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版納古樹熟餅2010年 その4

ban na gu shu shou bing cha

版納古樹熟餅プーアル茶

■古い蔵とお茶の味
古い蔵、古い井戸、昔堅気の職人たち。
この3拍子揃った熟茶づくりは、そう長くは続かないだろうと予感しています。そのせいか、このお茶の発酵が終わりに近づくと、もっと長く発酵させていたいような気持ちになりました。

版納古樹熟餅2010年

古い蔵はまるで生き物のようで、どこか魅力があります。
例えば茶の栽培においても、茶樹と寄生植物の関係がお茶の味にどのように関わっているのか?そんなわからない部分を排除すると、つまらない味になってゆくような気がします。

古い蔵と蔵つき酵母との関係も、はっきりと証明できないので、新しく建設される蔵はトタン屋根のプレハブ工法になってゆきます。そこでつくられる熟茶はなんとなく味の深みに欠ける気がするのですが、生産効率や経営効率が優先され、衛生的なイメージが悪いと止めを刺されて、古い蔵は壊されます。

版納古樹熟餅2010年

古い蔵の味に人々が気付くのは、古い蔵が無くなってからです。あの風味はどこへ行った?という話しになってはじめてわかります。
説明のつかない部分を「神」や「天」の一言で守ることができた時代の方が、お茶の味は魅力があったかもしれません。

年代モノのプーアル茶には、昔の山の自然や、技術や道具や、手の仕事がお茶の味に残っています。その遺産的な価値を知れば知るほどお金には換えがたいので、ファンの間では高額で取り引きされます。
その価値の見えない人々には「投機」などど揶揄されますが、それはクリスティーズのオークションで落札された鄙びた壺が1億円と聞いてびっくりするのと同じです。

美術品と同じように、知識がなくてはその鑑賞の仕方のわからない部分が、お茶の味にもあるのです。しかし、いったんその味わいがわかると、人の感覚はその美しさを簡単に捉えることができるようになります。

版納古樹熟餅2010年

麹菌類の発酵は、生き物による仕事なので不安定なところがあります。加工食品の分野では、菌類がつくる酵素だけを取り出して化学的に合成し、菌類の生命活動に頼らない「安定した食品づくり」がはじまっています。

人々がお茶の味をとおした自然との対話をしなくなり、便利や機能だけを求めると、熟茶づくりもいずれそうなるでしょう。そのほうが安全かつ経済的だからです。味が過去の遺産になりつつあるのは、なにもお茶だけではありません。昔ながらの食品全般のことです。

このお茶には、2010年5月26日~7月20日まで古い蔵で命を燃やした菌類の味が宿っています。100年後はオークションです。

版納古樹熟餅2010年

■圧餅
渥堆発酵を終えた茶葉は、形が崩れて粉になったり、玉になって固まった「茶頭」と呼ばれる部分があります。まずはそれをふるい分けします。その後に小さく形の整った茶葉と大きな粗茶葉をふるい分けします。
餅茶の表側には小さく形の整った茶葉、裏側には大きめの粗茶葉を配置して圧延します。この技術を「配方」と呼びます。

しかし今回は旬の茶葉を摘んだせいか、粗茶葉がほとんど出ませんでした。よって「配方」を行う必要はありませんでした。餅面の全体に同じ茶葉で圧し固めます。

版納古樹熟餅2010年

一般的には、熟茶はいくつかの異なる茶葉がブレンドされます。発酵度や風味の異なる茶葉をブレンドすることで、バランスのよい風味に仕上げる目的と、より安い茶葉を混ぜてコストダウンする目的があります。茶をつくる立場からするとコストダウンこそブレンドの本当の目的です。

しかし、今回のこのお茶はブレンドなしです。発酵の結果そのままのをストレートに味わいたいという意図があります。コストダウンできませんが、コストダウンしないお茶がどんなものかを知りたいのです。

版納古樹熟餅2010年

圧延の工程は7人の製造ラインで、茶葉を計量し、蒸し器に詰め、布袋で成形し、圧延します。
このときの計量に問題がありました。渥堆発酵後の乾燥が部分的に不十分で、その結果、圧餅を終えて完全に乾燥させると、餅茶の重量に10g~20gほどの差が生じたのです。

厚みのある古茶樹の茶葉で、しかも揉捻を強くしてあるので、一般的な量産型の茶葉に比べると乾燥に時間がかかるのでした。仕方がないので、餅茶の重量に応じた価格設定をすることにしました。もちろん品質についてはまったく問題ありません。

版納古樹熟餅2010年

圧延は機械で行います。熟茶は茶葉の粘着力が弱いので、力の強い機械圧延です。

圧延後の「(火共)干」(熱風乾燥)は3日間。
2日間熱を通して、最後の1日はゆっくりと部屋の温度を下げて涼干(陰干し)です。
茶廠(メーカー)の敷地には、この熱を得るために石炭や練炭を燃料とする大きなボイラー室があり、そこからパイプで熱湯を通して乾燥室の温度を上げます。茶廠のもっとも費用のかかる設備です。

この乾燥を終えて、熟茶はようやく本来の味となります。それまではまだどんな味に仕上がるのかはっきりとしません。試飲をしても、いまひとつピンとこなかったのです。
圧餅が味を完成させるのは、その工程による火入れ作用のためです。
茶葉を蒸して固める熱と、熱風乾燥による熱と、それによって完全に乾燥することで、成分変化が止まり安定します。

版納古樹熟餅2010年

成分変化が止まると書きましたが、実のところこのとき茶葉に伝わる熱60~70度くらいでは、麹菌の胞子までが完全に死滅することはないと思います。酵素の活性作用も完全には消滅しないでしょう。
つまり、熟茶の茶葉もまた水分を得ると変化の歩みを進める性質をもっています。香港や広州の茶商の湿度の高い倉庫で寝かされた年代モノの熟茶が、個性的な風味を持つのはこのためです。

しかし生茶のプーアール茶に比べると、熟成変化のスピードが遅くなります。おそらく発酵ですでに変化を終えた成分があることと、発酵によってつくられた抗酸化物質が、酸化による変化を少なくしているためだと思われます。
熟茶を飲みだすと、肌のコンディションが良くなると言う人がいますが、発酵によるこれらの物質が関係しているのかもしれません。

■その5 品茶(つづき)

+【版納古樹熟餅2010年 その5】


版納古樹熟餅2010年 1枚 380g


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