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丁家老寨青餅2012年プーアル茶 その4

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丁家老寨青餅2012年プーアル茶

■訂茶
それから数日滞在して、丁家老寨のお茶づくりをひととおり経験しました。その間に近所の農家のお茶も何軒か試飲しましたが、やはり昔ながらの仕事をしているこの農家のがもっとも個性あると感じました。
2012年の春の茶葉をオーダーして、餅茶にしてみようと思いました。

丁家老寨青餅2012年プーアル茶

この農家には2か所農地があって、家族だけでは春いちばんを摘みきれないほどの茶樹があります。実際に毎年3割ほど摘み残すそうです。
どちらの農地も茶樹は大小入り混じりです。古くて大きな茶樹ほど当店の求めるおっとりした風味になるので、それを選んでもらうことにしました。大きさの基準はありませんが、だいたい10本に1本の割合の大きな茶樹ということにしました。量は限られますが、当店には十分な量です。

丁家老寨青餅2012年プーアル茶

その他にも注文があります。


この条件で3日間やってみて、結果に見合った価格を決めるということにしました。小さな茶葉だけを摘む「挑茶」のように、著しく収穫効率を落とすオーダーではないので、それほど割高にはなりませんでした。

丁家老寨青餅2012年プーアル茶

このとき3月半ばでしたが、易武山の古茶樹の市場価格はすでに昨年の高値を更新していました。最も高値のつく4月1日頃まであと2週間もあります。しかしどんなにがんばっても、農家一軒でつくれる量には限界があります。そして、良いお茶はいくらになろうと価値を見つけるのが茶商の仕事です。

農家はこのオーダーをこころよく受けてくれました。
たまたま隣の家に、雨の季節でいいから大量に安く買い取るというオーダーが他の茶商から入ったところでした。全体の産量から計算してみるとかなり良い条件ですが、面白くなさそうでした。やはり味の誇れるお茶をつくる喜びというのが農家にもあります。
また、個人的な印象ですが、この農家の労力を惜しまない働きぶりには好感が持てました。ほんとうに良く働き良く食べる、気持のよい人たちなのです。

丁家老寨青餅2012年プーアル茶

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帰りはバス通りまでバイクで送ってもらいました。
すぐにもどって茶摘みをはじめてほしいところです。雨の日が一日中続くようなことがあると終了と決めているので、その日がいつになるかわからないこの時期は、わずかな時間も惜しいのです。

村の入り口に来たところで丁家寨の標識を撮影したいと言うと、それがないと言われました。山の上の老寨の村にもありませんでした。なぜか、隣村の「張家湾」の標識だけがバス通りにあります。
振り返ると、田畑の向こうに山々が見えていて、たしかにあの山に登って丁家老寨へ行ったはずです。このときちょっと狐につままれたような気持ちになりました。
後にわかったことですが、昔は丁家寨がこの辺りでいちばんの村でした。しかし、現在は張家湾のほうが人口が多くなったのです。山の低いところにできるゴム園やサトウキビをつくる農家が増えて発展しました。この地域の稼ぎ頭は、ゴムやサトウキビに移り、お茶の時代は過ぎたのです。

丁家老寨青餅2012年プーアル茶

2012年の春は雨が少なく、2010年のかんばつが再来したようでした。西双版納の景洪市のアパートをベースにあちこちの茶山に出向いていましたが、どこも同じでした。土の表面を少しだけ濡らす程度の雨が一度か二度あったくらいで、とうとう3月31日になりました。
この日くらいから気温がぐっと上がったので、茶摘みを終了するように農家に伝えました。農家はすでに28日に茶摘みを終え、挑黄片をはじめていました。

ちょうど2週間。ずっと天気が良かったので毎日晒干一日仕上げになり、当初考えていたよりも4割も多く毛茶ができました。
「豊作貧乏」というように、産量が増えすぎると一般的な作物は価格が下がるのですが、有名茶山の古茶樹は全体の量が少ないので、豊作でも価格の下がることはありません。結局は昨年よりも2割ほど上がりましたが、この地域の食料品の物価もまた昨年よりも2割ほど上がっているので、それを勘案すると昨年並みの価格と言えるでしょう。

■圧餅
4月4日の清明節が終わってから丁家寨に行きました。
毛茶は想像していたよりも良い出来です。しっかり揉捻されていて、大ぶりの茶葉が小ぶりに見えます。堆積萎凋によって、標準的なものよりも少し赤味を帯びた色をしています。

丁家老寨青餅2012年プーアル茶

頼まなかったのですが、茎の部分を丁寧に取り除いてくれました。そのため丁家老寨の特徴である長い茎がついたままの形ではなくなってしまいましたが、風味はより鮮明に、餅面は美しく仕上がることでしょう。

この毛茶を見て、圧餅(円盤型に圧延成形する)は、易武山でしたいと思いました。圧餅を晒干(天日干し)で仕上げる太陽の香りが、このお茶に似合うと思ったからです。
しかし、易武山のこうした仕事の質にはあまり期待ができません。2010年につくった『易武古樹青餅2010』では計量ミスがありましたが、後になってわかったことは、易武山ではどこでもそんなに大差がないのです。どうやら地域性があるのです。

丁家老寨青餅2012年プーアル茶

丁家寨から近い茶廠や工房を3軒ほどを見学して、そのうちのひとつ、街道にある小さな町の茶廠を選びました。2001年に台湾人の投資によってできた新しい茶廠ですが、1700年代の老舗の名前を継承しています。
そこへ電子秤を自ら持ちこんで、1枚385gを誤差なく量ってもらいました。茶葉を蒸すのに使ういくつかのアルミ筒の重量に約4~5gの差があるのですが、電子秤ならボタンひとつで調整してくれます。

この小さな茶廠、というか工房というレベルですが、とくに乾燥の工程に気を使っているところで、圧餅後の注意点や直射日光を当てる時間配分などを学ぶことができました。突然の雨にも対応できる屋根付きの晒干室もあります。雨の季節が近づいているので、この設備は心強いと思いました。

丁家老寨青餅2012年プーアル茶

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毛茶を持ちこんでから圧延が終わるまで、安い茶葉と差し替えられないよう農家の主人と交代で見張りました。茶廠の老板(オーナー)はそんなことはしないのですが、雇われている工員には油断ができません。
毎日様々な茶葉が大量に集まる茶廠においても、古茶樹の旬の良いものがまとまった量でくることは少ないのです。
ちなみにこの茶廠の自社製品には「野生古樹」と印刷してありながら、易武山から外れた地域の新茶園の量産茶葉を使っていると、老板自ら教えてくれました。当店の持ち込んだ茶葉とは見た目が明らかに違います。しかし、買う人々にはバレることのない嘘なのでしょう。易武山の古樹の製品が安く買えたと喜ばれているかもしれません。
大量に流通するこの手の品には価格競争で負けてしまいますが、仕方のないことです。

4月になってから西双版納には毎日雨が降っていましたが、まだほんの数分の通り雨で、すぐにカラッとした青空が戻ります。晒干中の餅茶は雨の前に屋根の下に移動させたらよいので、まったく問題ありません。
いったん餅茶になってしまえば、差し替えが難しくなります。当店のは標準の357gよりも大きく400gよりも小さい385gで、差し替えできる同じサイズのものがないのです。

丁家老寨青餅2012年プーアル茶

■青空茶席
餅茶を乾燥させている2日間は、ときどき様子を見たり置き場所を移動させたりするだけで、たっぷり時間がありました。
ちょうど漫撒茶山一帯の野生茶のシーズンです。先に話したように野生茶は新芽の出るのが遅いのです。街道の小さな町にはバイクで山から降りてきたりラオスから山越えしてきたヤオ族やラフ族が袋に詰めた毛茶を売り込みに来ています。

街道の町に3軒しかない食堂の軒先に青空茶席ができて、地元の茶商たちがそれを片っぱしから試飲しています。気に入ればその場で即現金買取りです。
外からの持ち込みが途絶えたら、茶商たち所蔵のお茶の飲み比べになります。いずれも易武山や漫撒茶山のお茶です。そこに混じって泡茶を手伝いながら、2日間で15種類は試飲したはずです。
思いがけず仕事を忘れて、お茶の楽しさに浸りました。
ふりかえってみると貴重な体験です。この地域一帯のお茶を同時に飲み比べできる機会はちょうどこの時期だからこそです。一週間早くても遅くてもダメだったと思います。

丁家老寨青餅2012年プーアル茶

丁家老寨青餅2012年プーアル茶

丁家老寨青餅2012年プーアル茶

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「日本鬼子が何しに来た?」「メシメシ!バカヤロ!」
とからかう地元の茶商の親父たちとだんだん打ち解けてくると、
「ちょっと飲んでもらいたいのがあるんだけどね」
と言いだして、鍵のかかった倉庫からなにやら取り出してきました。写真はありませんが、赤黒く変色してよく揉捻された小さな茶葉で、どこかで見覚えのある感じでした。
「どこのお茶ですか?」
「1980年代の麻黒の散茶。しかし我々は老茶を知らないのであなたの意見を聞かせてほしい。」

湯を注いだ瞬間の香りでわかっていたのですが、本物でした。ひとくちしてみるとすぐに思いあたる味。ずばり『73青餅7542七子餅茶』そのものです。
【73青餅7542七子餅茶プーアル茶】
「どこで入手したのですか?香港それとも台湾?」
「そんな遠いところへ行ったことはないよ。なんせまだ海も見たことのない山猿だから。石屏県の親戚が少し分けてくれた。彼は昔に易武郷で茶商をしていてね。」

この散茶が麻黒産とわかったことは大きな収穫です。やはり、1980年代には麻黒ではすでに庭木のように整える切戻しや剪定による栽培が行われたということです。そうでもしないと、春いちばんの小さな茶葉は収穫できません。そして孟海茶廠は昔これを使って「小葉青餅」のシリーズをつくったのです。
丁家寨の農家の主人は、この葉底(煎じた後の茶葉)を見て、
「こんなに小さな茶葉はうちではできない」
と言いました。
昨年当店がこれを目指してつくった『易武春風青餅2011年プーアル茶』よりも、もっと小さな茶葉だったので驚きです。

ぐらっと脳がゆれるような美味しさでした。
15種類は飲んだと言いましたが、色が出なくなるまで青空茶席のみんなで飲みきったのはこのお茶だけでした。他のは茶酔いを防ぐために、ひとくちふたくちして終わりです。
やはり麻黒の茶葉はこの方向ですごいお茶がつくれるのです。それが確信できて嬉しくなりました。ただ現在はそれをまともにつくると高くなりすぎて売れないだけです。

青空茶席で他に印象に残ったのは、「ラオス東瓜林の春茶」・「刮風寨の春茶」・「刮風寨野生モノ2003年の餅茶」・「弯弓の野生モノの春茶」・「弯弓の2001年の餅茶」・「象明旧柞門の春茶」・「丁家寨野生モノの春茶」などです。
「弯弓の野生モノの春茶」は、近年この漫撒茶山の地域で最高値をつけています。ヤオ族が持ってきましたが、もってくる人の異なる3つを試すことができました。弯弓は近くに集落のない山奥なので、山小屋に鉄鍋を持ちこんで仕事をしています。そのため殺青の技術がいまひとつで、素材は良くても残念なのが多いのです。

その中で、ひとつだけすばらしく良いのがありました。同じ人がつくれるのは1日でたった2.5キロ。雨の季節が近づいているので、この数日だけがチャンスとなると、まとまった量は集まりません。餅茶にするには少なすぎます。
かといって、別の人のを混ぜ合わせるとクオリティーが下がります。
結局その問題をつきつめると、丁家老寨のように手を加えて春を早く収穫する栽培が、ひとつの回答なのかもしれません。

丁家老寨青餅2012年プーアル茶

丁家老寨青餅2012年プーアル茶

丁家老寨青餅2012年プーアル茶

2日後に圧餅が完成し、七子餅茶(七枚一組竹皮包み)になりました。車を手配して景洪市の町に運びました。
これからじっくり品茶します。

■その5 品茶 (つづき)
【丁家老寨青餅2012年プーアル茶 その5】


丁家老寨青餅2012年 1枚 380g


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