、軽く鍋で炙り、そのまま煎じて飲めるようにしました。洗茶をするとかなり濃い茶を捨てることになるので、網の目の細かい茶濾しで濾して飲むとよいでしょう。
■その6 熟成(つづき)
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