プーアール茶 プーアル茶専門のサイト

【オリジナルのお茶の記録】

 

漫撒一水紅餅2016年 その1.

man sa yi shui hong bing cha

漫撒一水紅餅2016年

■概要
采茶 : 2016年4月3日
茶葉 : 西双版納州孟臘県漫撒山香椿林 古樹
茶廠 : 孟海県工房
圧餅 : 2016年5月14日
工程 : 紅茶
形状 : 餅茶180gサイズ
保存 : 西双版納 紙包+密封
数量 : 10枚

■オリジナルのお茶
2016年の春のお茶です。
当店のオリジナル品です。
+【当店オリジナルのお茶について】

■紅茶
天日干しで仕上げた製法の紅茶です。
プーアール茶のように圧延して餅茶にしました。
采茶 4月3日
晒茶 4月4日
圧餅 5月14日
お茶づくりの様子を店長のブログ『茶想』で紹介しています。
+【漫撒一水紅茶2016年 その1.】

■香椿林
香椿林(xiang chun lin)は地名です。
新芽を食べる山菜「香椿」の樹が多いそうです。
西双版納旧六大茶山のひとつ漫撒山(man sa)の一部にあり、ラオスとの国境をまたいで原生林の森が残っています。漫撒山の森は大きく3つに分けると一扇磨(yi shan mo)・弯弓(won gong)・刮風寨(gua feng zhai)ですが、近年はさらに小さな地域に分けて呼びます。香椿林は一扇磨の一部です。
清朝1800年代後半にお茶どころとして栄えた歴史があり、最盛期には500頭もの馬が漫撒山と易武老街を往復して茶葉を運んでいました。その後に茶業の廃れた時代を経て、人里離れた深い森に戻っていました。

香椿林の森

香椿林の森

香椿林の森

香椿林の木

香椿林の木

香椿林の滝

香椿林の沢

香椿林の沢

100年以上の時を経た2005年頃、中国大陸にプーアール茶ブームが訪れ、忘れられていた茶山が再び注目され、近隣の村人たちが森に入るようになりました。
森の陰にひっそり生きる茶樹は、新芽・若葉が少なすぎてお茶をつくることができません。大きく育った古い葉を削ぎ落としたり周囲の樹木を間引いて採光したりして、茶樹が目覚めて成長サイクルに入ることで、やっとお茶をつくるに足る量の茶葉を産出します。野生から栽培へと変化する過程で、美味しいお茶ができるのです。
この味がファンの間で知られるようになりました。しかし、森のお茶は限られた量しか採れないことや、生産効率が悪いため、価格が高騰したり、ニセモノが流通したり、バイクの入る道をつくるために森の奥まで森林が伐採されたり、新たな問題も出てきました。

漫撒一水紅餅2016年

漫撒一水紅餅2016年

漫撒一水紅餅2016年

漫撒一水紅餅2016年

漫撒一水紅餅2016年

漫撒山のお茶づくりで大事なのは、騙されないことです。
易武山や漫撒山の農家は人を騙して利益を最大化させることに熱心です。
当初はこれに否定的な見方をしていましたが、地理、歴史、社会、そして茶という産物の商い。特殊な背景を知るにつれ、だんだんと順応できるようになってきました。
騙される側の原因の多くは勉強不足や手抜き仕事にあります。どっちもどっち。農家の罪を追求することはできません。
香椿林やその周辺の森には、近年になって苗が植えられた樹齢10年ほど、樹高1メートルほどの小茶樹があります。国有林に指定されている現在は、新しい苗を植える「栽培」は違法行為ですが、歩いて何時間もかかる山奥に入る役人はいません。

漫撒一水紅餅2016年

土地の権利(国が認めた確かなものではなく、地域の話し合いで決まった不確かな権利。)をもつ農家が森の一部を開拓して苗を植えているので、「森のお茶」としてはホンモノで、知らない人には微妙な嘘をつくことができます。小茶樹の産量は多く、ざっくり見ても古茶樹の10倍はあります。さらに外地から運ばれる産地偽装のお茶がその5倍はあると計算すると、ホンモノの森の古茶樹は2%になります。
現場に張り付いているのはこのためです。
小茶樹と古茶樹の違いは鮮葉(摘みたての茶葉)を見ただけで分かります。しかし、混采(小茶樹と古茶樹を混ぜて摘む)で水増しするのがこの地域の標準的な手法となってきたため、古茶樹100%を求めるにはなんらかの作戦が必要です。

漫撒一水紅餅2016年

その点で、今回は地理的に恵まれました。取引した農家には香椿林に二箇所の土地がありますが、そのひとつは古茶樹100%で、新しく植えた小茶樹は1本もありません。周囲に他の農家の土地はなく、深い森に孤立しています。現場に同行して鮮葉を持ち帰れば、混ぜるチャンスは一度もありません。
農家にとっては面白くない状況です。

漫撒一水紅餅2016年

漫撒一水紅餅2016年

漫撒一水紅餅2016年

■采茶(茶摘み)
農家の作戦は、意地悪をすることでした。
4月3日に茶摘みのアルバイトを5人手配するはずが、現場に行くと1人だけ。「アルバイトに逃げられた」と農家は言いいましたが、のこりの4人を他の農地に回したことが後になってわかりました。他の茶商に話をもちかけて、もっと高値で商談が成立したのかもしれません。
こんなことならはじめから高値で、農家に良い条件で取り引きしたいですが、それは農家のプライドが許しません。あくまでも客のわからないように儲けるのがこの地域の商売です。
こんなときのために自前で茶摘みのアルバイトを集める準備をしていましたが、そこまで追いかけずに様子を見ることにしました。
前日の4月2日の雨がちょっと気になったからです。

漫撒一水紅餅2016年

天気の崩れる予兆は数日前からありました。夕方になるとラオスの方角に雲が沸き、日に日に空高く積み上がり、積乱雲っぽくなってゆきます。
それでも雨は降らずに「晴れときどき曇り」の日が続いていました。空気は乾燥していました。
ところが、前夜の4月2日に雷がゴロゴロ鳴り、ちょっとだけ雨が降りました。5分も続かなかったはずです。乾いた土の灰色の地面が雨粒で黒く変色して、またすぐに乾いて灰色に戻りました。
だから大丈夫だろうと考えました。
雨水は根に届かないと推測したのですが、結果はそうでもありません。どうやら茶葉は根から水を吸い上げなくても、空気中から取り込めるのです。
風向きが変わったのか、湿った温かい空気が流れ込んでいました。

漫撒一水紅餅2016年

漫撒一水紅餅2016年

漫撒一水紅餅2016年

茶葉に水が廻るとお茶の味が「水味」で薄まります。この場合、お茶の味よりも水質に注目します。口当たりや舌触りで水質がわかります。
春の旬にまとまった雨の降るのを、初回は「一水」、次回は「二水」と数えます。
『漫撒一水紅餅2016年』の名前はここから来ています。あくまで独自な判断ですが、4月2日の夜の雨を「一水」と数えたのです。
お茶の味と産量は反比例していて、ひと雨ごとに新芽・若葉の量は倍増してゆきます。産量が増えると価格は下がるので、茶商の多くは「一水」以降を求めますが、当店は逆です。
4月3日に采茶。4月4日に晒干。
結局、当店ではこれが漫撒山での2016年春の最終日となりました。
4月4日が清明節なので、ぎりぎり「明前」のお茶ということになります。4月4日の夜からはまた天気が崩れて「二水」を数えました。

■製茶
采茶してその場ですぐに萎凋をはじめました。

漫撒一水紅餅2016年

萎凋により水分を蒸発させます。
芭蕉の葉を敷いて茶葉を広げると、しばらくして茶葉から出た水分が芭蕉の葉を濡らします。いつもより水分を多く持っています。
村へ持ち帰ってからもザルに広げて萎凋を続けましたが、それでも茶葉は水分を持ったまま繊維が硬くて、揉捻するのに十分な柔らかさになりません。
空気が湿っているのです。
この製茶方法では、空気中の水分がお茶の味に影響します。
夜の10時まで待ってやっと揉捻を始めて、それから3時間半揉み続けました。たった9キロ弱の鮮葉に3時間半もかかるのは長過ぎます。揉んでも揉んでも繊維が硬くて、なかなか思うように捩れてくれません。

漫撒一水紅餅2016年

しっかり揉むのが好みです。多少茶葉のカタチが崩れても気にしません。揉んでいるうちに手の中で軽発酵がはじまり、紅茶独特の鮮味の強い香りが出てきます。
雲南大葉種は茎の部分が太く長く、そこに水が閉じ込められています。揉捻で押し出して茶葉全体の水分を均一化させます。「一水」のせいで長時間揉んでやっと茎の中の水が押し出されます。そのときにシュワシュワと炭酸水の泡のはじけるような微かな音がしたのを覚えています。

漫撒一水紅餅2016年

茶葉の状態を手で知ることができるのは手揉みのよいところです。カタチが整わず不格好に仕上がりますが、摩擦による痛みを少なくできます。新芽・若葉の表面には茶毫と呼ぶ細かな毛があります。機械揉捻は茶葉のカタチは整ってキレイに見えますが、ドラムを回転させて底板と摩擦させる仕組みなので、茶毫もろとも表面の何かを擦り落とします。味になんらかの影響があると思います。
手揉みの欠点は、時間がかかって少量しかできないことです。
時間がかかると軽発酵のすすみ具合が不均一になります。手が足りないのでアルバイトを雇うと、ひとりひとりの仕上がりが不均一になります。
今回は少量だったのでひとりで揉捻しました。手揉みの良さが現れるはずです。

漫撒一水紅餅2016年

「黄片(huang pian)」と呼ぶ硬くて捩れない茶葉が多くなりました。
これは雨のせいというよりは、摘みどきを逃して成長しすぎたせいです。
一般的には取り除くのですが、早春の黄片は小さくて香りが良いので、当店の今年の春のお茶はすべて黄片を残したままにしています。

漫撒一水紅餅2016年

揉捻の後は布袋に詰めて一晩寝かせて軽発酵させます。水分の多いほうがより軽発酵がすすみやすいので、そのような結果を得たと思います。
翌日4月4日は昼のうちは天気が良く、強い太陽光線を浴びてスッキリ一日で乾きました。

つづく
+【漫撒一水紅餅2016年 その2.】


漫撒一水紅餅2016年 1枚 180g 


【オリジナルのお茶の記録】

プーアール茶 プーアル茶専門のサイト

請別轉用盗用本网站的文章和照片
当サイトの文章や写真を転用しないでください
Copyright puer-cha.com All rights reserved.