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大益貢餅熟茶98年崩し

Da yi gong bing shou cha 98s puer cha

大益貢餅熟茶98年崩し
大益貢餅熟茶98年崩し

大益貢餅熟茶98年崩し
2011/05/11 終了

製造 : 1998年
茶廠 : 孟海茶廠
茶山 : 西双版納 孟海県巴達山
茶樹 : 大葉種 栽培型
茶葉 : 1~2級
工程 : 熟茶
倉庫 : 西双版納孟海常温乾倉

甘味
●●●●●
渋味
●○○○○
とろみ
●●●○○
酸味
●●●○○
苦味
●●○○○
香り
●●●○○ 花蜜香、棗香、麹香
熟成度
●●●○○

国営時代の孟海茶廠(1940~2003)で職人を務めた個人が所有していた熟茶です。
雲南紅茶「テン紅」にも似た贅沢な新芽と小さな若葉だけで作られた透き通った風味は、熟茶ながらに目の覚めるような清涼感をもっています。

■このお茶の入手経路について
輸出向けに作られていた1998年の品にもかかわらず、専門の茶商を経ないで当店が入手したのは珍しいケースです。
1990年代までのプーアール茶の高級品の多くは香港を経由して海外に販売されていました。高級プーアール茶の多くが香港の茶商の倉庫で保存され、後に近くの広州へ移されたため、老茶を扱う茶商は香港や広州に集中しています。
1998年頃の熟茶を当店でもいくつか扱っていますが、ほとんどが香港もしくは広州の茶商を経ています。一部に台湾を経由したものもありますが、それは香港返還の1997年前後に台湾でプーアール茶ブームがあったためです。

香港・広州の茶商経由の熟茶
+【大益甲級沱茶98年】 1998年
+【大益茶磚96年プーアル茶】 1996年
+【下関銷法沱茶90年代】 1998年頃
+【黄印7572七子餅茶99年】 1999年

台湾経由の茶商の熟茶
+【7592七子餅茶プーアル茶】1999年

このお茶「大益貢餅熟茶98年」は作られた後からずっと雲南省西双版納の孟海県で保存されていました。所有していたのは国営時代の孟海茶廠で熟茶作りの職人をしていた個人です。定年退職後に小さなお茶屋さんをするつもりで少しずつ自ら作ったお茶を集めていました。

大益貢餅熟茶98年崩し
大益貢餅熟茶98年崩し
2006年の中国大陸でのプーアール茶ブームと、国内観光地としての西双版納の人気が重なって、孟海茶廠の製品は地元の西双版納で買うのが最も高いという矛盾が生じています。
このお茶も孟海茶廠のお膝元にありながら、それを広州や台湾の茶商経由で仕入れるのと大差のない価格でしたが、上海に持ち帰ったサンプルを時間をかけて試飲し、他の1998年頃の熟茶と飲み比べた結果、その価値は十分にあると判断しました。上質な茶葉、高い熟成技術、だれもが納得できる美味しさを持っていると思います。

孟海
孟海
このお茶の保存されていた孟海県は人口30万人の町で、孟海茶廠など多くのプーアール茶メーカーが集まっているところです。
産業は農業が中心です。近年の経済発展は著しく町は建設ラッシュですが、それでも町から一歩出るとこの地域で最大の穀倉地帯が広がっており、のどかな田園風景が見られます。あちこちに鶏、合鴨、豚、水牛、黄牛などが道を歩く姿が見られ、動物や植物との共存関係にある人々の生活には自然な美しさがあります。
南へ40キロ足らずでミャンマーとの国境になる亜熱帯地方に属し、5月~7月は気温30度を超える暑い日がありますが、海抜1000メートル近くあるため、それ以外の季節は乾季と雨季があるものの暑くも寒くもない温暖な気候です。雪は降ったことがありません。この環境がこのお茶の保存熟成に少なからず影響して、個性ある風味に仕上がっています。

■このお茶の茶葉について
直径37センチ2.8kgある巨大な餅茶です。
標準の餅茶は直径19センチ357gなので、その約8枚分の重量があることになります。このサイズでは郵送困難なため、当店で崩して小分け売りすることにしました。

大益貢餅熟茶98年崩し
大益貢餅熟茶98年崩し
大益貢餅熟茶98年崩し
大益貢餅熟茶98年崩し
大益貢餅熟茶98年崩し
大益貢餅熟茶98年崩し
表も裏も均一の茶葉が使用されています。きめ細かく見える餅面は、茶葉が細かく裁断されているせいです。新芽と若葉の小さな茶葉と刻んだ茎の部分が原料となっています。細かい茶葉のわりには圧延具合は程よくふんわりと固められており、端のほうから手で崩せるくらいです。

大益貢餅熟茶98年崩し
大益貢餅熟茶98年崩し
孟海
内飛(固形茶葉に埋められた商標の紙)
包み紙は白の無地ですが、餅茶の中には内飛があり、「大益」のマークと「雲南西双版納ダイ族自治州 孟海茶廠出品」の文字があります。

大益貢餅熟茶98年崩し
大益貢餅熟茶98年崩し
崩すのに力はいりませんが、大きいだけに時間がかかりました。圧延が軽く仕上がっているので茶葉がほどけやすく、崩してしまうと散茶のようになります。

大益貢餅熟茶98年崩し
大益貢餅熟茶98年崩し
大益貢餅熟茶98年崩し
金花カビです。黄色い粉のように見えます。
餅面には見つかりませんが、崩した内側には金花がついていました。金花は麹菌の一種です。黒茶の発酵に活躍し、美味しくするだけでなく抗菌効果を発揮してより保存性を高めたり、人の体に良い成分を作るとされています。出来立てのパンのようなほのかに甘い香りがあります。安徽省の黒茶「六安茶」の発酵には、この金花カビが活用されています。伝統あるお茶の菌です。
+【六安茶70年代後期】
このお茶を入荷した5月末ごろの孟海は1年のうちで一番暑いときで、日中の気温は30度湿度80%ありました。金花カビが繁殖しやすい季節だったと思われます。気温や湿度が下がると金花は活動を休み、色褪せてやがて見つからなくなりますが、また蒸し暑い季節がやってくると活動を再開し、黄色い粉が見えるようになります。この菌そのものにも栄養があるとされるため、このまま煎じて飲みます。例えて言うと、茶葉の表面に極小の乾燥キノコが付いているようなもので、お茶と乾燥キノコのダブルの栄養が期待できるというわけです。

大益貢餅熟茶98年崩し
茶葉がほどけやすく、崩すとすぐにバラバラになります。一般的に熟茶には発酵のための茎の部分が多く混ぜられますが、この茶葉の茎は若葉に近い柔らかい部分であることと、さらにそれが短く裁断されて目立たちません。熟茶に必要な配合と見た目の上品さを併せ持っています。

大益貢餅熟茶98年崩し
大益貢餅熟茶98年崩し
葉底(煎じた後の茶葉)
葉の形を留めませんが、新芽と小さな1級茶葉、短く裁断された茎の部分がバランスよく配合されています。茎の部分は甘味成分を多く含んでいます。このお茶の強い甘味はここからきます。
この細い新芽と小さな一級茶葉の形は、昔ながらのプーアール茶の茶葉にはあまり見かけないタイプです。プーアール茶よりもむしろ雲南の紅茶「テン紅」の茶葉に似ています。

雲南テン紅茶の茶葉
雲南テン紅茶の茶葉 (西双版納孟海茶山の茶葉)
このお茶「大益貢餅熟茶98年」の茶葉が作られている西双版納にも、「テン紅」茶葉を供給している茶園があります。「テン紅」の茶葉もまた雲南の大葉種のものです。新芽と小さな若葉だけが使用されるため、それを収穫しやすいように背の低い潅木の状態に管理されています。もしかしたら同じ茶樹の茶葉から紅茶とプーアール茶が作り分けられていたかもしれません。
孟海茶廠はプーアール茶作りのメーカーとして有名ですが、歴史をたどると1941年から「テン紅茶」作りを始めた記録があります。

巴達山の茶山
孟海県の巴達山には孟海茶廠が自ら所有する有機茶園があります。海抜1700メートル年間平均気温16.5度の高山地帯です。1988年に開墾されたこの写真の茶園は、雲南に古くからある喬木(背の高い樹)古茶樹園ではなく、四川や福建の緑茶や烏龍茶の茶園に似ています。茶樹の背丈は人の腰あたりにそろえられているため、手摘みによる新芽や若葉の収穫効率が良くなっています。

■試飲について

大益貢餅熟茶98年崩し
大益貢餅熟茶98年崩し
大益貢餅熟茶98年崩し
大益貢餅熟茶98年崩し
しっかりした甘味と旨味をもちながら、孟海の熟茶の特徴である軽快な風味はそのままです。雑味をそぎ落とした透明な味わいは、喉の通りが良く、上品な印象を持たせます。ほんのり甘く素直な花蜜香が風味に華を添えています。
細かい茶葉にもかかわらず煎は長く続きます。濃く淹れても薄く淹れてもバランスの変わらない安定した美味しさがあります。ヨーロッパ向けの交易品に指定された「貢茶」と呼ぶにふさわしい高級熟茶です。

■飲み比べ

孟海茶廠の1998年の品と、小さめの茶葉が使用されていることで共通する「大益甲級沱茶98年」と比べました。
+【大益甲級沱茶98年】 1998年

大益貢餅熟茶98年崩しと大益甲級沱茶98年
大益貢餅熟茶98年崩しと大益甲級沱茶98年
大益貢餅熟茶98年崩しと大益甲級沱茶98年
左: 大益貢餅熟茶98年崩し (このお茶)
右: 大益甲級沱茶98年
口に含んだ瞬間の風味はよく似ています。原料となった茶葉や、渥堆発酵の加減は同じではないかと思われます。そうすると茶葉の等級のみが異なり、そこに風味の違いがあることになります。
茶葉の大きさは「大益甲級沱茶98年」のほうがひとまわり大きく、粗く見えます。
また「大益甲級沱茶98年」は香港ー広州の茶商の倉庫熟成を経ているので、複雑な「老味」が加わっています。

大益貢餅熟茶98年崩しと大益甲級沱茶98年
大益貢餅熟茶98年崩しと大益甲級沱茶98年
大益貢餅熟茶98年崩しと大益甲級沱茶98年
大益貢餅熟茶98年崩しと大益甲級沱茶98年
左: 大益貢餅熟茶98年崩し (このお茶)
右: テン紅雲南紅茶06年
「黒茶(熟茶)」と「紅茶」の飲み比べです。
黒茶は菌類による発酵の工程があり、紅茶にはそれがありませんが、茶葉そのものが持つ酵素成分による変化をうながす工程(これも発酵という言葉が使われている)があります。
どちらも同じ西双版納の大葉種が原料です。もちろん黒茶と紅茶の風味の違いはありますが、後味にあるほろ苦味がとても良く似ているように感じます。
煎は黒茶は何煎もつづき、紅茶は3煎くらいで薄くなります。
葉底は、黒茶は発酵によって茶葉が枯れて小さくなっています。しかし新芽の細く尖ったような部分など、よく見ると似ているところが見つかります。

大益貢餅熟茶98年崩しと大益甲級沱茶98年
大益貢餅熟茶98年崩しと大益甲級沱茶98年
自分用にも来客用にも利用しやすい美味しさです。
初心者の方にもおすすめできるお茶でありながら、本格を知る人をも唸らせる実力の味です。

また新しい情報があれば、ここに文章を追加してゆきたいと思います。

大益貢餅熟茶98年崩し

+【5gの茶葉でどのくらい飲めるか?】

保存方法については、以下のコーナーをご参照ください。
+【プーアール茶の保存方法】


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