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【オリジナルのお茶の記録】


紫・むらさき秋天紅茶2011年 その2

murasaki qiu tian hong cha

巴達古樹紅餅紅茶

■紅茶づくり
2011年の秋は「紅茶」を試したいと考えていました。
それは西双版納孟海県の南糯山で、古いメーカーの跡地を見学したことがきっかけでした。
【南糯山の老茶廠】 (写真ページ)

西双版納でのメーカーとしての歴史がもっとも古く、規模も大きかった可能性があります。イギリスとの合資で国民党の資本が入っていたため、1950年代に解体されました。現在は建物だけが山間に残されています。

そこでつくられたお茶は紅茶や緑茶と聞いていたのですが、 建物の中を覗くと、茶葉を軽発酵させる大きな箱がならんでいました。紅茶をつくるための設備です。何棟かの建物すべてが紅茶のためにあり、それには驚きました。プーアール茶のメーカーとは明らかに異なるつくりです。

紫・むらさき秋天紅茶2011年

南糯山の老人の話では、茶葉が収穫できる季節はほぼ毎日ここに鮮葉を持ち込んでいたそうです。
近年の西双版納はプーアール茶一色になっていますが、かつてはこの土地で様々なお茶がつくられていました。質の良い茶葉と辺境の地の利を生かして、産地偽装品や密輸品もかなりの量があったはずだと当店では推測しています。

雲南大葉種の大きく厚い茶葉でこの幻のメーカーはどんな紅茶をつくっていたのか?秋の旬にはどんな風味の紅茶ができたのか?興味が沸いてきました。

紫・むらさき秋天紅茶2011年

紫・むらさき秋天紅茶2011年

紫・むらさき秋天紅茶2011年

■収茶
秋の紅茶づくりに選んだ茶山は巴達山の曼邁寨です。
南糯山とおなじメコン川の西側、孟海県に属する茶山で、紅茶づくりは昨年春の『巴達古樹紅餅2010年』で実績があります。
【巴達古樹紅餅2010年紅茶】

山の高い海抜1900メートル付近の森の古茶樹のお茶は、透き通った風味としっかり後味に残る滋味が特徴です。

午後に曼邁寨の森に入って、その日摘まれた鮮葉をその場で買い取ります。一定量が集まったら車に積んで、賀松寨の製茶場にひきかえします。

ところが、先に話したように、古茶樹の森に茶摘みの人が見つかりません。新芽や若葉が少なすぎるのです。
さらに森の奥のほうまで足を踏み入れてみると、やっと旬の新芽や若葉がみっしりある茶樹がたくさん見つかりました。摘み手さえあればなんとか集められそうです。

紫・むらさき秋天紅茶2011年

紫・むらさき秋天紅茶2011年

紫・むらさき秋天紅茶2011年

曼邁寨の古茶樹は1970~1980年代にかけて孟海県の研究所の指導によって切り戻しされているので、背丈は南糯山や布朗山の老木のように高くはありませんが、幹の太さをみるとそこそこのものです。

樹齢300年前後の茶樹が多くて、400年以上あると思えるのは少ないので、古い茶山が他にいくらでもある西双版納では、まだ若いほうだと言えます。
古茶樹の樹齢と山岳民族の村の歴史とはほぼ一致します。つまり曼邁寨の歴史はまだ300~400年くらいで、このあたりのもっと古い村に比べたら若いことになります。
しかし、ここの茶葉でつくるお茶には爽やかさがあり、高級茶の原料として人気が集まっています。

紫・むらさき秋天紅茶2011年

紫・むらさき秋天紅茶2011年

曼邁寨の村へ引き返して農家を尋ねてみると、製茶場に摘みたての鮮葉が筵に広げられ、殺青(炒る工程)を待っていました。生茶のプーアール茶づくりのもので、茶商からオーダーがあったそうです。

「明日の午後に鮮葉を集めに来ますから、村人を集めて古茶樹の森で采茶してくれませんか?」
そうお願いすると、布朗族(ブーラン族)の農家の人はこう答えました。
「明日は多くの村人が森へゆくでしょう。広州の茶商の楊老板がみんなに声をかけているところです。摘めた分だけすべて高値で買い取るそうです。」
この話を聞いて、おそらく明日が収茶のラストチャンスになると思いました。

紫・むらさき秋天紅茶2011年

広州の楊老板のことは知りませんが、お茶の本場の広州の茶商なら集める量も桁違いに多いはずです。

例えば、村人の半数が出たとして、しかし少ない新芽や若葉を摘んだとして、それでも鮮葉にして800キロは集まるはずです。そのうちの150キロは当店で頂こう。そう考えました。150キロを製茶して乾燥させたら35キロほどにしかなりませんが、設備が小さいので1日で製茶できる量はそれで精一杯です。
2~3日収茶と製茶をくりかえせば、その2~3倍つくれる計算ですが、新芽や若葉がもう少なくなっていることと、天気の良い日がこのままつづくとも限らないので、明日いっきに集めた方がよいと考えました。

紫・むらさき秋天紅茶2011年

そして次の日の午後。
楊老板と顔を合わすのは気まずいので、古茶樹の森から村へ帰る途中の山道にビニールシートを広げて茶摘み帰りの村人を待ち伏せします。

「ちょっと良いのだけを選ばせてもらいます。大きく育った茶葉は楊老板に売ってください。」
良いのだけを選ぶと、村人からはさらに高値を要求されますが、量が少ないので仕方がありません。それでも実際に思っていた150キロさえ集めることができませんでした。やはり新芽や若葉がもう少ないのです。

紫・むらさき秋天紅茶2011年

紫・むらさき秋天紅茶2011年

紫・むらさき秋天紅茶2011年

秋の旬の古茶樹は不作だったと言えますが、おなじ巴達山の賀松寨の若い茶樹の茶畑では、この時期たくさんの鮮葉が集まっていました。これは別の広州の茶商からのオーダーで、やはり生茶のプーアール茶にするそうです。賀松寨の愛尼族の村人が総出で茶摘みに出かけています。茶畑は森の古茶樹にくらべて発芽の量が多く、摘みやすいので、ひとりあたり3倍以上もの収穫があります。

賀松寨の製茶農家がこう言いました。
「この茶葉で紅茶をつくってはどうですか? 価格は3分の1ですよ。樹齢70年だから古茶樹ということにしませんか?」
「お前も悪よのう・・・」
と、言いたくなる誘いですが、
「当店は古茶樹をテーマにしているので茶畑のはダメです」と、却下しました。

樹齢と風味との関係は、同じ土地の茶樹で比べるとわかりやすく現れます。巴達山には業界最大手の孟海茶廠の広大な茶畑があります。1980年頃に開墾されたので、樹齢はせいぜい30年です。この30年と70年の茶樹はどちらも畝づくりの茶畑ですが、その差が風味にも現れています。

下の写真の2つのグラスの茶葉の色に差があるのがわかると思います。 左が樹齢30年、右が樹齢70年。
飲み比べるとさらにはっきりします。

紫・むらさき秋天紅茶2011年

紫・むらさき秋天紅茶2011年

旨味が強くてわかりやすいのは樹齢30年のほうで、お茶の味に慣れない人はそのほうが美味しく感じるかもしれません。樹齢70年のほうの旨味はむしろ淡麗で、滋味が強いせいか複雑で、ややわかりにくい印象です。

しかし、すぐにわからなくてもよいのです。じっくり飲んでゆくと、飲むにつれ甘味はもっと強く、余韻やのど越しにはえも言われぬ印象があることに気付くでしょう。そして何日か飲み続けると、身体がそちらを求めるようになります。

樹齢が古くなるほど葉の産量は減りますが、一枚一枚の葉に宿る栄養はむしろ増えるようです。樹が大きく育つほどに根は深く、土の深い層の栄養が吸収されます。その結果、古い茶樹ほど葉の色が青黒くなります。同じ土地の茶葉で比べるとその違いがよくわかります。

紫・むらさき秋天紅茶2011年

大手メーカーのつくるお茶は近年とくに生産量が多いため、樹齢70年の茶葉では量が足りず、またコストも合いません。当店が近年の大手メーカーの製品から少しずつ離れてきた理由はここにあります。

■その3 軽発酵(つづき)

【紫・むらさき秋天紅茶2011年 その3】


紫・むらさき秋天紅茶2011年 1枚 380g


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