製造 : 1996年
茶廠 : 下関茶廠
茶山 : 臨滄茶区
茶樹 : 大葉種 喬木
茶葉 : 2~4級
工程 : 熟茶
倉庫 : 香港乾倉
熟茶ですが、香港の倉庫でさらに熟成され、小豆のようなコクと、蜜の甘味が乗った芳醇な仕上がりです。
キノコ型をした緊茶は、かつて雲南から茶馬古道で西蔵(チベット)や青海へ運ばれていました。野菜や果物の作れない高地や砂漠の辺境地に住む人々には、お茶は生活に欠かせない栄養源だったのです。
1950年代~1990年代後半まで、雲南の茶葉が専売公社制だった頃、香りの良い上等な茶葉は、高級プーアル茶として香港を経由して国外に流通していました。それ以外の茶葉で国内向けが作られますが、当時の茶葉は、今で言うところの完全有機栽培であり、自然の生態系の中でのびのびと育っていたものです。
1990年代後半から雲南の茶葉にも自由化の動きが出てきて、国内向けにの茶葉も、香港や台湾の茶商が取り扱うようになりました。
段ボール箱ごと香港の茶商から届いた時点で、固形の茶葉は形崩れしていました。そのくらい熟成がしっかりされていたということです。
そのため崩して箱につめて販売することにしました。香港の茶商の倉庫は、温度と湿度が高めのところが多く、しっかりと熟成します。茶葉の成分は変化して、崩れやすくなっています。今回は、崩れていないのと、崩れた茶葉とをあわせて袋詰めしました。
合計300gは、毎日5gで1リットル飲んでも、約2ヶ月分あります。
緊茶の歴史をご紹介します。
緊茶が生まれたのは1912年~1917年の佛海地区で、プーアール茶の里の孟海の近くです。
その当時、このキノコの形を「心臓型」と呼び、名は「宝焔牌緊茶」でした。まだ熟茶が開発されていない頃ですので、生茶です。
竹の皮の筒に7個のお茶が連なるように包まれて、遠くチベットまで運ばれていました。茶葉と馬の交易の道、「茶馬古道」を通ります。
この形ゆえに、隙間ができ、茶葉のもつ水分をうまく逃がせるので、チベットなど辺境地へ運ぶ道中に、カビが生えてダメになるようなことはなく、うまい具合に熟成が進むのでした。
下関地区の茶行(茶を作って売る事業者)の下関大茶号茂恒が、佛海に職人を派遣し、緊茶の技術を持ち帰り、下関でも生産するようになりました。
しかし 1960年ごろから、下関茶廠など大手の国営茶廠では、長方形の磚茶を作るようになり、さらに緊茶に変わってお碗型の沱茶を生産し始め、キノコ型の緊茶は減りました。
さらに1970年頃には、潅木の新しい茶園の茶葉を使用し、菌類の発酵を促した「熟茶」が普及します。
形が変わり、製法が変わったせいで、チベット人が慣れ親しんでいた、昔ながらの緊茶の「気骨のある」(と表現されています)強い味はなくなり、おだやかな味になりました。昔の味を好む人々にとっては、「なじみの味」を失うことになりました。
1986年10月20日 全国人大常委員会副委員長「班禅額尓徳尼」(チベットの代表的なお坊さんです)が下関茶廠を訪問し、昔ながらのキノコ型の緊茶を作るように依頼して、5000キロのお茶を注文したそうです。
台湾の壺中天地雑誌社の「普シ耳茶」P131には、このときの写真が掲載されています。
( この書籍と上記の説明には異なる部分がありますが、書籍のほうのタイプミスと思われます)
このお茶の名前、宝焔牌班禅緊茶の「班禅」は、このお坊さんの名前です。辺境地といわれるチベットや青海地区へ、この緊茶は運ばれ、いまでも生活のお茶として流通しています。
包み紙には、チベットの文字があります。
機械生産、緊結端正、湯色橙紅、滋味醇厚、清潔衛生
機械生産であることや、衛生的であることが、当時の国の価値観に沿ったものだったのです。
茶葉の拡大写真です。
圧延のときに使用された布の跡形があります。かすかに白っぽくなっているところがありますが、これは香港の茶商の倉庫の湿度の高いめのところで熟成されたときに、茶葉の成分が表面に出てくる「白露」と呼ばれる現象です。温度と湿度が適切であれば問題はありません。むしろ美味しく熟成している証にもなります。
茶湯は赤味が強く、暗い色をしています。
屑茶葉がやや多いせいか、はじめの2煎めくらいまでは、茶葉の粉が水面に浮いてきます。強い甘味とコクがあり、かすかに石を舐めたときに感じるようなミネラル風味が特徴です。
■飲み比べ
熟茶と生茶の「宝焔牌班禅緊茶」を比べてみました。
左: 熟茶の「後期宝焔牌班禅緊茶」
右: 生茶の「宝焔牌班禅緊茶80年代」
生茶の緊茶は、1980年代のもので、もとは香港の倉庫で熟成されていたのですが、まさしく、チベット人が慣れ親しんでいた、「気骨のある」強い味がします。まろやかながらも、鈍重な渋い苦い味がのしかかってきます。かすかに芝生のような青草の香りが爽やかです。
大きめの急須にポットのお湯を注ぎ、洗茶は台所の流しで済ませて、あとは手元においておけば、湯を注ぎ足しながら一日飲めます。
新しい情報が入りましたら、文章を変更、追加してゆきます。
保存方法については、以下のコーナーをご参照ください。
+【プーアール茶の保存方法】
茶葉の量のめやすは以下をご参照ください。
+【5gの茶葉でどのくらい飲めるか?】
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