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丁家老寨青餅2012年プーアル茶 その2

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丁家老寨青餅2012年プーアル茶

■采茶
翌朝、丁家老寨の農地を目指してバイクで山を登ります。
上へゆくほど空気が冷たく寒くなってきて、途中で上着をはおってさらに上を目指します。道のり10キロ、高低差約800メートル、海抜約1600メートルあたりから上に農地があり、最頂部は1890メートルに達します。

丁家老寨青餅2012年プーアル茶

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山には原生林が多く残っています。西双版納の山々はいろいろ尋ねましたが、どの山よりもずっと原生林の多い感じがします。空気のしっとりしているのが肌でわかります。農家の主人の言うように、人口が少なく手つかずの土地が多いのかもしれません。抜群の生態環境です。

上へゆくほど遮るものがなく視界が広がってきました。
30分ほどで到着した農地は想像していたものとは少し違いました。

丁家老寨青餅2012年プーアル茶

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しっかり雑木が間引かれて採光が確保され、後ろに迫る鬱蒼とした原生林とは対照的に見えます。
易武山の麻黒地区に比べると、地面の土色が目立ちます。それに、妙に茶樹が貧相に見えました。 昨日飲んだお茶の印象からは、森の中のもっと野生的で大きな茶樹を想像していたのです。
一般的に茎の長く育つのは、緑の生い茂った水気のあるところの茶樹で、しっかり手入れされて乾いた土の斜面のものではないのです。

丁家老寨青餅2012年プーアル茶

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さらに、茶樹に近づいてみると、その異様に気がつきました。
枝が細長くひょろひょろとまっすぐ上へ伸びています。全体的に茶葉が少なくボリュームがありません。他の茶山の古茶樹に比べるとやや小さく見えます。しかし中には梯子を掛けたり木登りしなければならない背の高い茶樹も混じっています。

丁家老寨青餅2012年プーアル茶

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品種が違うのかと思うくらいですが、それでもこれは麻黒地区のと同じらしいのです。きれいに剪定された庭木のような麻黒地区の仕立てを見慣れているので、このひょろひょろした枝ぶりには違和感があります。
しかし、葉の形や色の違う茶樹が混生しているところなど、よく見ると共通した特徴もありました。

農家の主人が解説してくれました。
「まず根元を見てください。」

丁家老寨青餅2012年プーアル茶

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「いくつもの細い幹が集まったように見えますが、これは土に隠れているところで一本になっています。」
たしかに細い幹が何本にも分かれています。貧相に見えるのはこのためもあるのでしょう。
「この仕立て方は、いつからはじまったのですか?」
「わかりませんが、先祖代々こうしていると思います。ちなみに私の家系は七代目です。丁家老寨では過去に政府の指導による切戻しは一度もなかったはずです。昔から自主的にこうしていたのです。」
「なぜこんなふうに仕立てるのでしょう?」
「それは茶摘みの手法に理由があります。」

丁家老寨青餅2012年プーアル茶

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「枝を手元に引き寄せて、こうして指ではさんで枝に沿ってくっついている茶葉をこすり取ります。摘むというよりは、こすり取る感じです。
新芽や若葉だけは指に残して、 成長して硬くなった葉は地面に落します。こうしてなるべく枝に茶葉を残さないようにします。」

丁家老寨青餅2012年プーアル茶

「こうすると枝分れが少なくて、一本一本がしなやかに細長く伸びてゆきます。茶摘みの時は枝を曲げて手元に寄せますが、それでもいつか手が届かなくなります。そうなったら下の方から切り戻します。
だいたい10年に一度くらいです。このようにするので、根元のほうから枝が細いままになります。」

「枝分かれを少なく保ち、葉の数を減らすと、新芽に栄養が集中します。だから丁家老寨の葉は大きく開いて茎が長くなりやすいのです。今年もまた春のかんばつで乾燥していますが、その割に茶葉は大きく育っています。
大きくても、一本の樹に育つ葉の数が少ないので、風味はしっかりしています。また、葉を少なくしたほうが、茶樹を健康に保てるとわれわれは考えているのです。」

丁家老寨青餅2012年プーアル茶

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これまで知らなかった栽培方法です。
現在の栽培の工夫といえば、生産性を高めることばかりが目的となっていますが、この丁家老寨の工夫は、風味を高めることが目的です。

西双版納の茶山には世界的にもまれにみる自然栽培が残っています。南糯山や布朗山に見る大きな茶樹が人気を呼び、その野生的なイメージが定着したために、易武山の人工的な仕立て方は産量を増やすために近年改良されたのだと盲目的に批判する声さえあります。
しかし、丁家老寨のこの農家が7代目ということは、少なくとも200年以上前からこのやり方が保たれていたことになります。

根元に隠れている幹の太さはかなりのもので、樹齢は本当に古いのでしょう。500年以上と推定されるものもあります。
もちろん無農薬・無肥料。この農家ではずっと同じやり方です。
地面に下草がないのは、乾季の乾ききったタイミングで鍬入れをして、今はまだ雨の降らない早春だからです。

栽培手法について続けて質問しました。
「わざわざ葉を落したり枝を切り戻さなくても、野生に近い状態に放置していたら葉の数は自然に少なくなりますよね。成長もゆっくりだし、風味は濃くなるのではないですか?」
「そっちの茂みに野生化したのがありますから、それと比べてみましょう。」

丁家老寨青餅2012年プーアル茶

「野生化した茶樹は枝を増やし、茶摘みをしないので成長した葉をたくさんつけたままになっています。鍬入れもしないので、新芽の出てくるのが遅くなります。4月の雨の降る季節に近づいてからやっとたくさん出てきます。それを待つと、早春の風味を逃します。少しだけ新芽があるので、これを齧ってみてください。」

味を比べてみると、たしかに野生化したのは精彩に欠く感じがしました。香りが鈍く苦味が強くあります。それに比べて栽培の若葉は香りが華やかで甘く感じます。

これは西双版納の気候によるところが大きいのですが、春の季節の気温が上がり、雨の多くなるのが早いので、旬のタイミングが短いのです。
気温が低く雨の少ない早春の風味が旬とすれば、人が働きかけて、新芽が少しでも早い時期に出てくるように促さないといけません。
茶樹の仕立て・鍬入れ・茶摘み、これだけの技術によって春の旬を表現する、丁家老寨のお茶は栽培の芸術と言えるでしょう。

丁家老寨青餅2012年プーアル茶

丁家老寨青餅2012年プーアル茶

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茶樹と茶樹の間隔は2メートル以上確保されています。ここまで余裕があるのは、易武山の他の農地では少ないことです。
この栽培方法を可能にしているのは、丁家老寨の人口の少ない割に農地が広いことでしょう。農家の主人の言う通りです。

茶樹一本当たりに育つ茶葉の数量を制限すると、茶樹の本数を増やさなければ、農家の経営が成り立ちません。しかし、狭い土地に茶樹を密集させて植えると、風味が薄まります。広い農地はその矛盾を解決しています。年間の収穫量は、麻黒地区の農家とそう大差ないそうです。
丁家老寨の茶葉は、ふんだんな土を与えられた、贅沢なお茶です。

丁家老寨青餅2012年プーアル茶

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午前中いっぱい茶摘みを手伝って、小屋で一休みしました。
「お昼ご飯です。食べてからちょっと休んで、 村へゆきましょう。」

しっかり栄養を摂るお弁当で、茶摘みの重労働をねぎらいます。
もち米のおにぎり・冬瓜豚の燻製・青菜の漬物・牛の塩漬け肉と山菜のスープ。竹筒で煮たお茶は、この山の黄片(売り物にならない茎や大葉)です。

■その3 老寨 (まだつづきます)
+【丁家老寨青餅2012年プーアル茶 その3】


丁家老寨青餅2012年 1枚 380g


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