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刮風秋水紅餅2018年

gua feng qiu shui hong bing cha

刮風秋水紅餅2018年

■概要
采茶 : 2018年10月18日
茶葉 : 西双版納州孟臘県漫撒山刮風寨茶王樹・古樹
茶廠 : 農家・店長
圧餅 : 2018年10月25日
工程 : 紅茶
形状 : 餅茶180gサイズ
保存 : 紙包+密封
数量 : 10枚+崩し2枚
出品 : 2020年1月10日

■オリジナルのお茶
2018年の秋のお茶です。
当店のオリジナル品です。
+【当店オリジナルのお茶について】

刮風寨の山

刮風寨の山

■刮風寨
2018年の秋は刮風寨を訪ねました。
春につづいて秋もふたたびここのお茶をつくりました。
刮風寨の魅力は人の手垢のついていない自然です。
切り立つ山と深く削れた谷の織りなす地形。原生林の美しい森。
急角度な斜面が農地の開拓を許さず、未開の土地を残しています。道は何度も崩れて流されるので舗装されない土のままで、外地からの侵入を制限しています。村は遠く孤立した地理にあって、瑶族を主とする山岳民族だけの領域を守っています。
西双版納のほとんどの有名茶山は農地開拓や道路の舗装により、森林が伐採されて、森のエリアは年々小さくなっていますが、刮風寨から弯弓につづく漫撒山にはまだまだ広い森が残っています。

刮風寨の森

刮風寨の森

刮風寨の森

国の保護政策により、指定されたエリアの森林を伐採して茶樹の苗を植える行為が違法となり、摘発された茶地の苗がすべて抜き取られるという制裁措置もはじまって、ようやく原生林の森の減少にブレーキがかかりだしました。
この先さらに取り締まりが厳しくなると、お茶づくりのためといえども外地人の侵入が許されなくなる可能性があります。
ホンモノの森に360度包まれた環境でのお茶づくり。これほど贅沢な仕事はありません。やれる機会がある限りやりたいと思っています。

漫撒山の森と茶樹の写真ページ
+【刮風寨 古茶樹】
+【一扇磨 古茶樹】
+【弯弓 2013年 秋天】
+【弯弓 瑶族の山】

■2018年秋天
2017年につづいて2018年も雨の多い年となりました。
雨季の終わる10月になってもまだ雨の勢いが衰えません。
ダメでもともとで見切り発車したのが10月17日、刮風寨に向かう日も早朝から雲が空を覆っていましたが、易武山に着く昼頃には青い空が見えだしました。そこから悪路を1時間半。刮風寨に着いた午後3時には雲ひとつ無い青空になりました。

青空

とうもろこし

この調子だと次の日に茶摘みができそうなので、瑶族の農家と相談してアルバイトの苗族の若者たちに古茶樹のある茶地に向かってもらいました。”茶坪”4人と”茶王樹”2人です。少人数なのは、今年の秋は茶葉の成長もいまひとつで収穫できるタイミングに育った新芽・若葉が少ないからです。茶地は山深いところにあって村から遠いので、前日から山小屋に泊まってもらって、朝の太陽が出てからすぐに采茶をはじめてもらいます。
采茶につづいて製茶の仕事が待っているわれわれは体力を温存しておくために、当日(10月18日)の午前11時に出発しました。
行き先は春のお茶づくりにも選んだ茶坪です。

茶坪の山歩き

山歩き

茶坪に向かう道は3つほど山を超えて谷を渡ります。
春はバイクを使って急ぎましたが今回は歩きました。歩いて森の雰囲気を楽しむつもりでしたが、別の理由でバイクが入れなくなっていました。

沢水

沢水の増水です。
苗族の若者たちはそれでもバイクで奥地まで入ります。彼らの故郷の紅河州の村も同じような山奥にあって、悪路のバイクに熟練しています。
午後2時半頃、山小屋に着くとすでに鮮葉が集まっていました。

空と山

山小屋

鮮葉

苗族の若者4人の収穫です。
予想よりも少ないので聞くと、新芽・若葉の収穫できる古茶樹が3本しかなかったということでした。
西双版納の秋の旬は9月中頃からはじまって11月はじめに終わります。
一般的にはそう言われていますが、これには商売上の嘘があります。
味の旬と収穫の旬とは異なります。
味の充実するタイミングはもっと短期間で、とくに雨の多い年はほんの数日だけになります。
さらに、今年は雨で山奥に入れないために9月の収穫が少量でした。9月頃に新芽・若葉が摘まれないまま大きく育つと、その後には枝から新芽が出ないで冬の乾季になります。このため10月頃の収穫が減ります。

茶坪の茶地

契約している農家の古茶樹は200本ほど。そのうち上質な茶樹は60本ほど。60本のうち新芽・若葉の摘み時だったのは3本。
タイミングが合わずに摘まれないで放置されて育った葉は、冬に幹や根を養い、栄養を蓄えてつぎの季節に備えます。
摘まれると、脇芽に栄養が回って新芽・若葉が増えますが、根の栄養を浪費します。また、脇芽が育つと枝の分岐も増えて一枚ごとの茶葉の栄養は薄まります。
収穫の悪い年は、将来にとって悪いことではありません。

茶花

■製茶
今回ははじめから紅茶をつくるつもりでいました。
雨の多い秋が2011年と似ていて、そのときつくった紅茶が熟成7年目にして魅力を増しているからです。
+【紫・むらさき秋天紅茶2011年】
お茶の味にかかわる因果関係の特定は難しいのですが、雨が多いということは雲も多く、日照の少ない環境で茶葉が育っています。その繊維質や栄養の構成に特徴があって、熟成にも作用して、ある種の風味を醸すのかもしれません。
雨の多い年の秋が茶葉に物理的に記憶されていて、お茶の味に現れると考えています。

月

鮮葉

苗族の若者がバイクで鮮葉を村へ運びます。我々が山道を歩いて帰る途中で追い越されましたが、今年の秋は現地入りしている茶商も少なく、見えないところで泥棒される心配はありません。春は山も茶葉も人も興奮状態でしたが、秋は心の落ち着いたお茶づくりができます。
村の製茶場に着くと、もう一箇所の”茶王樹”の鮮葉も届いていました。

茶王樹の鮮葉

茶王樹の鮮葉

茶王樹の鮮葉は苗族の若者2人が2本の古茶樹から采茶しました。
さらに量が少なく10キロほどしかありません。
こちらのほうが香りが良かったのと、ひとりで手で揉捻するのにはちょうど良いというか、ほぼ体力の限界に近い量だと判断しました。
鮮葉をよく見ると、たしかに2本の茶樹とわかる特徴がありました。ひとつは緑の深い色。もうひとつは紫がかった色。
紫色の茶葉はその個性をウリにした商品が流通しています。クローン栽培で品種管理され、規模の大きな茶畑で量産されています。味はやや酸味のあるのが特徴です。
茶王樹の古茶樹は花が咲いて実が成って種が落ちて自然に育っているので、品種管理はされていませんが、やや酸味のある味の特徴は似ていると思います。
しかし、今回は品種特性よりも育った環境による特性、采茶のタイミングによる茶葉の成長度、これらを尊重して2本の茶樹の2つの味が混ざることは気にしないことにしました。
雨の多い年の秋は、紫の葉にも緑の葉にも同じように記憶されているはずです。

太陽萎凋

茎

刮風寨は広大な森林が水気を保っているので、もともと茶葉は茎が長く育ちますが、雨の多い季節はさらに茎が長くなります。茎の部分に水が蓄えられるので、自然乾燥の萎凋で水を抜くのには時間がかかります。
水を抜くと萎れて茶葉の繊維が柔らかくなって、揉んだり捻ったりする揉捻の成形に耐えられるようになります。摘みたての茎の水がいっぱいでは繊維が硬いままで、揉捻でポキポキ折れて、さらにそれが柔らかい若葉を傷つけます。
茶葉のコンディションやその日の天侯によって萎凋の時間は異なりますが、今回は室内の陰干しで一晩。さらに翌朝の太陽に1時間ほど晒すことになりました。
揉捻の茶葉の量は1回で約1.2キロ。少なくとも20分はかかります。10キロちょっとなので8回分で休憩を含めて3時間ほど。その間にも茶葉の水分は蒸発しているので、乾きすぎると弾性を失った若葉が千切れやすくなります。
揉捻開始にちょうど良い頃合いになるよう、鮮葉を竹ザルに分けたり、太陽光線を調整したり、真ん中に寄せて山にしたり、布をかけたり、保湿の工夫をしました。

揉捻前

店長ふじもと

揉捻後

揉捻には結局3時間半かかりました。
1回分だけ茶友が手伝ったので、7回分をひとりでしました。
秋の雰囲気を意識した揉捻ができたと思います。
機械揉捻では15分で済みます。アルバイトを3人雇って手作業すると1時間で済みます。

渥堆軽発酵

軽発酵後

揉捻が終わったのが昼頃。
それから布袋に入れて軽発酵がはじまります。軽発酵には少なくとも数時間かかり、どう考えてもその日の太陽で晒干するのは不可能になりました。
軽発酵の進行時間は、温度・水分・酸素の調整、それから茶葉を堆積させる形状によっても多少は調整できます。
次の日の朝の太陽を待つために、置き場所や包み方を工夫して、軽発酵の変化にブレーキをかけました。
毎度のことですが、当店のオリジナルの紅茶は軽発酵浅めに仕上がります。
この段階では半分も軽発酵できたら良いほうです。この先の晒干や圧餅の工程でさらに軽発酵がすすみますが、それでもせいぜい7割くらいでしょう。
写真の茶葉の色がだんだん紅茶っぽくなってゆくのに注目してください。

太陽晒干

黄片

揉捻しても硬くてよじれなかった茶葉(生茶では黄片と呼ぶ)を取り除いています。大きく育っている割には柔らかい繊維で、黄片になったのは少量でした。コンディションの良い茶葉の証です。刮風寨の茶葉はそこそこ大きく育っていても繊維の柔らかさを保っています。

太陽萎凋

晒干毛茶

拡大毛茶

さて、このお茶づくりと同時進行で茶友が”茶坪”の茶葉で紅茶づくりをしていました。完成後の乾燥した茶葉は3.5キロ。このお茶は2.3キロ。
茶坪のは3本の茶樹から4人がかりで採取しているので、それなりに量があります。
茶友は機械揉捻を選んで15分で終え、布袋の軽発酵をその日の午前中で終え、その日のうちに8割ほど乾燥しましたが、念のため2日目の午前中にも晒干させて完成しています。

機械揉捻と手工揉捻
左: 機械揉捻の茶葉3.5キロ
右: 手作業揉捻の茶葉2.3キロ

重量と嵩が比例していません。
機械揉捻のは茶葉のカタチが崩れているからです。萎凋が不十分なまま揉捻しているので茶葉の繊維が成形に耐えられず、折れたり千切れたりしています。本来は揉捻前に手で揉んで確かめるべきですが、それすらしなかったのは、手の仕事が合理的でないと考えているからです。

粉砕された茶葉

この写真の粉砕された茶葉は手作業の揉捻でできたものです。どうやっても少しはできてしまいます。(数日のうちに自分で飲みました。)
機械揉捻と手の揉捻は目的が違うので比べることはできませんが、手の揉捻の少ない生産量においては需要と供給のバランスがつり合っているので、存在価値はあると言えます。

■圧餅
乾燥した茶葉をダンボール箱に詰めて車で町に運んで、自宅で圧餅加工しています。
山を降りるその日からまた天気が崩れて、5日間も雨になりました。2018年の秋は雨のままほぼ終わりました。
茶葉が湿気るのを避けて天気の回復を待ってから圧餅しました。10月25日がその日です。
秋茶は春に比べて茶葉の粘着力が弱く、さらに生茶に比べても弱いので、今回は自宅で圧餅するには向いていませんが、それも承知の上で行いました。
カタチが整わなくとも、茶葉の変化を詳細に把握したいためです。
茶葉を蒸して柔らかくして成形しますが、今回の蒸し時間は9分です。茶葉のまま4分半+布袋に詰めて4分半。蒸し時間は道具や湯の量(熱量)や火力によって様々になるので他との比較ができませんが、独自のモノサシからしたら秋茶の紅茶にしては短い蒸し時間です。

圧餅蒸し

圧餅蒸し布

圧餅布整形

石磨圧延

圧餅涼干

圧餅晒干

180gサイズ12枚分。
110gしかない端数を自分の試飲用に1枚圧餅しました。
晒干を半日と、涼干(陰干し)に6日間かけて仕上がりました。
2枚の圧餅に失敗しています。茶葉の弾力がありすぎてしっかり締まらず、手でカンタンに割れてしまいます。他の10枚も端のほうから崩れやすい状態ですが、お客様の手元に届くまでは形を維持できるでしょう。失敗の2枚は崩し売りにします。
失敗の原因のひとつは石型のサイズが合っていないことです。
石型は底がお碗状に窪んでいますが、今回は窪みが浅すぎたのです。生茶のときは茶葉に粘着力があって柔らかく、薄く圧延できるのでちょうどよい窪みでしたが、今回の紅茶は粘着力がないうえに弾力が強くて厚みのある餅形になりました。窪みがピッタリ合わないのでチカラが伝わりにくく成形がうまくゆきません。次回はひと回り大きめの石型を使うことにします。

■品茶

包み紙

包み紙

餅茶の厚み

左上の2枚が、他よりも厚みがあるのがわかります。

泡茶

軽発酵度も圧餅の蒸し加減も、だいたい狙いのとおりにできました。
この製法による紅茶は出来たてのときはパッとしません。
味が乗ってくるのは半年後から1年後になります。
経過はブログで紹介します。

■出品
180gサイズ10枚。
崩し2枚分。40g*9袋。
2018年の春のお茶から独自の熟成壺でしばらく寝かせてから出品することにしています。
このお茶も1年以上寝かせることにしました。2019年の冬以降の出品になります。

店長のブログ茶想にて紹介。
+【刮風秋水紅餅2018年 その1.】


■熟成壺入り
2019年1月から熟成壺に入っています。

熟成壺

竹皮包

餅茶6枚分。
一枚ごとの紙包のまま、6枚をまとめて竹皮に包んであります。
このまま長期保存していただけます。
一枚ずつ崩して飲んでゆくもよし。ずっと寝かせるもよし。
熟成壺は180gから200gサイズの餅茶が、6枚から7枚入ります。
ひきつづき茶葉の熟成に使用していただけます。
竹皮は裂けたりして劣化しますが、緩衝材として内側に敷いて使えます。

刮風秋水紅餅2018年 1枚 180g 


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