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易昌號大漆樹圓茶04年

yi chang hao da qi shu yuan cha 2004s

易昌號大漆樹圓茶04年
易昌號大漆樹圓茶04年

製造 : 2004年
茶廠 : 昌泰茶廠(圧延包装のみ)
茶山 : 易武山 大漆樹村
茶樹 : 大葉種喬木切り戻し古樹200~300年
茶葉 : 春摘み一芽三葉4月10日以前 
工程 : 生茶
倉庫 : 易武山未入倉

2018年9月8日売り切れ

甘味
●●●●○
渋味
●●○○○
とろみ
●○○○○
酸味
●●○○○ さっぱり
苦味
●●●○○ レモンの苦味
香り
●●●○○ 樟香、蘭香、香草(バニラ)
熟成度
●○○○○

易武山で最高級の茶葉をつくる大漆樹寨の2004年春摘みを、茶農家自らメーカーに持ち込んで餅茶にし、蔵に保存していた84枚です。
ふんわりした香りと軽快でキレのある苦味は夏の青空と雲のような爽快さです。淀みのない喉ごしには沢水の清らかさがあります。旬の茶葉の美味しさが凝縮された品です。
古茶樹製品にもいろいろありますが、高級茶作りに歴史ある土地のこのお茶には洗練された気品が感じられます。

■包装と印刷について

このお茶の包装にはメーカー昌泰茶廠の「易昌號」を使用していますが、中身はメーカーが企画制作した品ではありません。
茶農家が餅茶への加工をメーカーに委託したものです。このとき包み紙や内飛(茶葉に埋め込む紙)を茶農家が用意していなかったので、メーカーで余っていたものが使われました。
近年はお茶作りが自由化されているため、中小規模のメーカーは持ち込みの茶葉を加工する下請け的な仕事もしています。

易昌號大漆樹圓茶04年
易昌號大漆樹圓茶04年
易昌號大漆樹圓茶04年
易昌號大漆樹圓茶04年
易昌號大漆樹圓茶04年
易昌號大漆樹圓茶04年
このメーカー「昌泰茶廠」は1999年から創業しています。当初は易武山や攸楽山の江北旧六大茶山の茶葉を中心に古式な石型の圧延技術を取り入れた餅茶作りをしていましたが、易武山の工房は2007年から閉鎖されています。
ちなみにこの包み紙は「易昌號精品2001年」のものです。

易昌號大漆樹圓茶04年
内票(餅茶につけられている紙)

→ 易昌號餅茶是以普耳茶主要産区易武正山茶為原料精制而成,此茶長年成長在雲霧霞蓋的森林之中,實属富今原始生態食品之精華,具有色澤明亮、滋味淳厚等特點,歴来深受国内外客戸青[目来]。
(この文章の内容と、このお茶の茶葉とは一致しています。)

メーカーがある銘柄のお茶を作る場合は、ある特定の茶園や、ある特定の時期の茶摘や、ましてある特定の農家の製茶した茶葉だけで作られることはありません。まとまった量の茶葉を確保するためにそれぞれの茶葉を合わせることになります。大衆向けの製品では、メーカーは原価を抑える目的で、季節外れの茶葉をブレンドすることもあります。
このお茶の場合は、大漆樹の3月末~4月初めの最も高値のつく旬の茶葉のみです。一軒の農家による製茶加工で仕上がりのムラもありません。メーカーの作る品とはひと味違うはずです。

■易武山大漆樹について

西双版納孟臘県易武山はプーアール茶の歴史のある土地です。1700年代からヨーロッパとの交易用のお茶がここから馬で運ばれました。個人経営の茶荘が何軒も軒を連ね、1950年頃までお茶作りをしていました。
易武老街
過去に紹介した「沈香老散茶50年代」のページにこのことを書いていますのでご参照ください。
+【沈香老散茶50年代プーアル茶】
易武山
易武山の茶園は海抜1400メートル付近にあり、年間降水量は1900mm。平均気温約17度。湿度は乾季35~63%。雨季60~80%です。朝の霧が山を覆って茶葉を洗います。それが日照などに影響して茶葉が独自の風味を持つ原因になっているようです。
+【西双版納の茶山について】

易武山大漆樹
易武山大漆樹
大漆樹寨(村)は34世帯が古茶樹園をもつ集落ですが、易武山にいくつもある村の中でも高値の付く高級茶葉をつくる産地です。
易武老街のあるところからは北東に10キロ。同じく有名産地の麻黒村からはわずか1キロのところにあります。
名前のとおり昔この村には大きな漆の木があったそうです。村の集落の入り口にある標識あたりは海抜約1360メートル。茶園はそれより山の上に点在しています。標高の高いこのあたりでは茶以外の他の作物が少なく、森と茶園とがバランスよく保たれています。

易武山大漆樹の茶園
易武山大漆樹の茶園
易武山大漆樹の茶園
古茶樹の茶樹は密集せず適当な間隔を保っています。面積あたりの茶葉の収穫効率は悪いのですが、茶樹はのびのびと育ち、一枚一枚の茶葉が土の滋養をたっぷり吸収しています。

大漆樹の切り戻し古茶樹
大漆樹の切り戻し古茶樹
大漆樹の古茶樹は樹齢200~300年程度のがもっとも多いのですが、1970年代に切り戻しされ、人の胸の高さくらいにそろえられています。根本に近い幹の部分が切られて、その脇の枝が育っているのがわかります。

大漆樹の古茶樹
茶園のところどころに枝を切らずに放置してある茶樹があります。高さ4~6メートルほどあります。茶摘は梯子かけて行われます。どちらにしても古茶樹園の茶樹は茶摘をすることで背丈をある程度に抑えられます。人の管理しない野生茶樹のように10メートルにも20メートルにもなるものではありません。

茶園の豚
古茶樹園は古式の自然栽培で肥料を加えないのが常識です。乾季の11月~3月に土に鍬を入れて掘り返し、土に混ざる枯れ草や広葉樹の落ち葉が自然肥料となります。放牧してある鶏や牛や豚が茶園を散歩しに来ます。人里離れた茶園によっては野生の水牛や象の現れるところもあります。それらの糞もわずかながら自然肥料となっています。

大漆樹の茶園
一芽三葉
茶摘は一芽三葉の太った茎の部分から摘み取られます。茎の部分がまだ成熟しない新芽や若葉を摘み取ると、茶樹を弱らせます。近年のプーアール茶には一芽一葉で新芽の風味を生かした製品もありますが、この摘み方をするのは若い茶樹が整列して植えられている新茶園のものです。古茶樹ではしっかりと育った茎から一芽三葉を摘み取るのが基本です。そうやって200年も300年もの樹齢のある茶樹が守られています。現存している茶樹では樹齢800年の古茶樹もあります。

大漆樹の農家
大漆樹の農家
大漆樹の農家
茶葉を炒る「殺青」、茶葉を揉む「揉捻」はすべて手作業です。高級茶葉をつくる大漆樹のこの農家では手作業が守られ、機械加工される茶葉はありません。

大漆樹の写真ページ
+【易武山大漆樹プーアール茶の里】
+【易武山大漆樹 冬 】

■このお茶の茶葉について

易昌號大漆樹圓茶04年
易昌號大漆樹圓茶04年
易昌號大漆樹圓茶04年
易昌號大漆樹圓茶04年
易昌號大漆樹圓茶04年
易昌號大漆樹圓茶04年
餅身の歪んだ円形は石型を使った圧延の特徴です。
一芽三葉の茎を含めた長さは7cmに達するのもあって、その曲がりくねった線を餅面に描いています。
圧延がゆるく、手で簡単に崩せますが、茶葉の繊維に弾力があり、崩すというよりは、引きちぎると言ったほうが近い表現です。
内飛(茶葉に埋め込まれた紙)は「易昌號」のものです。

易昌號大漆樹圓茶04年
易昌號大漆樹圓茶04年
易昌號大漆樹圓茶04年
易昌號大漆樹圓茶04年
葉底(煎じた後の茶葉)
一芽三葉の典型的な形の茶葉です。早春の時期に茶摘みされた特徴があります。芽が細く尖っていること「春尖」と呼びます。2つめの茶葉はすぐに開くのでやや葉の形に丸みがあること。全体的にやわらかいことなどが早春の茶葉の特徴です。近年は春摘みと言いながらも雨季に入って芽の太った5月頃のものまでもが春摘みといわれますが、実際には春の風味の特徴は4月中旬までの茶葉にしかないものです。
湯になじんだ茶葉が開きだすと、蓋碗からあふれんばかりに膨れ上がります。このため少し大きめの茶器を使用するのが良いでしょう。

■このお茶の飲み方について

易昌號大漆樹圓茶04年
易昌號大漆樹圓茶04年
蓋碗や茶壷できっちり淹れるのもよいですが、スカッとした風味は喉越しで味わうのが妙味です。ゴクゴクと飲めるコップやマグカップいっぱいに注いで、少し冷めるのを待ってください。味が淡く耐泡(味と香りが長く出続ける)が良いので、大きめのポットに何度も湯を足して一日中飲めます。
3月~4月初めまでの春の早い時期に茶摘された新芽や若葉にはやさしい甘い香りがあります。製茶する段階で雨が少ないため、天日干しする晒干のときに焚き火で炙って乾燥させる必要がないので、「煙味」と呼ばれる煙臭さは全くありません。淡い味も春の早い時期の特徴です。
易武山のお茶は全体的に味が淡いのが多いです。淡いことによって味や香りに深みが生まれています。濃厚なのが多い西双版納のお茶に比べて何かが欠落しているようにさえ感じる易武山の風味には、その欠落したところに空間を感じさる山水画に見る色彩のようなところがあります。

■飲み比べについて

易武山の古茶樹青餅といえば「真淳雅號圓茶96年」です。
1950年代にいったん途絶えた易武山の茶荘の號級のお茶作りを1996年に再現した餅茶は、原料も技術も妥協することなく作られました。その後に出品された易武山の製品のレベルを見るにふさわしい比較対象です。
+【真淳雅號圓茶96年】

易昌號大漆樹圓茶04年と真淳雅號圓茶96年
易昌號大漆樹圓茶04年と真淳雅號圓茶96年
易昌號大漆樹圓茶04年と真淳雅號圓茶96年
左: 易昌號大漆樹圓茶04年 (このお茶)
右: 真淳雅號圓茶96年
餅身の大きさに差があります。「易昌號大漆樹圓茶04年」370gと「真淳雅號圓茶96年」340gで、30gの差があります。圧延の石型に違いがあると思われます。
色の差は保存年数の8年の差が大きいでしょう。「真淳雅號圓茶96年」のほうが赤黒く変色しています。
餅面に見える茶葉の形が異なります。 「易昌號大漆樹圓茶04年」(このお茶)は茶葉がやや大きく形を留めているのが多くあります。「真淳雅號圓茶96年」は裁断されて形を留めていない小さな茶葉が混ぜられています。一芽三葉の茶摘は共通していますが、「真淳雅號圓茶96年」は一芽三葉だけではなく新芽や若葉を足してブレンドされている様子があります。
一芽三葉だけでは大きな葉や茎の割合が多くなり、新芽の割合が少なくなります。早春の特別な香りのある新芽や若葉を足す、「採辧春尖」、「加重萌芽」、「精工燻揉」と呼ばれた高級茶作りの技術には伝統があり、1950年代の傑作「紅印圓茶」にも採用されています。
+【早期紅印春尖散茶】

易昌號大漆樹圓茶04年と真淳雅號圓茶96年
易昌號大漆樹圓茶04年と真淳雅號圓茶96年
易昌號大漆樹圓茶04年と真淳雅號圓茶96年
易昌號大漆樹圓茶04年と真淳雅號圓茶96年

甘味
渋味
とろみ
酸味
苦味
香り
熟成度
●●●●○
●●○○○
●○○○○
●●○○○
●●●○○
●●●○○
●○○○○
●●●○○
●●●○○
●○○○○
●●○○○
●●●○○
●●●●●
●●○○○
左: 易昌號大漆樹圓茶04年 (このお茶)
右: 真淳雅號圓茶96年
(注意:比較するために、同じ分量、同じ時間で煎じています。そのため「真淳雅號圓茶96年」は濃くなりすぎています。本来はもっと薄く淹れます。)
まず一番に感じる違いは香りです。
香りの強さは「真淳雅號圓茶96年」の特徴です。バニラのような洗練された甘い香りが湯を注いだ瞬間に立ち昇ります。香りの甘さからは想像できないような渋味と苦味が飲む人の舌を刺激して驚きを与えます。そこにこのお茶の凄みがあります。
「易昌號大漆樹圓茶04年」(このお茶)はそれに比べると地味です。野に咲く花のような可憐な香りは、香りと味のコントラストをつくりながらも調和した落ち着きがあります。
香りを差し引いてみると、味はそっくりです。年数が経っている分「真淳雅號圓茶96年」のほうが甘く感じてもよいのですが、むしろその逆で「易昌號大漆樹圓茶04年」(このお茶)のほうが甘味く感じられます。
新芽や若葉が多いほどに香りは強くなり、渋味や苦味の刺激が強くなります。逆に大きめの葉や茎の多いほどに香りは弱くなり、刺激的な渋味や苦味も少なく、甘くまろやかに感じます。
「易昌號大漆樹圓茶04年」(このお茶)は、茶農家が早春の一芽三葉から足しも引きもしないそのままで製茶して餅茶にした品です。香りと味のバランスは自然のままです。
「真淳雅號圓茶96年」は1950年代までの茶荘の高級茶作りの再現で、香りと味のバランスを調整するための新芽や若葉がブレンドがされ、茶荘の意図した風味が作られています。
この2つの異なるお茶作りはそれぞれに歴史があり、1950年代以前の茶荘の號級の品にも、2つの異なるお茶作りが見られます。
プーアール茶の場合は長期保存の段階でも保存環境を工夫して風味を作ることができるため、メーカーから出荷された時点でお茶作りが完成するわけではありません。しかしこの源流で二分するお茶作りの違いが、メコン川と長江を分けるように、最後まで流れを分けることになるとも言えます。

もうひとつの飲み比べ
大漆樹の2009年春摘みの一芽三葉の茶葉
易武山の大漆樹の2009年春摘みの一芽三葉の茶葉です。
同じ茶園の同じ製茶ではありますが、5年の歳月と、茶摘の時期の違いが風味に現れています。
易昌號大漆樹圓茶04年と大漆樹の餅茶2009年
易昌號大漆樹圓茶04年と大漆樹の餅茶2009年
易昌號大漆樹圓茶04年と大漆樹の餅茶2009年
易昌號大漆樹圓茶04年と大漆樹の餅茶2009年
易昌號大漆樹圓茶04年と大漆樹の餅茶2009年
左: 易昌號大漆樹圓茶04年 (このお茶)
右: 大漆樹青餅09年
まず色の違いがはっきりとしています。2004年のこのお茶はまろやかになって、さらに老味が少し加わっています。加わるというよりは、むしろ無駄が削がれて純粋になってゆく方向です。枯れた風味のなかに鮮やかな一点が生きています。
2009年のお茶には味にややエグ味があり、渋味や苦味が鈍い感じがします。この違いは熟成によるものだけではなく、持って生まれたものの違いもあります。まったく同じ茶園の同じ茶樹の茶葉でも、茶摘の時期がたった10日違うだけで香りは異なります。一芽三葉から足しも引きもしないそのままで製茶した茶葉で作られた餅茶は、むしろそうした違いに注目してみるのも楽しみのひとつでしょう。

易昌號大漆樹圓茶04年
易昌號大漆樹圓茶04年
易昌號大漆樹圓茶04年
包み紙はところどころ破けています。七枚でお申込みの場合は、竹の皮包みをそのままお付けしますが、竹ひごの結びがゆるんでいます。
また包み紙や餅面に竹の粉がついてます。これは竹の籠や竹の皮を齧る虫が残したものです。品質を悪くするものではありません。あらかじめご了承ください。

易昌號大漆樹圓茶04年
易昌號大漆樹圓茶04年
易昌號大漆樹圓茶04年
夏は冷たいのも美味しいです。
少し濃いめに煎じたのを、コップいっぱいの氷で割ってください。

このお茶について新しい情報などあればまたこのページに情報を追加してゆきます。

易昌號大漆樹圓茶04年 1枚 約360g

茶葉の量のめやすは以下をご参照ください。
+【5gの茶葉でどのくらい飲めるか?】

保存方法については、以下のコーナーをご参照ください。
+【プーアール茶の保存方法】


つぎにこのプーアル茶はいかがですか?
沈香老散茶50年代
+【このプーアール茶のページ】


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