1960年代製造 (1960年中ごろと思われます)
茶廠:廣雲東進出口公司
茶山:雲南新茶園
茶樹:大葉種潅木
茶葉:3級メイン
工程:生茶
倉庫:香港乾倉ー広州常温乾倉
「廣雲貢餅圓茶」、通称「廣雲貢餅」は、雲南の茶葉を原料に、広東でつくられた餅茶です。「廣雲貢茶」の「廣」は広東省、「雲」は雲南省のことです。
原料が雲南の茶葉で、プーアール茶を扱う茶商が保存熟成するため、まさしくプーアール茶なのですが、風味は別の地方の黒茶の「六安茶」や「六堡茶」に似ているところもあります。
この「廣雲貢餅圓茶60年代」は、1960年代製造、およそ40年間熟成の生茶です。「廣雲貢餅」としてはもっとも古い年代のものです。
廣雲貢餅は、プーアール茶の七子餅茶とおなじく、七枚一組で竹の皮に包まれていますが、1960年代の品には1枚ごとの包み紙がありません。
現在は、茶葉の崩れ落ちるのを防ぐために、透明のフィルムでパッケージしてあります。空気の通りは悪いですが、もうこれ以上の熟成を急がないくらいに、しっかりと熟成しています。
1952年から1973年に、雲南から毎年10トンの茶葉が広東に運ばれていました。その中でも茶葉の品質の良いものを使って「廣雲貢餅」が作られました。しかし、質の悪い茶葉で作られたものも大量にあり、粗悪品も多いため、ゴミの山から金の延べ棒を見つけるようなものだと言われています。
さらに、広東で作られている餅茶は、「広東餅」と呼ばれますが、広東の茶葉を使って作られたものもあります。広東の茶葉は、茶葉が小さく細く、味には少し酸味があります。
1958年にはじまった大躍進と、1966年からの文化大革命によって、その前後で、雲南の茶山は大きく様変わりします。農業の生産効率を高めるために、自然栽培の古樹園の背が高く古い茶樹を切り倒し、若い茶樹に植え替え、背が高くならないように管理されるようになりました。「廣雲貢餅」はその新茶園の茶葉で作られたものです。
新茶園の若い茶樹の茶葉は、葉をたくさんつける分、少し小ぶりになり、やわらかく、風味もやさしいのが特徴です。
「廣雲貢餅」は、3級の茶葉を主体につくられ、しかも圧延が強いので、茶葉の通気性は悪く、湿気が溜まりやすい状態です。この固形茶の性質が理由で、熟成半ばで、カビになったりして品質の悪いものもあります。
そうかといって、茶商の倉庫には置かれずに、小売店の室内などの乾燥した環境に初めから保存されたものは、熟成による変化が少なく、発酵のお茶としての美味しさが期待できないものもあります。
このような理由から、仕上がり具合のちょうど良い「廣雲貢餅」の入手が難しいため、茶商もあまり積極的に欲しがるものではなく、同年代の雲南のプーアル餅茶に比べると、やや評価も低いようです。
「廣雲貢餅」には、1960年代、1970年代、1980年代と1990年代の製品があり、それらは、包装や内飛(茶葉に埋め込まれた紙)で見分けることが出来ます。
参照:壺中天地雑誌社出版の「普シ耳茶」のP170
「内飛」1960年代 四角
1970年代の内飛は、「茶」の文字のデザインが縦長になり、80年代と90年代のものは、内飛の紙の形が丸型となります。
「内飛」1990年代 円形
1980年代の「廣雲貢餅」には、化粧箱と包み紙のあるものもあります。 包み紙には、「中国廣東省茶葉土産進出口公司」と記されています。化粧箱は丸型で、独自の模様があります。
■廣雲貢餅圓茶60年代の茶葉
小さめの3級くらいの茶葉が多く、しかも形が崩れています。雲南から広東に運送中にそうなるのか、扱いが粗いのか、茶葉の原型を留めているのはごく一部です。茎の部分が多く混じります。特徴あるのは、色です。同年代のプーアール茶に比べて、やや黒っぽい色をしています。
上: 荷香老散茶60年代プーアル茶
下: 廣雲貢餅圓茶60年代
プーアル茶の1960年代の茶葉に比べると、赤味が少ないことがわかります。
+【荷香老散茶60年代プーアル茶】
上: 六安茶70年代後期
下: 広西六堡茶70年代
この二つは、黒茶の年代モノです。どちらも黒い色をしています。「廣雲貢餅圓茶60年代」の色はこれら黒茶の年代モノに似ているところがあります。
「六安茶70年代後期」は安徽省の黒茶。
「広西六堡茶70年代」は広西省の黒茶です。
プーアル茶よりもやや温度と湿度のやや低い環境で、菌類の発酵による熟成を経ています。プーアル茶の熟茶をつくるときの菌類や、香港や広東の茶商の倉庫の菌類とは、少し違いがあるようです。
六安茶70年代後期の金花カビ
これらの黒茶の熟成には、金花カビが活躍しますが、この金花カビが活躍すると、ほろ苦みに特徴のある風味に仕上がります。プーアル茶の保存熟成のときにも、この金花カビのつくものがあります。当店では、「鳳凰沱茶96年プーアル茶」に金花カビを見つけており、やはりその風味も、共通するほろ苦味を感じました。
そして、この廣雲貢餅圓茶60年代にも、共通する風味を感じます。
茶湯の色は、普通に煎じると明るい栗色ですが、濃く煎じると赤味が出ます。濁りはなく、透明感があります。プーアル茶の生茶の同年代のものと比べるとやや熟成が弱いような印象の、軽い風味になります。
1960年代のプーアル茶は、だいだい同じような茶葉、同じような作られ方で、香港の茶商の倉庫、しっかり熟成されているものが基本ですから、この廣雲貢餅圓茶60年代とは、熟成された環境が異なります。
プーアル茶の1960年代のものと、黒茶の「六安茶」や「広西六堡茶」の、中間のような風味です。
プーアール茶に似た風味には、樟香や梅香があります。黒茶に似た風味には、甘さ控えめで、ほろ苦味や、小石を口に含んだようなミネラル風味があります。まだ熱いうちに飲むと、プーアール茶。ちょっと冷めてから飲むと、黒茶の風味の特徴が感じられます。
葉底(煎じた後の茶葉)
色は黒く、茶葉の形はかなり崩れています。5級くらいの葉も少しはありますが、ほとんどが3級くらいの小さめで、しかも崩れています。
このたび入手したものは、2000年に香港の収集家から広東省の茶商にわたり、茶商の倉庫に寝かされて、2004年11月に上海に届きました。2000年以前のことは、残念ながら調査できませんでした。
つぎにこのプーアール茶はいかがですか?
後期紅印鉄餅プーアル茶
+【このプーアル茶の詳細】
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