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お茶の味の鑑賞

プーアール茶は様々な顔をもつお茶です。
産地の違い、製茶の違い、そして保存熟成の違いからくるバラエティーな味わいがあります。
お茶づくりの微調整による「緑茶」・「青茶」・「紅茶」の性質。
微生物発酵による有機質な豊饒の味わい。
50年も熟成されたことによる枯れた風味。
いろいろな印象をどう捉えるか? 鑑賞力が問われます。
このページは、ブログ『茶想』に書いた過去の記事をもとに編集し、お茶の味の鑑賞をテーマにしました。


■生茶の「生」

プーアール茶には「生茶」と「熟茶」があります。
いずれも原料は農家で仕上げる「晒青毛茶」と呼ぶもので、その製法は簡単に言うと、炒って、揉んで、天日干して仕上げたものです。
このつくり方は緑茶に近いものです。

プーアール茶の味の鑑賞

熟茶はこの後に麹菌などによる発酵工程があるので質は大きく変わり、「黒茶」に分類されますが、生茶は「晒青毛茶」を圧延加工したもので、原料から大きく質の変わるものではありません。なので「緑茶」と分類されます。
それなのに、生茶はなぜ「緑茶」と呼ばないで、あえて「生」という字で表すのか?というのが今回の話題です。

生茶の製法、つまり晒青毛茶の製法がいつの時代に確立したのかは定かではありませんが、世界の茶樹の原産地ともされる西双版納の歴史をたどると、山岳少数民族の瑶族(ヤオ族)の存在が浮かび上がります。
このことについては、当店のお茶『漫撒古樹青餅2013年プーアル茶』の紹介ページにて詳しく書いています。
【漫撒古樹青餅2013年プーアル茶】

瑶族が山でお茶をつくり、漢族が売る。
都市生活を築いた漢族は、喫茶文化を早くから発達させ、交易品として遠くの国々へ運んび、お茶を商品へと成就させました。
茶を取引する漢族の商人にとっては、雲南省の瑶族がつくる生茶だけでがお茶ではありません。四川の緑茶、湖南の黒茶、広東の青茶、と様々な選択肢があったことでしょう。
そう考えると、まだ馬でお茶を運んでいた時代に、雲南省の辺境地のお茶は山から都市へ届くのに数カ月。さらに海を越えるとなると1年も2年もかかっていました。おのずと長期保存に強いお茶であることが求められます。

お茶をつくる側からすると、旬の新鮮味を留めてそのまま飲む人へとどけられるのが理想です。それはつまり緑茶で、しっかり火を入れる製法になります。しかし西双版納のお茶葉それが叶いませんでした。都市へ届くまでに風味は劣化し、場合によっては腐敗します。そこで考えられたのが、変化を許す「生」の製法です。
「長期保存できる」=「味が変わらない」というのではありません。変化を許すことで飲む人にはいつも異なる印象を与え、劣化を感じさせません。
易武山のお茶はほんの2年ほどで赤黒く変色してゆきます。この変化に、劣化しにくい性質のできることを昔の人は発見しました。

20年モノ、30年モノ、50年モノと、食品では珍しい賞味期限の限界のないものとなり、世界のお茶ファンはこの老味の楽しみを受け入れました。


■枯れた味わい

一般的な食品で50年も経ったものが尊ばれることはありません。
しかし、プーアール茶にはあります。
古いお茶の美味しさとはなにでしょうか?

美味しさはどうしても食欲とつながっています。
栄養価の高いものであったり、劣化や腐敗していないものであったり。すなわち美味しいものは体が欲しがる現世的なものです。
しかし、それだけではない「美」の世界があるのかもしれません。

プーアール茶の味の鑑賞

プーアール茶の味の鑑賞
写真:『沈香老散茶50年代プーアル茶』

食欲の煩悩から味覚を解き放ち、もっと遠いところへ。
そう考えて、先人は可能性を探ったのではないでしょうか。

年代モノのプーアール茶の枯れた味わいは、そこで見つけられた「美」のひとつだと思います。
50年も熟成した味は、水墨画のように色彩を失い、襖絵のようにほとんどを余白が占領しています。栄養価値もそれなりに失われていることでしょう。

それにもかかわらず、枯れた味わいは心に響きます。
水墨画の評価は、線がより多いとか複雑とか、濃淡の幅があるとかないとか、そんなふうに量で測られることはありません。
お茶の味にも美の多様性のあることを、枯れた味わいは証明しました。


■無い味

西双版納に春が来ると、
茶荘の主人たちはあっちの茶山こっちの茶山へと足をはこび、これぞと思う晒青毛茶(プーアール茶の原料となる茶葉)を集めます。
茶荘はたいがい個人経営ですが、中には大手茶廠(メーカー)のオーナーや不動産会社の社長が道楽にしていて、自らの手で少量の毛茶を集めては餅茶(円盤型の圧延茶)にして、そっと販売していることもあります。

そういう人たちはきまって「易武山」のお茶を追いかけます。

易武山プーアル茶

易武山のどの有名寨子(古い集落)を選んだとか、
山のどのあたりに古い茶樹が残っているとか、
製茶の腕のよい農家があるとか、
茶摘みを一芽二葉に注文したとか、
いろいろ言うのですが、しかしこの香りがあれば良いとかあの味がしたら良いという明確な基準はありません。

ではいったい彼らは何を目指しているのか?
おそらくそのひとつは「無い味」です。
易武山のお茶は、どういうわけか味が一つか二つ欠けて無いのです。
ひとくちめは、おや?っと思うほど味がしないことさえあります。

空白は無意識の心に通じます。
人はその空白に幻を見てしまいます。
幻を美味しく感じるのは、人の心が夢見ている味だからです。

易武山のプーアル茶

「無い味」を求めるお茶づくりはわかりやすい味や香りを嫌います。
なんらかの主張があってもいけません。
まさにそれは「生茶」の「生」の核心に迫ろうとしているはずですが、
しかし、ふと我に帰ると、作り手もまたほんとうはそこに無いものを見ようとしているような気がしてくるのです。


■野生の棘味(とげあじ)

自然林には厳しい生存競争があります。
しかもそれが亜熱帯の密林ともなれば、生きるために他を殺すような闘いが日常的に繰り返されています。
プーアール茶の古茶樹は山の高いところにあり、その涼しい気候ゆえに亜熱帯地方といえども虫や細菌による害は少ないのですが、それでも自然林に近い状態にあるので、生きるための闘いは厳しく、そしてそのことがお茶の味に関わっています。

緑の王国

生きるための闘い方や武器は植物によって様々ですが、耐え忍ぶことにおいて茶樹にかなう植物はないでしょう。
森の薄暗がりにひっそりと生きている野生茶樹は、周りのどんなに大きく育った樹木よりもずっと長寿でいることが多いのです。樹齢800年以上と推定される古茶樹が西双版納にはあります。かんばつのときも、冷害のときも、水害のときも、じっと耐えてまわりの樹木が先に死んでゆくのを待ちます。

西双版納野生茶樹
写真:西双版納巴達山 野生茶樹

生存競争は植物同士だけでなく、虫や鳥や小動物、そして見えない微生物との闘いもあります。お茶の樹が長寿でいられる理由のひとつは、それら多くの生き物にとって苦手な成分をまとっているからです。カテキンやカフェインなどの代表的な成分がそのひとつです。他の生き物にとっては見えない棘みたいなものなので、これをお茶の味にからめて「棘味」(トゲアジ)と表現してみることにします。
どういうわけか、人間はこの棘に鈍感です。
それどころか、その渋味や苦味を爽やかで美味しいと感じたり、カフェインのゆるやかな覚醒作用にとりこになっています。
もちろん、飲みすぎると胃を刺激しすぎたり、カフェイン酔いで不快になったりすることもあります。少しは棘が効いていることになるでしょうか。

易武山虫食いの茶葉

写真:西双版納易武山 古茶樹の虫食い

棘味は茶樹の免疫力のようなもので、厳しい生存競争に晒されるほどその成分が多く分泌されるようです。雲南大葉種の味わい深さ。しっかりした渋味・苦味はそういう環境で育った品種の特性とも言えるでしょう。

易武山の毛虫
写真:西双版納易武山 茶葉と毛虫

棘味は「もろ刃の剣」となります。
例えば、葉がそのまま落ちて足元に積もると、土の下で根と共同生活している微生物たちを負い出して、自らの首を絞めかねません。
そこで、酵素という成分を茶葉につくっておいて、枝から離れたらすぐにその分解作用で棘の効果をなくして枯れ葉にしようとします。植物なりの知恵です。
この酵素による変化を利用して、緑茶をつくったり、烏龍茶をつくったり、紅茶をつくったりします。

易武山の古茶樹
写真:西双版納易武山 半分枯れている古茶樹

古茶樹のお茶には棘味が多いと言いました。
プーアール茶の原料としてこれを農家が製茶すると、「晒青毛茶」と呼ぶ天日干しで仕上げる緑茶に近いものになります。「晒青毛茶」の特徴は、火入れが短時間であることです。「生茶」と呼ぶのもこのためです。
生茶には棘味がまだ生きています。
そのため、かつてこれを好んで飲んだ人々は、10年も20年も熟成させて、まろやかになったものを好みました。
逆に言うと、そんなに長期間保存できるのは、保存に強い成分が棘味にはあるということかもしれません。

易武山の古茶樹
写真:西双版納易武山 茶葉の少なくなった古茶樹と老人

棘味は「茶気」と表現されることもあります。
味として淡泊でも、口に含んだ瞬間に感じる強い印象。飲んでしばらくして身体に血がめぐって風呂上がりのようなふわふわとした酔い心地。
古茶樹のお茶には、棘味のもたらす体全体で感じる味わいがあります。

野生茶樹
写真:西双版納巴達山 枯れた野生茶樹


■天然のブレンド

まずはこの写真から。

2010年生茶プーアル茶3種

左:「易武古樹青餅2010年プーアル茶」
中:「巴達古樹青餅2010年プーアル茶」
右:「南糯古樹青餅2010年プーアル茶」

上の3つのうちで、易武山の餅茶は他の2つに比べて色とりどりの茶葉があります(写真ではちょっとわかりにくいかもしれません)。実際に易武山の古い茶園には色や形の違う品種が混生状態になっています。
品種の混生状態は、昔ながらの栽培によるものです。
茶樹は花を咲かして実をつけて種を落して苗になると、母樹とは少しだけ違った性質をもつようになります。
このことが延々と繰り返されてきた、世界で最も栽培の歴史が古いとされる西双版納の茶樹には品種のバラエティーがあります。

易武山古茶樹の茶葉

易武山の古茶樹の茶葉

写真:易武山麻黒大漆樹の茶葉

この写真は易武山の農地の茶葉ですが、見てわかるように色違いの品種があります。その他にも葉の形や大きさがちがうものがたくさんあります。
参考ページ
【易武山 品種のオアシス】

易武山周辺はとくに品種のバラエティーが豊富なのですが、その理由は特殊な気候にあります。周辺の山の低いところに熱帯雨林の多いこの地域は、山の高い位置にまで湿気が運ばれてくるので、年中安定した気温と湿度を保ちます。そして、そんな環境でしか生息できない特殊な品種が数多く育ってきたのです。

2010年生茶プーアル茶3

左:「易武古樹青餅2010年プーアル茶」
中:「巴達古樹青餅2010年プーアル茶」
右:「南糯古樹青餅2010年プーアル茶」

西双版納は、孟海県の布朗山や南糯山にも古い歴史があり、混生品種の栽培がつづいていますが、易武山よりも気温の変化の大きくなるやや乾燥した気候により、そこで生息できる品種はやや少ない傾向があります。

3つのお茶を比べると、易武山のは茶湯の色からして違いが現れています。
しかし、味のどこが違うというのは明確に言えません。
品種のバラエティーがあるほどに、味はいろいろな印象をもつことになり、さらに、何度飲んでも異なる印象を感じることがあるからです。このことを「ゆれる」と当店では呼んでいます。

それもそのはずで、 1シーズン3週間ほどの間に行われる茶摘みから製茶までの過程において、品種を完全に混ぜ合わせて均質化するお茶づくりは難しいのです。部分的に偏ったままになって、その一部を煎じて飲むので、飲むごとに味はちがう結果となります。

また、品種のバラエティーがあるほど、味覚の錯覚を誘発しやすいところがあるようです。
例えば、「ロングアイランド・アイスティー」というカクテルは、紅茶をつかわないのに、いくつかのリキュールなどを混ぜ合わせて紅茶の味をつくります。プリン+醤油=うに。アボカド+醤油=大トロ。味覚はかんたんに騙すことができます。その味覚の性質が易武山のお茶を魅力的にしていると言えるかもしれません。

易武古樹青餅2010年プーアル茶

写真:易武古樹青餅2010年プーアル茶

易武山の茶葉でつくられた過去のビンテージプーアル茶の鑑定に、茶葉の色に注目することが有りました。例えば、「厚紙8582七子餅茶」には粗いベージュ色の茶葉がまじっているのがホンモノを見分けるひとつの鑑定ポイントでした。書籍にはその色は数年寝かした「陳年茶葉」を混ぜたものだと書かれていましたが、今から考えると、これは品種による色ちがいの茶葉のものです。

いずれにしても、近年新しく開拓された茶畑の農地は、品種管理された苗から育てられ、実生での繁殖がゆるされません。品種のバラエティーが豊富になることはありません。
西双版納の昔ながらの栽培を見分けるポイントとして、餅茶の餅面に現れる色に、品種のバラエティーがあるかどうかを見るのは、ひとつの目安になります。

7582大葉青餅70年代プーアル茶

写真:「7582大葉青餅70年代プーアル茶」

大量生産方式が普及している現代のお茶づくりにおいては、産地・季節・品種・製法などの異なるものをブレンドして、お茶に新たな魅力をつける手法が普及してますが、考えようによっては、西双版納の古い農地のお茶はそもそも天然のブレンドだったといえるでしょう。



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