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刮風古樹青餅2018年・黄印

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刮風古樹青餅2018年・黄印

■概要
采茶 : 2018年4月11日・13日
茶葉 : 西双版納州孟臘県漫撒山刮風寨茶坪古樹
茶廠 : 店長と茶友たち
圧餅 : 2018年5月1日
工程 : 生茶
形状 : 餅茶180gサイズ
保存 : 紙包+密封
数量 : 19枚(出品17枚)
出品 : 未定

■オリジナルのお茶
2018年の春のお茶です。
当店のオリジナル品です。
+【当店オリジナルのお茶について】

■刮風寨茶坪
刮風寨は西双版納旧六大茶山のひとつ漫撒山に属します。
他の町や村から遠く孤立した辺境地に村があります。周囲の山々はすべて国有林として保護されており、現在も原生林を保っています。
写真ページ。
+【刮風寨古茶樹 写真】

森

「茶坪」は古茶樹の群生のある地名です。
「茶王樹」・「茶坪」・「白沙河」が刮風寨では有名です。
およそ150年前の清代の貢茶がつくられていた時代に茶葉が採取されていた形跡があり、古茶樹の幹には台刈の跡や分岐があります。2001年に茶王樹、2002年に茶坪が再び開拓されましたが、それまでは手付かずの森林に戻っていて、古茶樹は暗い影にひっそりと眠っていました。

バイクで森に入る

バイク

茶坪の森

茶坪の古茶樹

古茶樹の茶地は村から遠く、数年前まで山小屋に鉄鍋を背負って行って製茶されていました。この数年の間でバイクが入れるまで山道が広げられ、摘みたて新鮮なのを村まで持ち帰れるようになり、製茶の精度が上がりました。

虫

(とは言っても虫などの混入は避けられません。)
茶地によりお茶の味が異なります。
もっとも人気があるのは茶王樹で、香り高く軽快な風味に特徴があります。茶坪はそれに比べて香りが弱いのですが、豊かな甘味としっとりした苦味に野趣があり、一部のファンに人気があります。
今年2018年の春は茶坪を選びました。
その理由は采茶のタイミングです。

■采茶
新芽・若葉の育ちは茶地によって時間差があります。山の高さ・斜面の日当たり・周囲の森林の密度・風の通り道・水の通り道・それらからなる気温や湿度の環境が影響します。
茶坪の第一波(初摘み)はやや遅く、茶王樹の数日後にはじまります。
また、茶樹ごとにも時間差があります。森の影になったり、枝ぶりが自由に伸びていたり、野生な状態に育つほど第一波が遅れます。
撥水節の4月12日頃から気温が上がって雨季に入る西双版納はこのタイミングに悩まされます。

茶坪の森

茶坪の斜面

3月末から茶友たちが刮風寨に滞在してタイミングを計っていたのですが、茶王樹の第一波の途中でこの春はじめてまとまった雨が降り、鮮葉の質を下げました。雨の前につくれた晒青毛茶はたったの2.5キロです。
4月5日の清明節を過ごして茶坪の第一波を待ち、4月11日・12日・13日の3日間がわれわれの采茶日となりました。運良く10日間ほど晴天が続きました。
2014年の春以降はずっと天気が冴えなかったので、4年ぶりに巡ってきたチャンスです。山笑う。嬉くて、われわれにはそう見えます。
采茶の人員は紅河州から出稼ぎに来ている苗族たちです。茶坪は村から遠いため、山小屋に泊まり込みで働いています。采茶の日は13人が集まりました。
村の農家での製茶は茶友たちと自分と合わせて6人。その内ふたりが朝から茶坪に入り采茶を管理します。茶樹を選んだり、鮮葉の鮮度が落ちないよう手入れします。

茶坪の小屋

小屋の風景

水

小屋で飲むお茶

卵とジャガイモ

苗族の部隊

芭蕉の葉の下に茶坪の鮮葉

茶坪の鮮葉

集まった鮮葉

集まった鮮葉は悪路のバイクの達人の苗族が運びます。一般的には夕方に1回だけ運びますが、われわれは午前中と午後と2回に分けて鮮度を保っています。
刮風寨は盗難対策が必要です。
鮮葉が高値で転売できるため、地元の易武山の茶商たちが狙っています。安く買っておいた小樹の鮮葉を詰めた袋とすり替えようと、バイクで運ぶ苗族に現金で交渉します。われわれは運搬中もバイクで追跡して盗難を防ぎました。

■品種
このお茶「黄印」は品種を選びました。
茶坪の古茶樹は、原生の大葉種が色濃く現れた、大ぶりで茎の長い葉形が特徴です。
契約する農家には200本以上の古茶樹があり、そのほとんどがこのタイプです。
黄印はそれとは異なる小ぶりで茎の短いタイプを選びました。数少ないため山の斜面を探してまわり、およそ10本ほど見つけていますが、采茶のタイミングに合ったのは4月11日に4本、13日に2本、合わせて6本。この6本から約16キロの鮮葉を収穫しました。

品種

采茶

采茶

采茶

采茶

品種

品種

品種

品種

葉形の違いは物理的に製茶に影響します。小ぶりで茎の短いほうが黄印には向いていると判断しました。
黄印は葉形を選びましたが、茶友たちの共同のお茶づくりは葉形にはこだわらず特別大きな茶樹だけを選びました。結果的に大ぶりで茎の長い葉形のものが揃いました。茶樹の育ち方にも品種特性が現れます。
+【刮風古樹青餅2018年・緑印】
黄印の茶樹は枝がヒョロっと細く育ち、分岐が多いのが特徴です。生長がやや遅いと見えて、この種のものに目立って大きく育つ茶樹はありません。

■製茶
農家の製茶場にテントを張って泊まり込み、昼夜を問わず働きます。
黄印と同時進行で茶友たちの分のお茶づくりもすすめています。
今回は6人で協力し合って収穫を分けることになりましたが、旬の数日に集中して質と量のバランスを取るには合理的でした。
手工のお茶づくりは重労働です。とくに殺青(炒る)や揉捻(揉む)は体力を消耗します。ご飯をつくったり道具を手入れしたり晒干の茶葉を整理したり、仕事はいくらでもあるので仲間たちが助けてくれるのはずいぶん助かります。

品種

黄印は標準的な生茶よりも軽発酵をすすめます。
軽発酵のすすむ機会は、采茶した瞬間からはじまり餅茶になって乾燥するまでのあらゆる段階にあります。
水・空気・温度が関係するので、茶葉のコンディションだけでなくその日の天気も影響します。
いかに意図しない軽発酵を防いで、いかに意図する軽発酵をすすめるか。すべてを考えた上でひとりの判断により製茶するのが理想で、他人の手が加わると矛盾が生じます。
黄印は少量だったので、その理想を実現できました。萎凋・殺青・揉捻・渥堆・晒干はひとりで行い、茶友たちには助手的な仕事のみ手伝ってもらいました。
忙しくて写真を撮る余裕がありませんでした。ここに掲載するのは同時進行でつくった茶友たちの分がほとんどですが、だいたいの流れがわかると思います。

■萎凋
写真では農家の萎凋台を使っていますが、この黄印の鮮葉は竹笊にひろげて萎凋しました。
製茶場は、北側に森林の斜面、東側に沢の流れ、南側に整地さた晒干場、西側の菜園の向こうには谷底の川、場所によって時間によって空気の流れや湿度が異なります。
しっとりした涼しい風が通るところに竹笊の置いて、茶葉がゆっくり萎れるようにしました。

萎凋

茶葉は、尖った新芽・平べったい若葉・円柱形の茎、などの複雑な形状からなります。繊維質にも違いがあります。萎凋は茶葉の水分を蒸発させるのが目的ですが、このとき、例えば新芽だけが乾いて茎だけが水分を持ったままになるとか、例えば竹笊の端の周りだけが乾くとか、水分が不均一になるのは良くありません。
茶葉を撹拌したり、集めて山にしたり、布で覆ったり、まんべんなく萎れるように手を加えます。

■殺青
萎凋が適度になるのを待って深夜に殺青しました。
しっかり萎凋すると茶葉の内部ですでに軽発酵がすすんでいます。焼けた鉄鍋の温度に反応して、茶葉の緑色が枯れ葉のような色に変色しやすくなっています。
殺青しはじめの数分間の、30〜70度くらいの低温域で変色しやすく、それ以上の高温になると変色が止まり、緑色が保たれます。
このため近年は萎凋をほとんどしないことが多くなっています。萎凋の時間が短いほうが緑色が冴えるからです。おそらくこの価値観は近年の需要の変化が影響しています。中国大陸北部の緑茶を主に飲んでいた都市で、生茶のプーアール茶が飲まれるようになったからです。

殺青

薪の火を強くして短時間で茶葉が高温に達するのが理想ですが、しっかり萎凋した茶葉は水分が抜けているので焦げやすくなっています。焦げの多いのはお茶の味には致命傷です。
いろんなバランスを考えた結果、適度な変色を許すほうが良いと判断しています。
それでもなるべく強火で攻めて、茶葉の水分を短時間で高温の蒸気にかえて、蒸気を逃さずに茶葉にからめて、焦げを防ぎつつ熱を入れます。そうなるように鉄鍋の中で茶葉を回転させる手の動きを工夫します。
茶葉に褐色ができるのは、殺青の低温域で生じた軽発酵です。生茶のほんのり甘い香りはここから生まれます。
ちなみにこの色は烏龍茶にもよくあります。生茶につく名前の「◯◯◯青餅茶」の「青」は、青茶と分類する軽発度を表していると解釈しています。
黄印の殺青は標準よりも少しだけ”生”に仕上げています。変化の余白を残して、この後の工程でのさらなる軽発酵を期待しています。

薪

殺青は薪選びが大事です。
円柱形でしっかり乾燥していて中身の詰まったズッシリ重いのが理想です。炎が安定するからです。
一鍋ごとに新しい薪を3本使います。殺青の途中で足したり引いたりしないで自然に燃え尽きるように、太さの異なる3本を組み合わせます。
薪の質・窯の温度・茶葉の含水量・一鍋で炒る茶葉の量・炒る人の体力や技術、それら動的バランスを知るには経験を積むしかありません。数日前から比較的安価な小樹の茶葉で練習して、手の感覚を慣らしました。失敗して焦がしたのは他人には売れないので自分用に買い取ります。このお茶の3倍の量を練習用につくりました。
余談ですが、殺青の技術を追求すると、鉄鍋を据える炉のつくりに不満が出てきます。どこの農家の炉も似たり寄ったりなので自分で作り直したいのですが、これについては次回の課題です。

■揉捻
揉捻は両手の中で茶葉をバレーボールくらいの大きさの球にして、竹笊の上で同じ方向に回転させながら徐々に圧力を加えてゆきます。
揉捻と書くとおり、まずは茶葉をよじって整形します。よじれることで葉の先から茎へとタテ方向に棒状になります。棒状になると強い圧力をかけても千切れにくくなります。茶葉の球に全体重をのせて回転させ、繊維の内側のミクロの水道管から水を絞り出し、全体になじませます。
ムラ無く軽発酵させるためにはもっとも重要な仕事です。
機械ではなく手で行う理由をブログに書いています。
+【刮風古樹青餅2018年・黄印 その1.】

揉捻

揉捻

揉捻すると茶葉の内側から「茶醤」と呼ぶエキスが出てきます。
茶醤は濃いほど手にくっつきやすくなります。
この粘着力はある程度熱が入らないと出てこないので、殺青の火入れ加減を確かめることもできます。
つくってみないとわからないお茶の味ですが、製茶途中でその不安を解消するほど今回の茶醤は濃くて粘着力がありました。
もしも雨の日から2日か3日後までの鮮葉なら、これほどの粘着力は出てきません。
ほんの2日か3日で茶醤の濃度は変化します。晴れの日が続いたタイミングで摘み時が来た今春の茶坪は、まさに天の恵みです。

■渥堆
布袋に茶葉をくるんで一晩寝かせます。
布目のキメ細かさの異なるタイプを用意していて、茶葉のコンディションやその日の気温・湿度などに合わせて使い分けます。

月

焚き火とお茶

春の刮風寨の夜はまだ寒いくらいなので、布袋の中の茶葉の温度が体温くらいにまで上がって軽発酵がすすみ、紅茶のように変色することはまずありません。今回もおそらく20度以下を保っていたはずです。この渥堆は軽発酵をすすめることよりも、水分を逃さないように保湿するのが目的です。
次の日の晒干の太陽熱により温度が上昇したときに、水分を保ったままの茶葉は軽発酵がすすみやすくなります。

■晒干
日が昇る頃の空を見て、竹笊に広げる茶葉の厚さを調整します。
水分のあるうちに軽発酵がすすみ、乾くと変化が止まります。広げる茶葉が薄いと早く乾き、厚いとゆっくり乾きます。晴天が一日つづくとして、午後4時頃に乾ききるよう見積もって、なるべく厚めにひろげるのが黄印の晒干です。
茶葉の成分と水分と、太陽の熱と、谷を渡る涼しい風と。
晒干における化学反応は自然任せで、この土地のこの一日の印象がそのままお茶の味にプリントされます。
4月11日の采茶分は翌日の12日に晒干。4月13日のは翌日の14日に晒干。両日ともスッキリ晴天でした。

晒干の茶葉

ここでも茶葉がなるべく均一に乾くように工夫します。
竹笊を反時計回りに回転させて太陽光線の角度を変えたり、竹笊の裏側を棒で叩いて茶葉を跳ねさせてひっくり返したり、乾燥が早い場合は茶葉を中央に集めて、乾燥が遅い場合はもっと薄く広げて、水分の蒸発を均一にします。
突然の雨や突風にもすぐに対応できるよう、必ず仲間うちの誰かが側にいるようにしています。
刮風寨には他の茶商たちも見学に来ます。汚い手で茶葉を触ろうとするので、注意して追い払うのも仕事のうちです。
乾燥を確かめる方法は、いちばん長くて太い茎を見つけて指先で曲げてみます。曲がらずにポキっと折れたら完了です。
西の山に太陽が沈む頃に、竹笊ごと製茶場の軒下へと移動させます。
竹笊3つ分の茶葉を1つにまとめて、一晩かけて涼干(陰干し)で粗熱をとります。この熱のある数時間はさらに茶葉から水分が抜けます。
森に囲まれている刮風寨の夜は湿度が高いのですが、水はより冷たいところへ移動する性質があるので、この日の夜に茶葉が湿気る心配はありません。

晒干

ここまでして乾燥させても、茶葉はまだ水分を沢山含んでいます。
通気性のある袋に移して乾燥した室内にさらに数日置きます。この間におよそ5キロの晒青毛茶から少なくとも150mlの水が抜けます。数日後に重さを量るとその分軽くなっています。太陽に焦がされてパリパリに乾いていた茶葉が、それでもまだ水分を持つことができるのは、茶葉の繊維のミクロの世界の水道管が一部に閉じたまま水を抱えているからだと推測しています。数日かけて繊維がわずかに伸び縮みすることで水道管が開放され、水が外へと放出される、というようなイメージです。揉捻をしっかりして繊維をほぐしておく効果がここにもあります。
黄印の晒青毛茶は4月15日に山から降ろして、景洪市のアパートの部屋(茶葉倉庫にしている部屋で除湿機がある)の乾燥した環境に移し、さらに数日かけて水を抜きました。
16キロの鮮葉が3.5キロの晒青毛茶になりました。およそ12.5キロが製茶工程で抜けた水です。

■圧餅
黄印は圧餅における変化を想定しています。
その変化を加減できるように、すべてひとりで圧餅しました。
設備は自宅の厨房。石型などの道具は揃っています。ベランダで晒干もできます。
工房との違いは蒸し器です。
蒸すことの水分で茶葉を柔らかくし、熱によって粘着力を出すことで、円盤型に固めることができます。
近年は大きなメーカーも小さな工房もコンプレッサーで圧力をかけた蒸気で蒸します。勢いよく吹き出る高温の蒸気により短時間で加工できますが、これは一日に何百枚も加工する生産効率を求めた技術であり、お茶の質を上げる技術ではないと考えました。
正確に計ることはできませんが、圧力鍋のような高圧の蒸気は120度に達するはずです。これほどの高温が望ましいか?という疑問があります。

圧餅の昔の蒸し器

写真は鉄鍋を上下に合わせた古いタイプで、そこまで高圧にはならないですが、これを残している工房はわずかです。ちなみにこの工房はすでに廃業しています。
当店のオリジナルの過去に出品したお茶にもこの古いタイプと高圧のタイプと二通りあります。おなじ一つの原料でこの二通りを試したことがないので、今のところはっきりとわかる差は見つけていません。
昨年の秋から自宅の厨房の蒸し器(低圧と言える)で圧餅を試していますが、メーカーや工房のと大きく違うと分かったところは、蒸し時間がかなり長くなることです。
蒸し時間が長いことではっきりしたのは、茶葉の弾力が衰えないことです。

圧餅の蒸し

黄印の蒸し時間は6分40秒です。
散茶のままで3分20秒。布袋に詰めてさらに3分20秒。合わせて6分40秒。メーカーの高圧の蒸し器では30秒から50秒(200gザイズの餅茶)と比べると大きな差です。
時間の差はあれど熱量の差はそれほどでもないと考えられます。熱が入ることで出てくる茶醤の粘着力は、メーカーが40秒かかるところ、黄印は5分ほどかかるからです。
低圧でゆっくり蒸すと、茶葉の繊維がより柔らかくほぐれます。このことで圧延の効果に違いが生じます。

圧餅の石型でゆする

茶葉を詰めた布袋を石型で圧し、その上に人が立って時計回りにグルグルと足踏みします。揉捻で茶葉を揉むときの回転に似ていますが、その効果も似ていて、茶醤を絞り出して軽発酵を促します。
黄印の足踏みは3分10秒。メーカーは10秒から20秒ほど。
黄印はゆっくり蒸して茶葉の繊維が柔らかくなっているので、じっくり足踏みできます。足の裏にその柔らかい抵抗が感じられます。
蒸し時間が短いとザクザクと茶葉の繊維が壊れるのが感じられます。繊維を損傷させないためにもあまり足踏みしないほうが良いことになりますが、メーカーのがまさにそうです。

圧餅後の布

布を外したところ

黄印は、3.5キロの晒青毛茶を180gサイズの餅茶19枚にしました。まる一日がかりの仕事で、体力の消耗もはげしく、ひとりではこの量が限界です。
蒸したことの水分で180gの茶葉が20gほど重くなっています。この水分の多いはじめの半日は軽発酵がすすみやすくなります。涼干(陰干し)数時間、晒干(天日干し)3時間、さらに涼干を数日間かけてゆっくり水を抜きます。
軽発酵がここで止まり、圧餅の完成です。

出来上がり

蒸したときの熱量と水分と、晒干の太陽光と、65キロの体重+19キロの石型=84キロが3.5キロの茶葉を圧すのに注いだエネルギーと、それを考えると茶葉に与える変化は少なくありません。
圧餅は円盤型に整形するだけが目的ではありません。整形と引き換えに茶葉を劣化させるのではなく、茶葉の性質をある方向へと導く意志が必要です。

■品茶
黄印の製法は茶気を穏やかにする目的が一番で、甘い香りやまろやかな風味はその副産物と言えます。
茶気は、蒸留酒におけるアルコールみたいなものです。アルコール度数が高いながらまろやかで、酔い心地は軽やかで、二日酔いも無い。そんな矛盾を解決したお酒は上等ですが、お茶もそうです。
漢方の思想がベースにあるお茶なので、春の旬に宿る茶気もクスリのうちです。わざわざ強い茶気を求めて采茶日を選んでいます。一杯か二杯でパッと気分を変えるチカラと涼しい酔い心地は、他にはありません。
しかし、強い茶気は身体へのアタリも強く、個人の体質によっては飲み方に気をつけないと毒になります。眠れなくなったり身体が冷えたりの副作用を伴います。20年も30年も熟成させると性質が穏やかになりますが、現在はそこまで待たずに飲むことが多くなっています。

餅面表

餅面裏

茶気は茶山によって個性があります。われわれが漫撒山(旧易武山)一帯のお茶を求めるのは身体になじむからです。茶気のコントロールはまず茶山を選ぶところからはじまります。
軽発酵をすすめること。火入れをしっかりすること。(黄印は殺青の火入れはほどほどにして、圧餅の蒸しでしっかり火入れしている。)この2つの技術が茶気を和らげます。
その狙い通りに、身体へのアタリの穏やかなお茶になったと思います。

餅面崩し

黄印は茶葉の繊維をほぐすことにも注力しましたが、茶葉の繊維のミクロの世界の水道管が開いて、水を保持しにくい(湿気にくい)状態なので、この先の熟成にも有効なはずです。
黄印の製法は標準的な生茶よりも多くのエネルギー(熱)が茶葉に注がれています。その熱が抜けるのに数ヶ月かかります。はじめの1ヶ月間はとくに風味が荒れるのですが、この試飲は圧餅から1ヶ月間のもので、参考までの記録です。

茶壺泡

お茶淹れの技術ですが、黄印は茶壺の高温の湯に耐えるようにつくっています。一般的な生茶は熱に弱いのが多く、蓋碗にたくさんの茶葉を入れて手早く湯を切る淹れ方が普及していますが、黄印は少ない茶葉でじっくり抽出した味わいに魅力があります。
圧餅後から2週間くらいは、舌にヒリヒリシワシワしたものが残りましたが、現在はほぼ消えました。
圧餅後に現れたモワッとした火の味。蒸した熱によるもので、はじめは蒸し時間が長すぎたかと悔やむほどでしたが、これも4週間ほどで少なくなって、現在はよいバランスです。殺青の鉄鍋炒りと圧餅の蒸しからなる”火の味”は、奥ゆきをつくり、景色を感じさせ、郷愁のように心をくすぐります。
茶湯の暖色からわかるようにお茶の味も熟しています。
刮風寨茶坪の特徴である甘味が強調されて、当店のオリジナルで最も甘いお茶になりました。濁りなく透きとおる甘さは氷砂糖のようです。春の旬の細密な水質が舌の表面を滑り、甘い印象を後押します。また、舌の上に残るピリッと痺れる刺激が、なぜか甘い残像となり唾液を出させて喉を潤し、飲んだ後の満足感を高めます。
しっとりした苦味も茶坪の特徴です。お茶淹れの加減で甘い・苦いの均衡の妙を楽しめます。

葉底

葉底(煎じた後の茶葉)。
葉底は柔らかくシナっとしています。繊維をほぐした効果だと思われます。
茶葉の色のベースとなる緑が暗くやや青っぽいのは、栄養状態が現れています。茶坪の山の斜面は、上のほうの峰に茂る森に近いほど緑が暗くなり、斜面の下の谷に近いほど明るい黄緑になります。
2016年の春に茶友が茶坪の斜面の上と下のお茶をつくり分けました。その結果、斜面の上のほうが香りが強く味に層があることを確認しています。
茶葉は日陰ほど暗い色になり、日焼けすると明るい色になりますが、光合成による成分構成に違いが生じているのでお茶の味も異なります。
また、土質も茶葉の色に現れます。
斜面の上と下では土質が異なります。斜面の上の森に近いほうが土が肥えているのは、木々の落ち葉や地層が関係していると推測しています。

葉底と手

軽発酵により全体的にくすんで、ところどころ褐色に変色しています。当店オリジナルの漫撒山の生茶と比べても3年か4年熟成モノに相当する色です。
ちなみに、老茶と呼ぶ1980年代までの漫撒山の茶葉を原料とした生茶は、圧餅直後ですでにこのくらいの軽発酵度だったのではないかと推測しています。
今後の気付いたことはブログ「茶想」にて紹介します。

■出品
180gサイズの小餅茶で19枚つくりましたが、サンプルの2枚を差し引いて出品は17枚です。
陶器の壺で熟成させて、少なくとも1年以上寝かせてから出品いたします。

餅

餅裏

熟成壺


刮風古樹青餅2018年・黄印 1枚 180g 


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