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厚紙8582七子餅茶プーアル茶

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8582七子餅茶プーアル茶
8582七子餅茶プーアル茶

厚紙8582七子餅茶プーアル茶 1枚 約310g
2007/07/02 終了

製造 : 1985年
茶廠 : 雲南孟海茶廠
茶山 : 西双版納孟海地区
茶樹 : 大葉種 喬木
茶葉 : 表3~4級、裏5~8級
工程 : 生茶
包紙 : 厚綿紙タイプ
倉庫 : 香港乾倉ー台湾常温乾倉

甘味
●●●●○ 穀物のような甘味
渋味
●○○○○
とろみ
●●●○○
酸味
●●●○○ 西双版納大葉種の酸味
苦味
●●●○○
香り
●●○○○ 橙香、樟香、蘭香、花蜜香
熟成度
●●●○○ 倉庫での熟成やや強め

今はなき香港の名茶商、「南天公司」監修のお茶です。
西双版納の大きな茶葉でつくられた、大葉青餅の代表格です。まろやかで強い旨味。柑橘類を想わせる爽やかな香り。1980年代の傑作です。

■このお茶の由来
「茶藝プーアール壷藝N0.13」の特集記事「8582特集」を参照しています。
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1985年の2月、雲南省の各有名茶廠(孟海茶廠、昆明第一茶廠、下関茶廠などが、倉庫の片隅に放置している堆積茶葉をいっせに整理しました。そのときに孟海茶廠の倉庫の隅に置き去りにされていた散茶が見つかりました。散茶とは、茶葉がまだ成型されていない、バラバラの状態のものです。緑茶と同じように酸化発酵を止めた晒青毛茶を倉庫に寝かし、緩慢な成分の変化でまろやかになるのを待ちます。

(雲南のメーカーの倉庫で寝かされている陳年茶葉)
これを「陳年茶葉」と呼びます。陳年茶葉を使って固形茶をつくる手法は、1950年以前の民営の茶荘によるお茶作りが栄えた頃に、すでに取り入れられていた記録があります。また、1950年代の印級のお茶作りにも、陳年茶葉が利用された記録があります。1970年代には、陳年茶葉をブレンドした名作「7582大葉青餅プーアル茶」が作られています。
さて、1985年の2月に倉庫から出てきたその茶葉は、野生モノと思われる大きな葉なのですが、お茶の葉なのか、それとも他の植物の葉なのか、孟海茶廠では判断がつきませんでした。

8582七子餅茶プーアル茶
8582七子餅茶プーアル茶
8582七子餅茶プーアル茶

そこで孟海茶廠は、緑茶の里、杭州の研究所に鑑定を依頼しました。その結果、山茶属(椿属)の茶の樹のもの、つまりいわゆるお茶の葉であるということがわかったそうです。
香港の貿易商の南天公司が、1985年に雲南孟海茶廠にオーダーし、この陳年茶葉をブレンドした餅茶に成型し、茶号「8582」の名がつけられました。このとき南天公司は、 「粗壮」茶葉で餅茶を作りたいと要望したのですが、茶廠の方は「粗壮」と「粗葉」の意味を間違えたらしく、「粗葉」の8級、9級の茶葉を使用しました。 ちなみに「粗壮」とは春摘みの厚みのある茶葉のことです。
それから2年後の1987年に香港へ移され、「南天公司」からこれを仕入れた「林奇苑」などの茶商の倉庫を経て、1993年に台湾の「永泰茶行」にわたり、2001年から別の台湾の茶商の倉庫に入って、2004年の秋に上海に届いています。
南天公司については、「天字沱茶90年代初期」の紹介ページに詳しく書いていますのでそちらをご参照ください。
+【南天公司・天字沱茶90年代初期】

ここまでのストーリーが本当であると、いかにも南天公司がオーダーし、1985年に初代「8582」という茶号のお茶が出来上がったように聞こえますが、「茶藝プーアール壷藝」を出版する五行圖書出版社のその後の調べによると、この「8582」というのは、実は1975年頃から作られていた「7582大葉青餅プーアール茶」のことであり、南天公司がそれを改名して販売したものであるという説が有力になっています。
+【7582大葉青餅プーアール茶】
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■この茶葉の特徴

一枚一枚の厚みが異なる

竹の皮の包みがはだけている部分から、一枚一枚の厚みが異なる様子が伺えます。 陳化して枯れた柔軟性のない陳年茶葉を、餅茶へと成型しているため、餅身を綺麗に整えるには無理があり、1枚1枚の重量はほぼ同じでも、形がいびつだったり、厚みがそれぞれ違ったりしています。
ここで気になるのが、原料となる「晒青毛茶」として作られたのはいつのことだろう?ということです。餅茶に成型されたのは1985年ですが、すでに散茶の状態で忘れ去られていたわけですから、茶葉の熟成期間としては、もっと古いかもしれません。
もしも「7582大葉青餅」と同じであるとすると、1975年頃にはすでに陳年茶葉として一定の期間メーカーの倉庫で熟成された原料があるということになります。その頃から孟海茶廠では、茶葉をブレンドして作る配方の技術が導入されており、メーカーの倉庫では様々な茶葉がストックされるようになっています。そうすると、1985年には数年経過したような陳年茶葉もあったということになります。

■このお茶の試飲

8582七子餅茶プーアル茶

8582七子餅茶プーアル茶

濃厚な味と香りです。キリットした柑橘系の酸味もあり、ひきしまった力強さのある風味です。「重」と呼ばれる通好みの味です。かすかな薬用人参味もあります。熟成したお茶の苦味は、甘みやコクや酸味をいっそう際立たせ、深みがあります。1950年代の印級の茶葉の風味と似たところもあり、このお茶には1980年代のモノの中でも特別な価値がついています。

葉底8582七子餅茶プーアル茶
葉底8582七子餅茶プーアル茶
葉底(茶葉の煎じたあとのもの)です。
茶葉の厚み、弾力、熟成によって変色した赤味のある色、表面のザラザラした質感と、茶葉の品質、西双版納の旧六大茶山の山の高い位置にある古茶樹の茶葉の特徴があります。表面にイボイボした質感のあるのは、茶商の倉庫での熟成期間中に、金花などお茶を美味しくする菌類の活動が、わずかながらにあった跡です。
茶商の倉庫熟成の完成度が高い茶葉です。

■このお茶の鑑定

8582七子餅茶プーアル茶
8582七子餅茶プーアル茶
「7582大葉青餅」ではないのか?
お客様から、「餅の裏に粗いベージュ色の葉はまじっていますか?」とご質問をいただきました。 ベージュ色の茶葉というのは、枯れた色のことで、つまり陳年茶葉が混ざっているかどうかの判別になります。しかし、この写真ではそれに該当する茶葉があるのかないのか、はっきりとしません。一枚ごとにムラがあるので、他の8582七子餅茶で、そうした茶葉を見たことがあります。
しかし、ベージュの葉の質問は、おそらく「7582大葉青餅」と「厚紙8582七子餅茶」が混同されていることによるものです。「厚紙8582七子餅茶」よりも10年も以前の「7582大葉青餅」には、たしかにベージュ色のように枯れた木の皮のような茶葉が見つかります。
「茶藝プーアール壷藝N0.13」で掲げられた疑問をふまえて解釈すると、以下のようなことが考えられます。
南天公司の扱った「厚紙8582七子餅茶」が銘茶として有名になり、一時期、もっと古い「7582大葉青餅」のほうが安いという価格の逆転が生じてしまいます。そのとき 「7582大葉青餅」を倉庫で保存していた香港の茶商は、「7582大葉青餅」として売るよりも、「8582七子餅茶」として売るほうがより高値で売れるので、「8582七子餅茶」と改名して販売したのではないかと推測できます。
もしも 「7582大葉青餅」を改名したのが「8582七子餅茶」であるとしたら、「7582大葉青餅」も「8582七子餅茶」も実体は同じなわけで、どちらも本物として市場に出回ります。そうすると、「8582七子餅茶」がやけに多いということになり、実際に茶商やコレクターの間からそのような声が上っていました。
南天公司からのオーダーは1985年が最初としても、それより少し古いのや新しい 「7582大葉青餅」が混在するため、包み紙の質やデザインが異なる品が本物として混じることになります。それが余計に鑑定を難しくしてしまう結果となります。茶葉はどちらも本物なわけですから・・・
後にこのことが 「7582大葉青餅」の価値を上げ、現在では年代の古い1970年代の初代「7582大葉青餅」のほうが高い価値となっています。

8582七子餅茶プーアル茶
「厚紙8582七子餅茶」を崩した茶葉からは、なんとなくそれっぽいような枯れた感じの8~9級に相当する粗い茶葉が出てきました。 しかしベージュ色をしたほど陳化したものは、この「厚紙8582七子餅茶」には見つかりません。

手押しの印鑑8582七子餅茶プーアル茶
8582七子餅茶プーアル茶
8582の初期のものであることを判断するポイントはいくつもありますが、外包みの紙は、手作りの厚綿紙が使われています。この紙は86年~89年に使われたもので、それを証明しています。また、初期の紙の色は、ちょっと黄色みがあります。五行圓書出版の「茶藝プーアール壷藝」の8582特集に詳しく写真入で解説されています。



内飛(茶葉にうまっている紙)
「孟海茶廠出品」の文字の「出」は上下の「山」が同じ幅のものです。80年代の一般的なデザインです。

8582七子餅茶プーアル茶
同じ経路で入荷した同じ出所の別の七枚組み竹の皮の筒に入った「厚紙8582七子餅茶プーアル茶」です。
これはメーカーから出荷されてから、まだ一度も竹の皮の包みも紙包みも開けられたことが無いものです。年数を経て、いろいろな場所を渡ってきて、当店ではじめて開けました。一度でも包みが開けられたものは買わない方針でいる茶商もいるようですが、その理由は、一度でも空けた跡があるということは、茶葉を差し替えたり、包み紙を差し替えたりした可能性があるからです。

8582七子餅茶プーアル茶
8582七子餅茶プーアル茶
8582七子餅茶プーアル茶
餅茶の厚みは一枚一枚に異なるのがわかります。今回のはやや厚いめのが多いように見えます。 端っこが崩れたものは、運送中の衝撃で崩れたものです。包み紙は茶虫が食んで穴あきになっています。しかしそれらは商品価値を左右するものではありません。これでも第一期の「厚紙8582七子餅茶プーアル茶」にしては傷みが少ないほうでしょう。
七枚組みの格一枚ごとの重量です。

1枚目
315g
2枚目
315g
3枚目
317g
4枚目
317g
5枚目
294g
6枚目
320g
7枚目
324g

このうちの1枚目と7枚目だけを包み紙を開けて茶葉の様子を見ました。通常、上と下は、外からの衝撃などで形が崩れやすいのと、保存のために置かれた場所によっては、もっとも熟成が進んでいるためです。

8582七子餅茶プーアル茶
8582七子餅茶プーアル茶
第一期の厚紙8582七子餅茶プーアル茶の印のひとつである、粗くて色違いの茶葉が、餅茶の裏面に、前回の七枚組みの筒のものよりは少し多く混ざっているのが見えました。

8582七子餅茶プーアル茶
8582七子餅茶プーアル茶
指の先にある幅のある茶葉がそれです。
新しい茶葉とはちがって、陳年茶葉にはばらつきがあります。

8582七子餅茶プーアル茶
茶虫の跡がある8582七子餅茶プーアル茶
2枚目~6枚目は包み紙を開けないで、いちばん傷みがありそうな一番下の7枚目を開けてみました。
裏面には白い部分がところどころにあります。茶虫の繭(マユ)の跡です。茶虫については別のページに説明しています。
+【茶虫の食んだ跡のあるお茶】

8582七子餅茶プーアル茶
竹の皮の筒を開けたときに、餅茶の端っこの欠けている部分から、こぼれた茶葉を拾い集めて、煎じてみました。 せいぜい2gほどですが、品質を確かめられます。

8582七子餅茶プーアル茶
8582七子餅茶プーアル茶
茶湯の色は濁りのない透明な赤栗色です。味については、上記に紹介している同じ出所のものとの差はほとんどありませんでしたが、あえて言うなら、ややまろやかに感じました。

■新しい8582七子餅茶

8582という製品番号のお茶は、現在も作られていますが、近年のものは、原料となる茶葉の産地が異なったり、陳年茶葉の保存熟成年数が短すぎたりで、この品とは全く異なるものと考えたほうがよいでしょう。

茶葉の量のめやすは以下をご参照ください。
+【5gの茶葉でどのくらい飲めるか?】

保存方法については、以下のコーナーをご参照ください。
+【プーアール茶の保存方法】


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