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版納古樹熟餅2010年 その3

ban na gu shu shou bing cha

版納古樹熟餅プーアル茶

■渥堆発酵
秋に完成した毛茶は20kg単位で袋詰めし、翌年の春まで巴達山の農家に預けてありました。冬の間は乾季なので、保存の心配はありません。

当初4月中頃から茶廠(メーカー)での渥堆発酵をはじめて、6月中頃には仕上がる予定でしたが、2010年春のかんばつの影響で、約1ヶ月遅れの5月26日にはじまりました。
かんばつで春の茶葉の産量が減り、価格が高騰したので、どこの茶廠も2番摘みの価格の下がるのを待っていました。

版納古樹熟餅2010年

当店のオーダーは少量なので、それだけのために設備や職人を稼働させるわけにはゆきません。そして、少量で渥堆発酵を成功させるためには、すでに蔵の中で別の大量の茶葉の発酵が始まっているのが前提条件だったのです。

4月末頃から雨がよく降り、茶葉の市場価格が下がってきて、5月に入ってからようやくあちこちの茶廠で発酵がはじまりました。
しばらくして渥堆を依頼している茶廠からも連絡がありました。蔵ではすでに大量の茶葉の発酵がはじまっています。

版納古樹熟餅2010年

発酵食品に対する理解は中国でも遅れています。茶葉の発酵にカビが生えているのを見て、怖がる人もいます。
西双版納は食文化に発酵食品の古い歴史がありますが、例えば「漬物には乳酸菌が活動するので、あの酸っぱい味になるのですよ」と言うと、「菌がついてたのか!」とびっくりして「明日からもう食べない」、「子供には食べさせない」、と気持ち悪がる人は1人や2人ではありません。

また、中国では地方が違ったり、民族が違ったり、考え方が違う相手を、あからさまに悪く言ったり、足を引っ張っり合ったりする習慣があります。
そのため、渥堆発酵の茶葉にカビが生えている様子を孟海県や茶廠は他所の人に見せたがりません。関係者以外立ち入り禁止になっているのは、利害の対立する者が消費者の知識のないことを利用して、悪いイメージを流布しては困るからです。

版納古樹熟餅2010年

2006年のプーアール茶ブームが盛り上がったちょうどそのタイミングに、衛生面で悪いイメージのニュースがいくつか流れました。いずれも発生源はこの地方とは関係の無い他所の土地で、しかも訴え出ている被害者がひとりも居ないという、どこか不可解な話です。しかし、ショッキングなニュースで飯を食う三流のマスコミには格好のネタとなり、たちまち全国に伝わります。

一方で日本においても、テレビCMなどを利用して必要以上に細菌に対する恐怖を煽り、殺菌や抗菌をテーマにした商品を宣伝する大手企業があります。
イメージづくりには当店も協力したほうがよいのですが、このサイトは日本語であり、しかも当店のお茶を買う人にだけを対象にしています。お茶を買わない人にまで気兼ねして、なんらかの妥協をするのはまっぴらごめんです。

そのようなわけで、茶廠の責任者から「一番古い蔵がおすすめだが、どうでしょうか」と言われたときに、まさしくこれこそ求めていたものです!と感謝の気持ちでした。

版納古樹熟餅2010年

酒造りの世界では「蔵つき酵母」という言葉があるように、古い蔵には何度も発酵を繰り返し、それに適応するように進化してきた優良酵母や優良麹菌が、壁や床のいたるところに棲みつき、空気中にもたくさん漂っています。
すなわち、古い蔵には熟練の職人みたいな酵母や麹菌類がいっぱい住んでいるのです。

版納古樹熟餅2010年

またこの蔵の屋根は古い瓦葺でできていました。瓦は太陽の照射熱をうまく逃がして、室内の温度を安定させます。安定した温度を保つのは、良い発酵にかかせない条件の一つです。

渥堆による熟茶づくりは、研究期間も含めてほんの50年ほどの技術ですが、その手本となっている「黒茶」の歴史は長く、文献をたどると1000年はさかのぼります。熟茶づくりは歴史ある黒茶づくりの応用技術と言えます。
「発酵」に関わる菌類の営みや成分変化の森羅万象は、とくにそれが味に関わることとなると、科学的なアプローチでの解明が難しい分野です。日本酒のように比較的研究がすすんでいてもなお、近代的な設備の整った大手メーカーには無い魅力が、地方の地酒にはあります。
発酵の未知の部分に秘密があるのです。

版納古樹熟餅2010年

さて、いよいよその古い蔵での発酵がはじまります。
当店の用意した茶葉は袋から開けるとすぐに腰のあたりの高さに積み上げられ、潮水(茶葉に水分を含ませる)されます。工場長自らが地下水のくみ上げポンプにつながるホースを握り、二人の職人が大きな鍬で茶葉の山を底からひっくり返し、まんべんなく水を染み込ませます。
工場長は元国営茶廠のベテランです。水を撒く間も茶葉の様子を確かめながら微妙な調整をしている様子です。その仕事を職人たちが見守ります。

版納古樹熟餅2010年

蔵の中にはすでに別の大量の茶葉の発酵がはじまっています。そこから発せられる熱は蔵の温度を最適に保ち、空中には麹菌の胞子が大量に飛び交っていることでしょう。
熟茶の発酵のスタートに種麹は使いません。
蔵の中の菌類が自然に活動をはじめるのを待ちます。発酵のスタートをより安全に確実にさせるために、発酵のすでに始まっている別の茶葉が傍にあることが重要なのです。

残念ながら、これ以上の技術的なことは茶廠独自の秘密もあるために詳しくは書けません。
作業が終わると蔵の門にも敷地の門にも鍵が掛けられ、誰も入れなくなります。 技術の漏えいを防ぐ目的もありますが、不要な雑菌の侵入を防ぐ衛生上の対策もあります。
倉庫内は土足厳禁で、職人たちは室内専用の足袋を履いて作業をしています。足袋は倉庫に入るごとに毎回洗濯され、清潔を保つようにされています。

版納古樹熟餅2010年

発酵がすすんでくると、茶葉同士がくっついて玉になります。そのまま放っておくと発酵ムラとなるため、茶葉の固まりを解きほぐす「玉解」を行います。
大きなシャベルで茶葉をすくって専用の機械に放り込むだけで、パラパラにほぐれた茶葉が勢いよく出てきます。職人がてきぱきと無駄のない動きをして、あっという間です。
それが終わると茶葉の山を整えて、潮水し、熱を逃がさないよう覆いをかけます。温度を一定に保つためにも、仕事にはスピードが求められます。

版納古樹熟餅2010年

第一回目の潮水からちょうど一週間後に観察した茶葉は、うっすらと白い麹カビの胞子を表面に帯びて、内側の温度は50度に達していました(非接触温度計による計測)。麹菌類が栄養を摂取するための大量の「酵素」が生み出されていることでしょう。

香りは、なんとも不思議な甘い香りでした。お茶というのではなく、どこか南国のフルーツを想わせるようなトロピカルな香りが混ざっています。それとは別にカビ自体のものなのか、イカのワタのような香りがごく微かにあります。
工場長によると、発酵状態はとても良いらしいので、菌類の活動のスタートはうまくいったようです。

版納古樹熟餅2010年

版納古樹熟餅2010年

さらに二週間後の茶葉は、部分的に赤黒くなって、いわゆる熟茶の色に近づいていました。香りにもようやく熟茶らしさを感じられます。
さらに一カ月半が過ぎ、この頃になると定期的な潮水の水の量は減ります。発酵によって自ら発する熱にまかせて茶葉の水分を蒸発させます。この乾燥してゆく過程で「金花」と呼ぶ黄色い粉状の麹菌の一種が見つかりました。

長期保存のプーアール茶には「金花」を見つけることがよくありますが、これもお茶を美味しくする種類の麹菌のグループです。渥堆発酵の過程では、初期~中期~後期と、水分や熱のコンディションの変化に伴い、活躍する菌類もバトンタッチして変わってゆくようです。
さらに茶葉が乾燥すると、表面に見えていた胞子は消え去りました。2週間そのまま寝かせて、渥堆発酵の終了です。

版納古樹熟餅2010年

茶葉はところどころ固まりとなっていたり、粉状に崩れたりしていますが、おおむね手作業による揉捻の美しさを留めています。餅面がどのように仕上がるのか楽しみです。

発酵前から比べると、茶葉はひとまわりもふたまわりも小さくなって見えます。実際に重量は16%も減っていました。減った分は、わかりやすく言うと菌類に喰われたのです。
まだ完全に乾燥していないので、この後さらに重量を減らすでしょう。 高価な原料で16%以上もの減少は正直痛いです。 有名茶山の古茶樹で熟茶をつくるのは、本当は生茶よりも高くつくのです。

■その4 圧餅(つづき)

+【版納古樹熟餅2010年 その4】


版納古樹熟餅2010年 1枚 380g


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