
水によって、お茶の味は変わります。
それはどれほどの違いがあるのか?
市販のペットボトルの飲料水6種類について、同じ茶葉を使った味比べをしてみました。
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※この試みの前提
目的はお茶の味の「違い」を知ることにあります。水の成分や分子構造がどのように味に関係しているかについては触れません。
ここで試した茶葉に対して相性の良い水を見つけることはできますが、それがプーアール茶すべてに共通するとはかぎりません。
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■市販の6種類の飲料水は・・・・・・・・・・・・・・

上海のデパートの食品売り場で適当に選んだものです。いずれもいつかどこかで飲んだ覚えのあるもので、比較的安価な銘柄だと思います。自然の源泉から採水されるナチュラルミネラルウォータータイプが4種。浄水タイプが2種。合計6種です。
■使用した茶葉は・・・・・・・・・・・・・・・

「黄印7542七子餅茶」。
+【黄印7542七子餅茶プーアル茶】
比較的乾燥した環境にて保存熟成された生茶です。繊細な風味があるため、微妙な違いを見分けるのに適しているプーアル茶として選びました。
茶葉を軽量し、同じ条件の、茶器、水温、時間、にて煎じました。
誤差を埋めるため2回づつ試しています。それでも正確なサンプルとは言えませんが、味の印象を比べるのには十分です。
■煮水器は・・・・・・・・・・・・・・・

左: ステンレス製の電気ポット
右: 南部鉄瓶
どちらもかなり使い込んでいるため、湯の味は安定しています。当店の味覚鑑定では味の尖ったところが出やすい電気ポットを使用しています。それと対照的に味がまるくなる南部鉄瓶との違いを試してみました。
また、沸騰したてと、長く沸かしすぎたお湯も比較してみました。
このページの下のほうに比較結果があります。
+【南部鉄瓶とステンレス製の電気ポット】
その他、茶杯や茶海などの茶器は、ガラスか白磁のもので、あまり味や成分に影響を与えないものにしています。
■PHと導電率・・・・・・・・・・・・・・・

PHは水素イオン濃度の値です。純水に近い蒸留水はPH7.0で中性です。それよりも低い数字は酸性。高い数字はアルカリ性です。
導電率は、水の中で電気を通す電解質の量です。(μS/㎝、マイクロジーメンス/㎝)という単位で表されます。電解質には主要ミネラル成分が多く、市販のミネラルウォーターには100mlあたりの成分が表示されています。これらのうち、カルシウムイオンとマグネシウムイオンを多く含んでいるものを硬水、少ないものを軟水といいます。また、塩分(ナトリウムイオンや塩化物イオン)のように、水の味を大きく左右するものもあります。しかし、水に溶けてもイオンとならない(電解質ではない)糖などの濃度は測ることはできませんが、煎じた茶湯の濃度くらいは、見た目以外の観点からみることができます。
参考ページ
+【PHの話/HORIBAホームページ】
+【導電率の話/HORIBAホームページ】
PHや導電率の数値だけで水やお茶の味を読み取ることはできません。これらを測定して記録する目的は、お茶の熟成度や、長期保存による変化との関係を見つけることができる可能性があるためです。
■味の違いについて・・・・・・・・・・・・・

味の違いをわかりやすくするために、「●●●○○」で点数を付けてみました。それで表現できない部分は、言葉で補足しました。あくまでも人間の感覚でそれを表しているので、正確ではありませんが、それぞれに違いがあるということはわかります。
茶を煎じるときの温度と時間は、できるだけ同じ条件で煎じてみましたが、茶湯の色には若干の違いがあります。2度試していますが、やはり水によって色の出方が異なることがわかりました。
■六甲のおいしい水
全体のバランスはよく、口に含んだ瞬間の印象はおっとりしています。他のミネラルウォーターに比べると、おとなしい印象ですが、甘味が抑えられているため、やや乾いた感じがします。後味もサッパリしています。
特徴は、日本の番茶を思わせる香ばしさやほろ苦さが引き出されるところにあります。日本のお茶の味を連想させるということは、日本のお茶の味は、日本の水によるところがあるのかもしれません。
■農夫山泉
上海から車で5時間ほど離れた国家森林公園地区にある人造湖の、「千島湖」の深層水です。上海でもっともよく売れているミネラルウォーターのひとつで、お茶屋さん良く使っています。当店も試飲のときには、よくこれを使います。比較的まろやかで、口に残るほのかな甘味が特徴です。お茶の味もまろやかです。渋みや苦味は、口に入れた瞬間からちょっと遅れ気味にじわっと出て来ますので、甘味や酸味などの風味を感じる余裕があります。途中から、ややモッタリした感じになり、全体的におとなしい印象です。喉を通る時はなめらかで、うるおいがあり、後味にも落ち着きがあります。
■エビアン
フランス南東部エビアン・レ・バンの町の、標高約850メートルに採水地があるらしく、まさしくアルプスの山水です。どこにでも販売しているミネラルウォーターのわりには、好きな人と嫌いな人があるということは、個性が強いということでしょう。
塩でも混ざった?と思うくらいに、ズシッとした印象があります。渋みや苦味や酸味の尖ったところは完全に抑えつけられて、とろみが強く、カビ臭くて不味いお茶になりました。生茶の軽快さが失われ、まるで熟茶かと思うような風味です。お茶を煎じる時に灰汁がたくさん出ました。これは硬水の特徴で、他のミネラルウォーターに比べて、含まれているミネラル成分が多い結果といえます。
■ボルヴィック
フランスの中南部のオーヴェルニュ地域の火山層を通った水です。やや軟水で、もっともバランスが良く、クセがありません。当店のお客様の間でも評判の良い水です。お茶だけでなく、料理に使う水としても人気があります。どの味が際立つことも、どの味が抑えられることもありません。お茶の味が広く深く味わえます。お茶を口に含んでいる間はやや重みがありますが、うるおいもあり、喉越しはよく、後味はスッキリしています。このお茶「黄印7542七子餅茶」の軽快な酸味が引き出されており、新鮮で上品な風味です。この6種類の市販の飲料水の中では、もっともこのお茶を美味しく引き立てたと言えます。
■ヤンキーマウンテンナチュラルスプリングウォーター
採水地は、アメリカの山々の湧水地と書かれているだけで、場所が定かではありません。「純浄水飲料水」と表記されているところから、浄水加工してあるようで、ナチュラルミネラルウォーターではないようです。口に含んだ印象は軽く、甘味を感じます。苦い印象だけが強く残りました。ただし上品な苦味なので、不味いとは感じません。渋みも上品です。甘味やとろみが弱いので、全体的には乾いた印象になります。喉越しは良く、後味もサッと消えて残りません。水のまま飲むと甘くやわらかい印象があるのに、お茶で飲むと苦くてドライでした。味のバランスは、水とお茶とで必ずしも一致しないとうことになります。
■麒麟飲用純浄水
水道水を浄水した、飲料用水です。 上海市の郊外の松江区にて作られています。松江区は、ビール工場各社の上海地区の工場のある地域ですが、例えば、上海の青島ビールは、青島の青島ビールよりも不味いと言われています。これはおそらく水のせいだと思います。味に個性がないかわりに、クセもありませんが、口に含むとやや重く、モタッとした味です。お茶の味は、渋みや苦味が尖って、強く感じます。それが舌の上に残り、喉にまで達するため、とても乾いた印象です。甘味や酸味が引き出されず、味に幅や奥行きがありません。また、水と同じように、モタッとした重みがあります。当店では上海の水道水を、浄水器を通してお茶の水に使用することがあります。それとほぼ同じ味になるのではないかと推測して、こ浄水器の水との違いを試したのですが、結果は異なるものでした。浄水器の水のほうが、お茶を飲むにはよほど美味しい水であると言えます。導電率の数値をみると、含まれているミネラル分が他にくらべて極端少ないものになっています。それが味に影響していると思われます。
■水道水(浄水器)
当店では、上海の水道水を飲料用の浄水器に通したものを、普段飲むお茶に使っています。味のバランスは悪くありません。上述のナチュラルミネラルウォーターのなかでは、「農夫山泉」に似たバランスの味です。
■ステンレス製の電気ポットと南部鉄瓶
ステンレス製の電気ポット
南部鉄瓶
南部鉄瓶は見るからに湯の温度が高い状態で煎じることになりますが、冷まさずに沸騰したてを淹れました。湯の味を比べてみたところ、南部鉄瓶のほうが圧倒的にまろやかで、甘くて美味しいと感じました。
ところが、お茶にするとそれがかえって仇になって、まろやかすぎて特徴が感じられないことになってしまいました。ステンレス製の電気ポットのほうは、渋みが効いて、お茶らしさのある軽快な風味が楽しめます。
面白いことに、ステンレス製の電気ポットと南部鉄瓶の茶湯のPHや導電率の数値には、味で感じたほどの差がありません。これらの数値以外のところに差があるのかも知れません。
■沸かしすぎの湯
ステンレス製の電気ポット
南部鉄瓶
ステンレス製の電気ポットは、スイッチを入れたり切ったりして、沸騰させたり少し冷ましたりを20分続けました。南部鉄瓶のほうは、ごく弱火で15分ほど沸騰させ続けました。
ステンレス製の電気ポットの湯でのお茶の味は、重くなった感じがして、軽快な渋みや酸味、香りがなくなりました。特に香りについては顕著に差が出ています。沸かしすぎのは不味いと感じました。PH値の沸きたてはPH8.3だったのが、沸かしすぎはPH9.1で、アルカリ性に振れましたが、茶のPH値は同じです。逆に導電率は、湯のときはほぼ同じなのに、茶になると沸かしすぎのほうは2割増えた値になっています。測定方法に問題があるのか、それとも測定できない何かが味を変えているということだと思われます。
南部鉄瓶のお茶の味は、渋みが弱くなった程度で、印象が大きく変わるようなことはありませんでした。沸かしすぎのほうはよりまろやかで、それなりに美味しいと感じました。
沸かしすぎがよくないのは、ステンレス製の電気ポットでいえることで、南部鉄瓶の場合はそれほどでもなさそうです。
■まとめ ・・・・・・・・・・・・・・・
自然の源泉から採水されるナチュラルミネラルウォータータイプの4種が、浄水タイプの飲料水よりも「風味」があるのですが、その分個性もあって、美味しいものと不味いものとに大きく分かれました。また、水のままの味の印象と、お茶になった味の印象は大きく異なりました。水の味がいいからといって、お茶の味も良くなるとは限りません。
エビアンで淹れたお茶が不味くなり、灰汁が多く出た結果からみると、これ以上に硬水でミネラル分の多いタイプの水は、プーアール茶には相性が悪い可能性があります。
浄水タイプの2種は、お茶の味がいずれもドライな印象になりました。ミネラル分が少なすぎると、まろやかさが失われるのかもしれません。
また同じ水を使っても、湯を沸かす茶器の素材が違うと、味の印象が大きく異なることになることもわかりました。
水や茶器によってこれほど味に差が出るのであれば、お気に入りの茶葉にはどの組み合わせがいいのかを探してみる価値があります。
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